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盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

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盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

49 - 派手派手しいギャラリーたちのおかげで、着飾った自分が霞んでいます⑥

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2025年09月16日

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グォォォっと地獄の底から這い出てきたような唸り声をあげて魔獣がメインホールに姿を現した途端、招待客はパニックになった。


衛兵や宮廷魔術師達が魔獣を撃退しようとする中、招待客は皆、礼儀作法などほっぽり出して青ざめた顔で我先にと出口を求めてごった返す。


ノアが今、一番優先したいのはアシェルの身の安全だ。


院長ロキはこの程度じゃ死なないという謎の確証があるし、イーサンとワイアットは騎士だ。自分の身くらい護れて当たり前。国王に至っては、まぁ……大人だし目も見えるんだから自分で何とかしてくれるはず。


瞬時に結論を下したノアは、盾になるべくアシェルの前に立とうとする。


しかし、太い腕が邪魔して動けない。


「殿下!腕っ、腕、離してくださいっ。危ないですから!!」

「危ないのはノアだよ。大人しく私の後ろにいなさい」

「嫌、ダメですよっ。私が盾になりますからっ。さぁ、その腕を離してくださいっ。今すぐに!!」


わちゃわちゃと暴れるノアに、アシェルは困り顔で肩をすくめる。


「ノア、今だけは頼むから私のお願いをきいてくれないか」

「いーやーでー……」

「だまりな、ノア」


──ごっちん!!


渾身の力で暴れ続けるノアをいさめたのは、ロキの拳骨だった。


ついさっきまで随分離れた場所にいたはずなのに、瞬き一つで現れたロキは、いたいけな少女を痛めつけたというのに罪悪感皆無だ。しかも涙目になっているノアを無視して、国王に向け口を開いた。


「ったく、今も昔も城っていうのはロクなことが起こらないねぇ」


ガシガシと後頭部をかきながらぼやくロキは、誰がどう見ても怖いもの知らずである。


そんな彼女に国王は口いっぱいに苦虫を詰め込んだような表情になる。


「そなたは今も昔も、口より手が早いな」

「はんっ。わかりきったことを言うんじゃないよ。……はぁ、うるさいねぇ。これじゃあ昔話もできやしない」


ギャアギャアと悲鳴を上げる招待客を一瞥すると、ロキは指をパチンと弾いた。


すぐに杖が現れ、ロキは慣れた仕草でそれを掴むと軽く一振りした。すると会場は半円状の金色の結界に包まれる。招待客を守るかのように。


「相変わらずの腕前だな」

「即席だから、そうはもたないよ」


国王と古くからの友人のような会話をするロキに、ノアは「え?なんで??」と尋ねたし、魔術師だったことついても知りたい。


だがしかしノアが割って入る前に、ロキはアシェルに視線を移した。


「言っておくけど、あたしゃ引退宣言したから、魔物退治はしないよ。後の始末はあんたがおやり」

「ダメーーーーーー!!」


血も涙もないロキの言葉に、ノアは悲鳴を上げた。


しかし命じられた当の本人であるアシェルは涼しい顔で頷いた。


「もちろんです。陛下の生誕祭を汚した悪しき魔物は、わたくしの手で仕留めてみせましょう」

「はぁいいいいぃーーー!?」


夜迷い事ともいえるアシェルの言葉に、目をひん剥いたのはノアだけだった。


国王は鷹揚に頷くだけだし、ロキは「ならさっさと行け」と顎でしゃくる始末。


ローガンとクリスティーナは腰を抜かして震えているから論外。とにかくノアだけはアシェルの言葉に頷けなかった。


だってアシェルは盲目だ。声と地響きで魔物がどこにいるか何となくはわかるかもしれないが、退治するとなれば話は違う。


「殿下、ダメですっ。危ないです!!」


ノアは半泣きになってアシェルに手を伸ばす。


肩が脱臼するほど伸ばした手はなんとか彼の上着の端っこを掴むことができたが、引き留めるにはあまりに心許ない。


「ノア、大丈夫。心配しないでここで待ってなさい」

「やだっ」

「ノア」

「やだっ、やだっ。今日は私が殿下を守る日なんだもんっ。行っちゃ駄目です!危ないです!!」


もう品のある微笑みも、睡眠時間を削って覚えた宮廷マナーもどうでもいい。


後でグレイアスからお叱りをうけようとも、心待ちにしていたキノコ料理が食べられなくってもかまわない。


嫌なのだ。アシェルが危険な場所に行くのが。怪我をしてしまうかもしれないのが。このまま帰って来てくれないかもしれないことが怖くてたまらないのだ。


それなのにアシェルは、ちっとも気づいてくれない。ただただ柔らかい笑みを浮かべて上着を掴んでいるノアの手に、己の手を重ねるだけ。


違う。今はそんな優しい仕草なんて望んでいない。望むのはただ一つ。安全な場所に避難して欲しいだけ。


そう願うノアの気持ちをわかってるはずなのに、アシェルは望まぬ言葉を紡ぐ。これまで目が見えぬとも、まるで見えているかのように気持ちを汲み取ってくれていたというのに。


「すぐに戻って来るよ、ノア。それにロキ殿がそばにいるんだから怖くなんかないだろう?」


そんな言葉、子供だましもいいところだ。


「嫌です。じゃあ私も一緒に盾代わりとして」

「駄目だよ」


被せる感じで却下された。でもノアはへこたれない。


「何度も言ってますが、それが駄目なんです!ワガママは今日だけにしますから、どうか一緒に」

「何度も言うけれど、それが駄目なんだよ。これからどれだけワガママを言ってもいいから、今日だけは大人しくするんだ。ね?」


魔物が暴れる中、こんな会話をする二人は傍から見れば場違いなほど甘い。だがしかし、ノアもアシェルも真剣だ。真剣に自分の意思を曲げる気はない。


そう。曲げる気はなかったのだが……強制的に曲げられた。ノアの方が。

「馬鹿なこと言ってんじゃないよ!キノコ採取しか能が無いあんたは、邪魔にしかならないんだから黙ってな!!」


雷みたいなロキの一喝に、ノアは酷い言い草だと睨んでしまう。


しかし急を要する事態に、ロキは言葉で説得するより物理的に黙らせる方を選んだ。


「ノア、歯ぁ食いしばりな」


──ごっちん!!


二度目に落とされた拳骨は、最初のより3倍の威力だった。

盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

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