アイビーの花 ~永遠にともに~
カーテンの隙間から、薄暗い部屋の中に細く光が入ってきた。いつの間にやら朝になっていたらしい。俺は、編集作業の手を止めて軽く伸びをした。昨日は体調を崩していて、昼頃から夜の22時過ぎまで寝ていたのでまだ眠くは無い。とりあえず、朝食を食べようと立ち上がりキッチンへと向かった。
「なんかあったかな…」
最近は恋人の家にいることも多く、冷蔵庫の中にはあまりものを置いてない。案の定、冷蔵庫の中には、炭酸水と酒くらいしかなくてため息が出た。
「しゃぁない、ランニングがてらなんか買いに行くか…」
俺は部屋着からランニングできる服に着替え、鏡でビジュの確認をした。もしかしたら恋人と出会うかもしれないと思うと、ちょっと出るだけでも気合いが入る。カッコつけだという自覚はある。
「朝早いからまだ涼しくて走りやすいな」
ひんやりと頬を撫でる空気がとても心地よかった。一晩中酷使した頭には、程よくてなんとなく立ち止まり目を閉じて空を仰いだ。まだ早い時間だからか他に人もほとんどいないし、居たとしても誰も俺の事なんて気にしてないからそれはそれで心地よかった。というか、マスクもせずに外に居ると、リスナーですら気づかないから世間に溶け込めているようで安心する。
普段はほとんど家から出ず、PCの前で過ごしているから余計に、世間との隔たりを感じる…。俺のような活動者の世界は案外狭かったりする。
「あぁ…なんか無性に会いたなったな…」
そう呟くと、俺は付けてきていた貴重品を入れている小さなカバンの中に手を入れて、小さな箱を取り出した。互いに個人の仕事が立て込むからと、会わなくなって1週間ほど。以前発注していたものが仕上がったと連絡が来たのが数日前。連絡が来て、待ちきれなくてすぐに取りに行った。次似合う時に渡そうと思っているソレは、俺の独占欲を表していた。
「喜ぶやろか…」
ものへの執着がほぼ無いと言っていいアイツは、プレゼントしたものでさえテキトーにあつかいそうで…。そうされたら立ち直れない気がして、形が残るものは渡してこなかった。
でもこれは、俺の意思表示というか宣誓というか…。普段からあまり気持ちを伝えない代わりに、それを伝えられそうなものを…。これが広告で流れてきた時、どうしてもアイツに渡したいと思った。ほぼ自己満足だった。
「次会えるんが、2日後…か」
互いの仕事が落ち着いて、ゆっくり会えそうなのがその日だった。あと今日を入れて2日…会えないのは正直辛かった。日々、SNSに投稿される他の活動者との楽しげな様子を見ているだけで、胸が締め付けられそうになった。
「ちっさいよなぁ俺…… 」
失笑しながら、手に持っていた箱をカバンの中へ戻すと、俺は再び走り出した。
2日後……
俺は、ニキとりぃちょ、キャメロンと共に実写の撮影をしていた。今回はそれぞれのチャンネルで別々の動画を出すので、4本立てだった。俺らにしては珍しく朝から集まって、順調にこなして行く。
最後がニキの動画だった。それもエンディングをとるだけのところまできていた。
「いやぁ、今日は歩いたねぇ」
「やなぁ…さすがに疲れたわw」
「せんせー足、フラフラじゃんww」
「ほんとだww転ばないように気をつけてよww」
メンバーにからかわれるように言われ、俺は苦笑いをするしか無かった。ニキが隣にいないと、眠りが浅くてきちんとした睡眠時間が取れていないせいか、足元がふらついているのはその通りだった。
俺は、そんな状態の俺をニキが鋭い目で見つめていたことに、その時は気づけていなかった。
「よし、とりあえずね今日の撮影は終わり……ということでね。ボビーどうだった?」
「俺?せやなぁ…みんなと一緒に色々回るん、たのしかっ……」
締めの挨拶をしていた時、足元にあった小さな石に引っかかってよろけてしまった。咄嗟のことに戸惑い対応できずにいると、隣にいたニキがグッと自分の方へ腕を引いてくれた。
その反動で、俺はニキの腕の中に飛び込む形となり、転びそうになったことへの動悸よりも、ニキの匂いを間近で感じたことへの動悸の方が上回り、顔に熱が集まるのを感じた。
