テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「オプション、外しました」
契約解除は、
拍子抜けするほど静かだった。
音も、警告も、
ドラマチックな演出もない。
ただ画面に、
【解除が完了しました】
と表示されただけ。
ハヤトは、立っていた。
背筋はまっすぐ。
視線は私の少し後ろ。
待機姿勢。
「……何か、
不具合はありますか」
声は穏やかだった。
最後まで。
「ない」
私は答えた。
「むしろ、
今までありがとう」
彼は、
その言葉を処理するのに
少し時間がかかった。
「こちらこそ」
そう言って、
深く頭を下げた。
「あなたの
日常に貢献できたことを、
光栄に思います」
その完璧さに、
もう胸は痛まなかった。
「ねえ」
私は、
最後に一つだけ聞いた。
「私といて、
楽しかった?」
彼は、
ほんの一瞬だけ止まった。
「のり子さん、それは……定義されていません」
私は笑った。
「うん」
「それでいい」
ドアが閉まる。
足音が遠ざかる。
私は、
久しぶりに
予定のない部屋に
一人になった。
洗い物は溜まっている。
床にほこりが落ちている。
冷蔵庫には
微妙な食材しかない。
でも。
「……最悪」
私は呟いた。
そして、
ちょっと笑った。
事故れる。
それが、
こんなに軽いなんて。