「あの、そういう態度、余計怪しく見えますよ。」
鋭く指摘すると、店長は苦笑いしながら頭を掻いた。
「あ、あー…そっか…はは、ごめんよ。」
咳払いをして、ようやく落ち着いてくれた。こんなやり取りにもすっかり慣れてしまった自分が恐い。
つまりは、それだけ店長と関わる機会が増えたってことだ。
援交を目撃されたことがきっかけって、こんな関わり方滅多にない。
そもそも、どちらかというと関わりが絶たれる方だ。
(私の方は絶つつもりだったんだけどな。この人があまりにもしつこいから。)
なんて悪態を飲み込み、代わりに溜め息を吐いた。
「それに、そんな慌てなくても、大丈夫ですから。私…援交やめたんで。」
「…へ?」
間抜けな声で聞き返してくる。微妙に上ずっていた。聞こえなかったわけではないが、信じられなくてつい言葉を受け入れなかった。そんな感じだ。
ここでもう一度同じことを言うほど私は素直じゃない。
そっぽを向いて、素っ気なく答えた。
「何度も言わせないでください。聞こえてましたよね。」
店長の瞳孔と口が徐々に開いていく。目の奥が、きらきら輝き出した。
そして…
「っ……はあぁぁ…!!良かったーー!!」
突然、大声で喜ぶ。
「ちょっ…店長…」
今度は私が焦った。何故なら、あまりの大きな声に周りから注目を浴びたからだ。だけど
しかしそれは一瞬で、すぐにいつもの空気に戻った。
そんな変化にもお構いなしに、店長は喜びを露にしている。
がっくりと落ちた肩からは、安堵の色が滲み出ていた。
(何…この人…何でそんな、自分のことみたいに…)
深く考えずに何気なく言った一言にまさかここまで喜んでくれるとは思わなかった。訳がわからない。
「別に…そこまで喜ばなくても…。」
すると、店長は、とんでもない!!とでも言うように前に身を乗り出してきた。
思わず、肩を震わせて強張らせる。
空になったコップを握り締めたまま、黙って店長の言葉を待つしかできなかった。
「そんなことはないよ!!俺はね、嬉しくて、嬉しくて…だって、これで藤塚さんが危険な目に合うことはないだろう?」
「は…?」
そこで、私との距離にようやく気づいたのか、店長は恥ずかしそうにごめん、とだけ言って元の位置に座り直す。
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