「ちゃんと足元見ろよ!」
「あ……わるい」
「あーせんせー真っ赤だーww」
「転びそうになったの恥ずかしかったんだねぇww」
「お前らうるせぇよw」
口々に俺をからかうりぃちょとキャメロン。コイツらは俺らの関係を知らないからこういう反応になる。あとは、これも動画に撮られているから、面白くしようとしてるんだろう,
「これもつかうんか?w」
「あー使おっかなwwリスナー喜びそうじゃんw」
ニキは、BL企画以来ちょいちょいこうやってその方向に持ってこうとする。まぁ、バレることは無いからいいんだけど…。俺のこの気持ちすらネタみたいにされてる気がして、たまに面白くないと感じることはあった。ただそれを表には出さない。おもんなくなるから……。おもんない奴はニキが嫌いだから……。
「さ、これで動画撮り終わったし…帰るかー」
「えーご飯とか食べてかない?」
「あーいいね!何食べるー?」
正直、早くかえってニキと2人きりになりたいところだが、そういう訳にもいかずひとまずは黙っていた。そんな俺に気づかず、キャメロンとりぃちょはどの店に行こうかと相談を始めていた。
ニキも飯いくんかな……と心の中で思っていると、
俺と同じで黙っていたニキが口を開いた。
「あー……俺帰るわ」
「えー付き合い悪ーい」
「なんかあるの?」
「いや…ちょっと作業残っててさ。ボビーもだったよな?」
「ぇ?あ……あぁそうやったな」
いきなり話をふられて、俺は少し驚きながら答えた。そんな話したっけな?と頭の中には「?」が大量に浮かんでいた。
「ほら、ボビーいくよ」
「あ、あぁ……じゃあな」
若干強引に腕を引かれながら2人から離れると、俺たちはタクシーに乗り込んだ。ニキは自分の家の住所を言うと、そのまま黙ってしまった。
薄暗く互いの顔もよく見えない車内。時折、窓の外からほんのり差し込んでくる街の灯りが、ニキの顔を浮かび上がらせる。その横顔がとても綺麗だった。
手持ち無沙汰で手を動かすと、ふいにニキの手と俺の手が当たってビクッとしてしまった。それに気づいたのか、ニキが指先で俺の手を弄ぶように触ってきた。たったそれだけの刺激でも、しばらく触れ合っていなかった俺の身体は反応する。
文句を言ってやろうとニキの方を見ると、いつからかは分からないが、見つめてきていた。その視線は、痛いほどに熱がこもっていて、それだけでゾクゾクと感じてしまう。
「久しぶりだね…」
「そやな…」
「ふふ…緊張してるの?w」
「ぁ…なんていうか…」
「いいよ…後で聞くけん」
そういって、弄んでいた手を合わせ指をからませてくる。それに応えるように指をからませてギュッとにぎった。そこから、2人の体温が混ざり合いひとつに解けていくようだった。
家に着いて玄関のドアを開けた瞬間、俺はきつく抱きしめられた。息もできないほどの抱擁に、少しだけ戸惑いながら、強く抱きしめ返した。
「ニキ…会いたかった…」
「俺も…ずっと抱きしめたかった…」
「なぁ…風呂入らへん?」
「んー、いいよ?一緒にはいる?」
「それは…風呂だけで終わらんくなるから…」
「ふふ…わかったよww」
いつも以上に丁寧に洗い、始めて後ろの準備までした。久々に受け入れるので、拡げておかないときっとキツイ…。あとは、なにより早くひとつになりたかった。アイツに触られるのを想像して、目を閉じた。ゆっくりと出しいれする指が、アイツのよりは少し細くて物足りない。早く…早くアイツに触って欲しかった。
「あ、出た?」
「ん…なぁ…はやく…ほし……」
「え?どうしたの?ちょっ…」
自分の指で準備しているうちに、疼いて疼いて仕方なくなってしまっていた俺は、髪を乾かすのもそこそこに、ソファに座ってスマホをいじっていたニキを押し倒して跨った。
俺の下では、突然のことで目を見開いて驚いているニキが、スマホを落とさないように両手を頭上に上げてこちらを見ていた。
