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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「待って」

玄関脇の水槽の、熱帯魚が泳ぐ方向を変えた。

「行かないで」

時計の音のみが辺りを支配している。

そっと顔を上げ奈津美さんの方を向くと、彼女の目尻からひとしずくこぼれた。

「涙だけは絶対見せないつもりだったのに……」

彼女を抱きしめてやりたい気持ちを抑えた。

じっとしていると、奈津美さんの方から飛び込んできた。

愛らしい顔が俺の胸に埋まっていく。細い腕には力がこもっている。

俺は、生まれて初めて、そしておそらくは最後になる言葉を口にしていた。

彼女は顔を上げた。俺の瞳の奥を、不思議そうに見つめている。

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