テラーノベル
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___会談から1ヶ月後
ルカはマスクを付け、フードで身体を隠す。
(…俺は変身できるヒーローじゃねぇから、不便だけど…助けを求めていそうな人を見つけるまでは全身隠さないとな。)
「…さーて、」
声も気づかれないよう、手で押えながら、低い声で呟く。
珍しく傍にヒナは居なかった。
(めめ様との会食で色々考えたいから、ってね。)
(仕方ないことだから…)
怪しいものに見えるだろうが、ルカはそう思われることを諦めていた。
「…何こいつ?」
今日も、一般人が何人も通り過ぎるなか、そのうち何人かがこちらを見てくる
「え、こっわ!」
そうヒソヒソと嗤う男子高校生らしき声が、ルカの耳に微かに届く。
(…チッ、本当ムカつく)
(誰が一般人を助けてやってると思ってんだ?)
そう静かに怒りを心の中で吐き出した。
吐き出しつつも、ただ無言で雑踏の中を歩いた。
大人はそれが”皇”であっても、気が付かないのであれば皆は通り過ぎる。
(隠してる限りは、俺のことは微塵も気にしないだろうな。)
ルカもまた、困っている訳でもない一般人のことは気にしない
_だが子供は遠慮なく、こちらを見てくる。
ルカはそれを、子供に気づかれないよう髪越しに、横目で見た。
(…はぁ、しょうがないよな。)
ルカは小さく、息を吐く。
(まだ成長中なんだし。)
ルカは気持ち背筋を伸ばして、曇り空の街を歩いた。
こんなことを思うたび、助けた子供たちからの言葉を思い出す。
「皇様…!?ありがとう、ございます!!」
「わ、私のこと、助けてくれるんですか…?」
ルカはそれに対し、微笑んだ。
「大丈夫だよ、お兄さんが助けてあげるからね!」
そして、そう言った時の憧れの眼差しを思い出す。
(…だから、俺は助け続ける)
(…考えたりせず、ただ動き続ける)
(…皇の威厳なぞ、要らないから。)
ルカは少し考えるかのように軽く頭を押さえる。
(…そうだ、ついでに…菓子ちゃんの姉の戸籍も調べよう)
(…手がかりになったらいいんだけど)
___
「…」
メイドが、ヒナの様子を見にヒナの自室の扉を叩く。
「ヒナ様、大丈夫でしょうか…?」
「…えぇ、大丈夫です。」
少しだけ元気の無さそうな声が、扉越しに聞こえる。
「あ、あまり抱え込みすぎないでください…!」
「私たちは味方です…!何があろうと…!」
「…えぇ、ありがとう。」
「ごめんなさい、情けないところを…」
ヒナは考え込んでいた。
めめと、菓子の姉について。
(…めめ様が本当に知らないとして、誘拐だとか、危険なことに巻き込まれてる可能性も考えられる。)
(でも…そうだったら、どうしたらいい…?)
(分からない…)
(…身元も、どこにいるかも、何も掴めない…)
「…1ヶ月経ったけど、なにも状況は変わってない。」
「だめだ…」
ヒナは思う。
もう、諦めた方がいいのか?
そう考えそうになるが、食卓で菓子の目を見る度、そうはいかないと思い直す。
(…きっと菓子ちゃんは孤独だったんだ…)
(…私と同じ…孤独な子だったから…。)
(だから私はずっと、この子に…)
___
「お前さぁ、貴族のなり損ないのクセしてどんだけよぇえの?気持ち悪い」
「…」
「兄に頼りきりのクズなんだろ?」
「………」
「いいよなぁお前は、貴族だからタヒなないなんて」
「アハハハ!!本当タヒんどけばよかったんじゃない?」
「アハハハッハハハ!!!」
「気持ち悪い!気持ち悪い!」
「弱虫!弱虫!」
「…」
____
「…わたしは…どうして…?」
「どうして…」
「いやだよ…」
「…こんななら、ならなきゃ良かった…」
「みんなみたいに、私も生きたかった…!」
「…」
「ヒナ…」
「ごめん、助けてやれなくて。」
「ごめん…」
___
「…う、うぇっ…」
突然の吐き気が襲い、思わず口を覆い隠す。
自室でこうなったのは、もう何度目だろうか?
「けほ、げほ…!!」
そう考えても_あの日から1歩も動いてなどいない。
それに酷く気持ち悪さを覚える。
(…もう引きずったって無駄なのに…!!)
(なんで…なんで私は…!!)
わからない。
もうわからない。
__こんなにも無駄なことを考えても、何もならないというのに
ずっと…頭の中で、無駄なことが頭を回っている。
「…違う…私の事なんて…げほ、考えるべきじゃない…」
「今はルカ兄と…げほ、げほ…菓子ちゃ、んのことを…」
「…う…!!」
再度、口を覆い隠す。
涙が思わず溢れ出す。
(違う、違う、違う、違う、違う…)
(どうして?どうして?私の事なんて考えちゃダメだ、また進めなくなる…)
止めないと_そう分かっていても、何故か今は、今だけは止められない。
兄は今も動いているというのに…
今は止めないと…
「…様!!」
「ナ、様…!!」
誰かの声がぼんやりと聞こえる。
何度も呼びかける、必死そうな声_
それは次第に鮮明となる。
「ヒナ様!!!」
「は…」
それは、2人のメイドの声だった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「…く、苦しそうな声が聞こえて…!」
まだクラクラする視界を、何とかはっきりさせる。
「ご、ごめんなさい!つい…」
メイドたちはヒナの声を聞くと、安心したように笑う。
「…もう!私たちは味方ですから、ね?」
諭すようにそう言うと、 1人のメイドがヒナの微かに震える手を握り、続ける。
「なんだって行動できるルカ様のことも、なんだって考えられるヒナ様も、心から尊敬しているんです!」
「だからどうか…困ったら、苦しかったら、私達に相談してください!」
ヒナはしばらく固まったのち、困ったように笑い
「…ありがとう…。」
ヒナは俯きながら、小さくそう呟いた。
___
「…今日はどこまで行くんです?」
「そうだなぁ〜…」
男は使い込まれた地図を広げ、考える。
「…あ、そうだ。」
「ここにしようかな。」
そう言って、男は指を指した。
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