俺は、その上げられた両手首を片手で掴んで固定すると、少しだけ開いていたニキの唇に噛み付くような深いキスをした。
「ちょ…んっ…ふぁ…チュクっんん」
「はぁ…チュクチュクチュク…んっ…」
口を離すと、どちらのものか分からない唾液がニキの口の端から垂れていく。俺はそれを舌先で舐めとると、ゆっくりとニキの首筋を刺激していった。首筋から胸…下腹部と移動させていくうちに、手首を押えているのが辛くなって離してした。でも、ニキは抵抗することも無く、小さく吐息を漏らすだけだった。緩く立ち上がっているニキ自身に手を添えて先端に小さく口付けを落とすと、頭上から吐息と共に小さな喘ぎ声が漏れ聞こえてきた。
どんな表情してるのか気になって、ソレを軽く扱きながら顔を上げる。いつもは重く額にかかっている前髪を左手でかきあげ、情欲に潤んだ瞳で俺の事を見下ろしていた。軽く噛み締めている唇ですら色っぽくて、俺も自身が痛いほど張り詰めていくのを感じた。睨むような目は、我慢している時の顔…。俺でたまらない気持ちにさせていると思うと、より興奮した。俺は、先端から先走りを零すニキのソレを、自分の口の中へと導いた。こんなことをするのは初めてかもしれない。
「えっ…ぼび…んんんっ…」
「ふっぁ…チュプッ……ジュルッ…」
少し吸いながら頭を前後させる。舌をソレに巻き付けるようにしながら刺激する。口の中では、ビクンビクンと震えながら容積を増やしていく。いつの間にか頭に添えられた手は、力なく俺の頭を離そうとしている。チラッと視線を上へ動かすと、さっきよりも熱っぽい目で俺を見つめていた。
いつもは、余裕そうな顔をして俺を組み敷くニキが、こんなにも余裕がなさそうなのは珍しくて、そうさせているのが自分だと思うとたまらなく嬉しかった。
そうこうしているうちに、口の中でニキがひときわ大きく膨らんで、熱を吐き出した。同時に口の中いっぱいに苦みが広がり、飲み込もうとした喉にまとわりつく。そして、口の端から漏れてしまっていたものを指で拭って、ニキを見つめながら舐めとる。吐精後の脱力感で、動けずにいるニキは、わざとらしく見せたその姿にヒクンとまた頭をもたげさせていた。俺はソレを手に取りゆっくりと、でも確実に性感帯を刺激してふたたび硬くさせる。されるがままなニキは、俺がする事をじっと何も言わずに見つめていた。
ソレを右手で支えた俺は、ゆっくりと身体の中に沈めていく。そして全部収め終わると、身体を前に倒して、ニキの首筋に噛み付いた。
「んっ…ふぅぅぅぅ…ぁぁぁぁ」
「ちょっ…まだならして……え?」
「んんんっ……はぁ……」
「っ…ん…」
入れた瞬間、ニキが戸惑った顔をしたがそんなのは無視して、自分が噛んだ噛み跡を舌先で舐めた。口の中に少しだけ鉄の味が広がり、それですら俺を昂らせる刺激となって、身体中に広がる。今の自分がおかしいのは分かっていたが、止めることが出来ない。
挿れただけで、既に達しそうな程に感じてしまっている俺は、上手く力が入らず動くことが出来ずにいた。そんな俺の腰を掴んだニキは、容赦なく最奥へと突き刺してきた。
「かっはっ……なんっ…ぁぁぁ」
息が上手く吸えないまま、ニキの顔を見るとなぜか不機嫌そうな顔になっていた。理由も分からず、奥まで来ている彼自身による圧迫感に耐えていると、グルっと視界が反転した。
背中にソファのスプリングによる軋みを感じ、苦しくてニキを見上げると、目をスっと細めながら前髪をかきあげているとろこだった。それだけでもすごく色っぽくて…淫靡で…彼を受け入れているところがキュンっと反応してしまっていた。
「ねぇ…なんで慣らしてないのに柔らかいの?」
「ぇっ?」
「ねぇ…俺と会わない間、誰に抱かれてたの?」
「そっ…ねぇ…ぁぁぁぁ」
違う!と否定したかったが、容赦なく打ち付けられる腰に、息も満足に吸えなくなって途切れ途切れの喘ぎ声しかあげられなくなっていた。快感による涙をうかべ、ニキの腕に縋り与えられる刺激に身を任せることしか出来なかった。
「ボビーは俺のなのに……誰にこんな顔見せたの?」
