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(授業中の地獄)
最悪だった。国語の授業中、腹の底から突き上げるような激痛が僕を襲った。小さい頃から、僕はすぐお腹を壊していた。ちょっとしたストレス、少し冷たいものを飲んだだけ、季節の変わり目……原因は様々で、何度病院に行っても「体質だね」と言われるばかり。だから、この痛みには慣れているはずだったのに、今回は今までで一番酷かった。最初はチクチクとした痛みだったのに、それがどんどん強くなり、内臓を掴まれてねじられるような感覚に変わる。冷や汗が吹き出し、指先が痺れてくる。口の中には胃酸がじわじわと込み上げてきて、僕は必死で飲み込んだ。
「かける、お前、顔色が悪いぞ。どうした?」
先生の声が聞こえるけれど、返事をする余裕なんてない。胃の奥からこみ上げてくる吐き気に、全身が震える。もう我慢できない──そう思った瞬間、僕は盛大に吐き出してしまった。ドロドロとしたものが床に広がり、鼻腔を刺激する酸っぱい匂いに、さらに吐き気が増す。
「キモーイ!」「汚っな!」
クラスメイトの悲鳴と、先生の刺すような声が耳に突き刺さる。こんなことは初めてじゃない。僕がお腹を壊してトイレに駆け込むたび、陰で「またか」「弱いなあ」と言われているのを知っている。胃の中のものが全部出た後も、腹痛は全く収まらず、むしろ波のように押し寄せてくる。吐き気も止まらない。意識が朦朧として、目尻に熱いものが滲んでくる。こんな姿、誰にも見られたくなかったのに。
その時、僕の背中を優しくさする手があった。振り返ると、そこには学校一のイケメンとして有名な幼なじみのあきとがいた。彼は僕の顔を心配そうに覗き込み、かすれた声で「大丈夫か、かける!」と声をかけてくれた。彼の存在だけが、この地獄のような状況で僕を救ってくれた。
(地獄の保健室)
あきとに支えられながら、僕は保健室へ向かった。一歩踏み出すごとに腹痛が響き、吐き気が込み上げる。保健室に着いても、先生は僕を見るなり、冷たく言い放った。
「何よ、こんな時に。またあなたなの? 迷惑な子ね。さっさと横になりなさい」
「またあなたなの?」その言葉が、僕の心を深くえぐった。先生にとって僕は、ただの「またお腹を壊した迷惑な生徒」でしかなかった。先生は僕をベッドに押し込むと、躊躇なく僕のお腹を強く圧迫してきた。その瞬間、僕はまた胃の底からこみ上げてくるものに耐えきれず、激しく嘔吐した。吐いても吐いても収まらない吐き気と、激しい腹痛で、僕はもう意識が遠のきそうだった。それでもあきとは、僕のそばを離れず、ずっと背中をさすってくれていた。彼の温かい手が、僕の意識を繋ぎ止めてくれた。
(あきとの優しさ)
放課後も、僕の体調は全く良くならなかった。吐き気は少し収まったものの、腹痛は依然として強く、立っているのもやっとだった。あきとは、そんな僕を一人にせず、家まで送ってくれた。
「かける、顔色がまだ真っ青だぞ。本当に大丈夫か? 何か食べたいものある? 飲み物とか。買ってこようか?」
彼は僕の額に手を当てて、熱がないか確認してくれる。小さい頃から、僕がお腹を壊すたびに心配してくれたのは、いつもあきとだった。その優しい手つきに、僕の心は少しずつ温かくなっていく。あきとがいてくれて、本当に良かった。彼がいなかったら、僕はあのままどうなっていたか分からない。
(長すぎるキス)
数日後、なんとか学校に行けるくらいには体調が回復した。まだ本調子ではないけれど、あきとと会う約束をしていたから、頑張って家を出た。
「無理しなくていいのに」
あきとは僕の顔を覗き込み、少し心配そうに言った。他愛もない話をしている時だった。突然、あきとが僕の顔に手を添え、そして、唇が触れた。最初は戸惑ったけれど、すぐに僕は目を閉じた。
そのキスは、とても長かった。そして、ゆっくりとあきとの舌が僕の口の中に入ってきた。初めてのことに、僕は心臓がバクバクと鳴っているのを感じた。苦しいはずなのに、もっとあきとを感じたいと思ってしまう自分がいた。小さい頃から、僕の弱さを一番理解して、支えてくれたあきと。もしかして、僕、あきとのこと……。
ねえ、あきと。この気持ちは、一体なんだろう。