テラーノベル
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なんか最近、学校が変だ。
ズレた時計。急に点滅する電気。ノイズが入る校内放送。勝手に電源のつくパソコン。急に切り替わるエアコン。自動で動くプリンター。
やたら、校内がざわついてる。
「衣吹、聞いた?」
「あ? なにを?」
「なんかさ、最近の異変について、なんか調査に来るらしいよ。なんだっけ。特務なんちゃら」
「うーわ、てきとー」
「しょうがないだろ。あ、ほら、あれじゃね?」
オレの席、窓際の一番後ろだから、晴樹に言われて窓の外を見る。確かに、誰か校門から入ってきてんな。
男が二人、話しながら歩いてる。一人は、塩顔のイケメン。いや、オレの方がイケメンだけど。で、もう一人が……男、だよな?
「うっわ、めっちゃ美人だなー」
「何だよ晴樹、ああいうのタイプかよ」
「そうじゃなくたって、美人は見たくなるだろ」
「まあな」
線が細くて、柔らかい雰囲気と、可愛いって感じの顔と。隣の塩顔イケメンと美人って、なにあれ、モデル? 芸能人?
「なんか、目立つなー。思ってたのと全っ然、違った。っつーか、女子がめっちゃ盛り上がってる!」
「そりゃそうだろ。あれ多分、男子も群がるんじゃね?」
「言えてる。後で見に行く?」
「いいよ、オレは。後で感想、教えて」
ひらひらと晴樹に手を振る。
昼休みになって、教室からいなくなってた晴樹がやたらテンション高く戻って来た。
「衣吹! ヤバい、ヤバいぞ、あの美人!」
「なんだよ。なんかあった?」
「めっっっっっちゃ、可愛かった」
「……はあ?」
「あれ凄い。アイドルっぽかった。女子も男子も倒れてた。俺もやられそうだった」
「お前、そういうの好きだもんなー」
「違うって! 衣吹も見てみたら分かる」
「ふーん」
倒れるくらいってどんなだよ。でもなんか、ちょっと興味はあるかも。どっかで会えたら、見てみてもいいかもな。
そんなことを考えながら退屈な授業を受けて、放課後になる。適当に晴樹と喋ってから、カバンを持って玄関に向かう。すると、もう人のいなくなった教室から、あの美人の方が出てきた。
「あ」
yuka @1週間猫メイド
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💚「ん?」
思わず、声が漏れたことで、美人がこっちを見た。今は一人で、塩顔イケメンの方はいない。
💚「何か、用事?」
「ああ、いや……別に」
💚「そっか。何か、気になることでもあるのかなって思ったから。引き留めてごめんね」
今、引き留めたのってオレの方じゃね?
💚「一年生?」
「え?」
💚「いや、ネクタイの色で違うんだよね、この学校。ちょっと珍しいなって思って」
「ああ、そう、っすね……こんな話してて、いいんすか?」
💚「あ、そうだった。他の教室も見て回らないと。ありがと」
「っす」
手を振って歩いて行く美人の後ろ姿。ふわっと香った匂いが、ちょっといいなって思った。
「いや、オレ、なに思ってんの?」
思わずぼやいて、オレはまた玄関の方に歩き始めた。
次の日、変な校内放送が入ってみんなが頭を抱えて蹲った。オレも同じ。すげー音がして、でもそんなに長くなくて、教室に待機しろってことになった。丁度、視聴覚室での授業だったから、オレらはそのまま視聴覚室で喋ってる。
担任もいなくなったし、授業、つぶれっかな。
「なんなんだろうな、ホント。最近、変なことばっか」
「だから調査してんだろ?」
「ああ、確かに。今日も会ったらさ、またファンサしてたぜ、あの美人」
「そういう人なんだろうな」
「なに。衣吹も興味、出た?」
「お前のとは違うけどな」
そんな他愛もない話をしてると、急に女子の一人が、甲高い声を出し始めた。確か、声の異能の澤田だ。直後、窓がガタガタと震え始めた。
「なんか、変じゃね?」
晴樹の声。他のクラスメイトもみんな、澤田を見てる。なんとなく気味悪くて、みんなが澤田から離れて、澤田と仲が良い高林だけがそこに残ってる。
そんなことを思ってると、澤田の声が一気に大きくなって、耳を塞ぐ。声で耳が、痛い。同時に、窓の震えも大きくなって、誰かが強く叩いてるくらいの音が鳴ってる。
うるさい。
戻って来てた担任も、何もできずに遠巻きに見てる。教師だろ、お前。なんとかしろよ!
そうしてると、ドアが開いた。スクリーン側のドアだ。そこに立ってるのは、昨日の美人。すぐに強い光が教室内を埋め尽くして、目が開けられなくなった。
数秒後、ピタリと音がやんだ。声も、窓の震える音も。
何も聞こえなくなって、眩しさもなくなって、目を開けた。見えたのは、視聴覚室の中央で立ってる、美人の姿。他の連中はみんな、倒れたり座り込んだりしてる。
静かに立ってるその美人の目は、翡翠っぽいキレーな目で、ちょっと輝いてる。
ぞくっとした。なんでか分かんない。でも、この光景を忘れちゃいけない気がした。
🖤「阿部さん」
同じスクリーン側のドアから入って来たのは、男子生徒。ああ、知ってる。確か、二年でサッカー部の目黒蓮。背、高くて目立つし、女子がよく噂してるからすぐ分かった。
💚「目黒君。来ちゃダメだって言ったのに」
🖤「何があったんですか?」
💚「窓が震えてて、このままだと割れて危ないから止めたんだけど。この子、異能力者だよね」
「その子、声の異能なんです。特定の人にだけ音を届けられるとか、周囲の声のボリュームを下げたり上げたりって。普段はそのくらい」
💚「でも、さっきは窓がガタガタ揺れて危なかった。多分、周波数と振動が合ったんだろうね。それもガラスが割れそうなほどだからかなりの音圧になってた。聞いた限り、そんなに強い異能じゃないのに……とにかく、先生に言って生徒を避難させてもらおう」
あの美人はすぐ、倒れてる担任の方に行って、気付いた担任に事情を話してる。急いで担任が出て行った。けどオレは、あいつから視線を外せなかった。
💚「何か変だ。これ以上、被害がないといいんだけど」
そう言って急に辺りを見回して、それからじっと動かなくなった。
🖤「……阿部さん?」
💚「……なんか、感じる」
🖤「え?」
💚「上からだ。屋上ってどこから行ける?」
🖤「えっと……案内します」
それから、目黒と、阿部というらしい美人は視聴覚室から出て行った。
二人が出て行ったからか、視聴覚室内がざわざわとし始める。
「やー、ビックリしたなー……衣吹?」
「……」
「どうした? お前。なんか、楽しそうだな」
「そう見える?」
「めっちゃ。あれだ。新しいゲーム買った時みたい」
そうかもしれない。なんとなく気になる、じゃ、もうない。なんかある。あの、阿部ってやつ。
こういう勘って外れること、ないんだよねー、オレ。
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