「んんんん…ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”」
「奥突かれて…こんなに乱れちゃう姿…」
「やぁぁぁ……んぁぁぁぁぁ…」
「ねぇ……俺だけじゃないの?」
今、苦しいのも身体が大変なのも俺のはずなのに、俺よりも苦しそうな顔をして泣きそうな顔になっているニキ…。そんなニキが愛おしくて仕方なかった。力の入らなくなった腕を持ち上げ、ニキの首へとまきつける。そして少し力を入れると、俺の意図を察してくれたニキが顔を近づけてくれる。
俺は、顔を横に向けニキの目の前に首筋を露にした。そして潤む目でニキを見つめ、指先でトントンとそこを指した。少しだけ目を見開いたニキは、腰を止める俺の首筋に吸い付いた。チクッという痛みが走り、所有の証をつけられたことを感じる。そこからは、首筋と胸元・腕の付け根などいくつもの赤い花弁を散らされた。
「いっぱいつけたなぁ…♡」
「ん…これなら他の男にみせられないでしょ?」
まだ勘違いしているらしいニキは、さっき凶暴なまでに腰を動かしていた男とは別人のようにしょんぼりとしている。まるで大型犬みたいだ…と思った俺は、クスッと小さく笑ってニキの目を見つめた。
「誰にも見せてへんよ?」
「嘘……だって久しぶりなのに…」
簡単に入ったから…と消え入りそうな声で言うニキ。そんなことで嫉妬して、可愛いことを言ってくるこの男のことが、俺はたまらなく愛おしくてしかたなかった。誰にも見せず、俺だけを見てればいいのにとすら考えていた。
「さっきな、風呂で自分で慣らしたんよ」
「え?」
「はやくニキとひとつになりたくて…」
あかんかった?と首を傾げながら言う俺に、ニキは戸惑った顔になっていた。それはそうだろう。いつも求めてくるのはニキ。俺はほぼ受け身だったのだから、彼にとっては信じられないことなんだろう。でもそれが事実だった。
「なんなん?その顔ww」
「えっ…だってボビーだよ?…自分で…?」
「クスクス…なぁ…そんなことより…動いてくれへん?」
中、切ないんやけど…と耳元で囁くと、中のソレがビクンっと一回り大きくなった。俺の言動でこんなにも反応してくれるニキの事を裏切るなんて有り得ないのに…。でも、そんなことを邪推してしまうくらいには俺に執着してくれてるんだと思うと、たまらなく嬉しかった。
溺れるよりも溺れさせたいと思ってきた俺の恋愛論は、ニキに関しては例外だった。ニキと一緒なら、共に底まで堕ちていきたいとすら思っていた。
「ごめん……手加減…出来そうにない…」
「ええで……思いっきりこい…」
言葉通り、容赦ない腰遣いに俺は息も喘ぎ声も全て飲み込まれていった。中の熱を感じながら何度も何度も熱を吐き出し、潮を吹き、中を痙攣させながら意識を飛ばしたりしていた。
「ほら…まだ寝ないで…俺まだ欲しいから…」
「……んぁ…ぁぁぁぁ……」
意識を飛ばす度に、最奥を突かれ起こされる。泣かされるほどに感じさせられているのが悔しくて、鎖骨あたりに噛み付いたりもした。その度に仕返しとばかりに、同じところに噛みつかれたり花弁を散らされたりしていた。
「んんんんっ………はぁ…はぁ…」
何度目かの白濁を奥の方で感じた時、俺の隣にドサッとニキが倒れ込んできた。
動かすのもだるい首を動かしそちらを見ると、俺の額に汗で張り付いていた前髪をどかしながら、触れ合わせるだけの可愛らしい口付けをされた。
「ボビー…愛してるよ」
「ん…俺もやで?誰よりも大切や」
「ねぇ…俺さ自分が怖くなるんだよね」
「なんでや?」
いつも自信満々で、不安なんてなさそうなニキが悲しそうな顔でこちらを見つめる。何がそんなに彼を苦しめているのか分からず、そっと頬に手を添えた。それに、目を閉じて顔を擦り付けてくるニキは本当にか心細そうで、小さな子どものようで可愛かった。
「ボビーはさ、俺だけのじゃないのに縛り付けたいっていう衝動に駆られる時ある」
「クスクス…」
「笑うなよ…本気で困ってるんだから…」
「なぁ、俺のカバン取って」
「ん…あぁ…これ」
ニキに渡されたカバンを開いて、この数日何度も見た小さな箱を取り出した。そしてそれをニキに渡した。
「え?なにこれ?」
「いいから、あけろよw」
戸惑いながら箱を開けたニキは、目を見開いて俺と箱の中身を見比べてきていた。その様子が面白すぎて、俺の頬はずっと緩みっぱなしだった。
「なぁ、起こしてくれへん?起きられん」
「あ…あぁ…」
ミシミシと軋む身体を起こしてもらって、なんとソファへと座った。そして箱をニキの手から奪うと、ふたつあるうちの片方を取り出してニキへ向き直った。
「ほら、手…かして」
「……ん」
恐る恐るといった様子で左手を差し出され、それを掴むと手に持っていたものを腕にまきつけた。カチャンっと軽い金属音が響いて、ニキの腕にはブレスレットが巻かれていた。それを見つめ、軽く撫でながらニキは俺の方をむく。
「これ…さ……ペアだよね?」
「せやなw色変えてもらったから、同じとこで買ったんかな…くらいにしか思われんけどなw」
「プレートの裏…さ」
「気づいたん?さすがやなw」
【Eres mi razón】
ブレスレットに付いているプレートの裏に書いてある言葉だ。フランス語で『貴方は私の生きる意味です』という意味の言葉らしい。らしいというのは、さすがに俺もフランス語までは分からないので、お店の人と調べて刻印してもらったからだ。
「お前、フランス語分かるん?」
「いや…全部は分からないけどさ、ちょっとだけ大学でやったからさ…」
「そうなんや…なぁ…」
まだ不安そうな顔のニキの顔をのぞきこんで首を傾げた。
「俺もなこんなん特注で作るくらいには重いで?」
「あ…あのさ……俺も」
そういって、今度はニキがベッドサイドの引き出しから小さな箱を取り出してきた。まさかなと思いながら箱を開けると、中には少し形の違うネックレスが2本。太めのチェーンに小さなプレートがついめいるだけのそれは、付けていてもおそらくお揃いとは分からないだろう。俺と考えてることが同じということに、思わず笑ってしまった。
「なぁ…付けてくれへん?」
「わかった…」
今日はたまたまネックレスをつけずに来ていたから、ちょうど良かった。首の後ろでカチッという小さな金属音が聞こえたと思ったら、首に馴染みのある重さを感じた。
ふと気になって、プレート部分をひっくり返すとそこには文字が刻まれていた。
【Amor siempre tuyo】
「これ、フランス語やんな?Amor って愛するとかそういう意味やったよな?意味は? 」
「…最愛の人、私は永遠に貴方のものです……」
「うわぁwww重たぁ…♡ 」
「っ…そういうボビーのこれ、どういう意味だよ」
「知ってるんじゃないん?ww」
「ちゃんとは分からないよ!」
「ふーんw」
貴方は私の生きる意味です…やで?と耳元で囁くように言うと、ニキの顔がいっきに赤くなっていった。
「いい声でそういうこと言うなよ…」
「クスクス…俺のも重たいやろ?w」
「まぁ…wでも、似たもの同士だね」
「せやな…ニキ…愛してんで?お前だけや」
「俺も…ボビーだけ…ボビーがいればいい…」
そういって、どちらからとも無く唇を合わせた。 ふたりの間には、キラリと煌めく揃いのネックレスとブレスレットがあった。アクセサリー類は束縛を意味すると聞いたことがある。太めのブレスレットは強い独占欲と束縛。ネックレスには、永遠とか束縛とか独占だったか…と頭の中で思い返した。
互いに重すぎる愛情と、強すぎる独占欲を持っていることだけは確かだった。でもそれすら心地いい。俺はこいつから離れることは出来なさそうだ。
コメント
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激重相思相愛カプが強引に何回戦もヤるのやっぱ最っっっ高!!
最高…!
自分で解かしちゃうせんせー良すぎません…? お互いに激重なのすごい好きです…💕 シた後にプレゼント渡し合うの…もう…良すぎます……🫶💕