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「流行り病」
センシティブなし。
💚ここら辺の敵は蓮が殺ってくれたけど、俺の腕が鈍ると困るから他に居ないか探してくるね。
🩷え!俺も行く!
どうにか翠仙に機嫌を直して貰おうと付いていく桜。それを下衆な物を見るかのように、翠仙は桜を一瞥してから風のように走っていってしまった。
🖤(嵐みたいな人達だな…)
そういえば転がっている死体はどうすれば良いのだろうか。取り留めの無い話ばかりで、彼らは肝心な所は何も教えてくれていないことに今気付いた。
流石に何十人、いや何百人程の死体をそのままにして置くことは無いだろう。敵とはいえせめて埋葬はしてやりたい。
🖤あ、そうだ。
闇の中に閉じ込めていた敵を掌から放り出す。その場に倒れた人たちは生気を失い、目は死んだ魚のように濁っていた。
「あ、ひぃっ、やだ…!」
🖤ごめんなさい。後でちゃんと弔うので。
「あ”ぁぁぁあっ!!」
もう苦しまないで良いように瞬時に首を両断する。何度も飛び散る血飛沫は俺の顔を汚していった。
里を襲ってきた人たちとは言っても、殺すことには罪悪感が募る。
🖤…
「君は優しいね」
🖤!?!
いつの間にか背後に、ひょっとこの面を被った竜胆色の着物の男が立っていた。
全く知らない筈だが、声には聞き覚えがあった。
🖤どなたでしょうか…
💜俺は紫陽花。華族の長男だよ。
そう言って紫陽花と名乗る男は面を取った。
見ると、優しげに垂れた目尻に、雪のように白い肌をした人だ。声も耳馴染みのする優しい声をしている。
そう言えば、戦禍で聞こえてきたのはこの人の声だった。だとすると、この人は伝えたい相手の頭に直接声を届けることが出来る能力を持っているのか。
🖤そうでしたか。大変失礼いたしました。
💜そんな畏まんなよ~。もっと砕けてていいって。
🖤ですが…
紐を解かれて面を外された。急に至近距離に来られたので思わずたじろぐ。紫陽花の手が顔に触れて、ひんやりとした感覚を残す。
💜なかなか綺麗な顔してるね。俺に次いで二番目ぐらいだ。
🖤…一言余計です。
💜え?俺が一番でしょ。
あはは、と彼は笑う。その顔は少しだけ嬉しそうだった。
💜にしても来るの遅れちゃったな~。もう片付けだけか。
🖤…何故敵がもう居ないと分かるのですか?
まだ敵襲はあるかもしれない、と翠仙たちは言っていたし、あれだけの人数ならば何処かに残党が潜んでいるかもしれない。その可能性は考えないのだろうか。
💜俺ね、視えるんだ。物が透けて見えたり、遥か遠くに居る敵の姿まで可視化出来る。それが俺の色華だから。
🖤成程。便利そうな能力ですね。
💜まー良いとこも悪いとこもあるってとこよ。
🖤そうですね。
少しだけ紫陽花の表情が曇って見えた。余計な事を言ってしまったかと心配になる。
💜片付けすっか。面倒臭いけど。
思い出したように紫陽花は苦笑いになった。色々教えるから付いてきて、と急勾配の道なき道を歩き始めたから驚いた。
💜死体は集めてから紅薔薇に焼いてもらうんだ。後は灰にして、墓作って…って感じ。
🖤ほお…
これを思うのは失礼なんだろうけど、すごく言葉足らずな説明で何をすればいいのか益々分からなくなった。
💜それ聞こえてるからな、笑。俺が説明下手なのは知ってるけど。
🖤ふふ、失礼しました。
💜まあ俺やるから見てて。
紫陽花は死体の山に手をかざすと、彼の腕は淡い紫色に発光し、何にも触れずとも全て持ち上げて見せた。
💜凄いでしょ。
ふふん、と得意気に紫陽花は鼻を鳴らす。
🖤はい。俺に次いで二番目くらいに凄いです。
💜うぉい!!笑
俺が先程の紫陽花の口調を真似して揶揄うと、彼はぎゃははと笑った。
💜あ、そういえば黄菊の見舞い行った?
🖤え?見舞い?
俺が思わず聞き返すと、紫陽花はきょとんとした。
兄さんは何か病を患ってしまったのだろうか。それにしてもそんな話は聞いたことがない。昨日だってあんなに元気そうだったのに。
💜あれ、知らない?彼奴昨日から風邪引いてんだって。
🖤そうなのですか。全く知らなかったです。
💜あー本当?なら見舞い一緒に行こうぜ。俺が案内する。
🖤勿論です。まずは死体を処理してからですよね。
それとなく誤魔化して仕事をせずに帰ろうとしていた紫陽花はぎくりとした。
里中に散乱した死体やら壊れた武器やらを回収してると、何時間も掛かってしまった。俺の色華は運ぶのに便利だが、長時間使ってしまえばとてつもない疲労感に襲われる。さらに酷い時は自分の意思に関係無く体が動かなくなってしまうのだ。兄さんにも気を付けるように言われていた。
💜あーーーやっとこれで最後か?!もう疲れた!帰ろうぜ!
目がしょぼしょぼする!と騒ぎ立てる紫陽花の向こうでは、せっせと敵たちを火葬する紅薔薇たちの姿が見える。紫陽花は長男だと言っていたが、彼の言うことが正しければ華族の中でも一番の年長者の筈だ。それなのに弟達が一生懸命に働いている横で全く手本にもならない言動をしている。
🖤まだ他の皆さんも頑張っていらっしゃいますし、俺たちだけ帰る訳にはいきませんよ。
俺が呆れ半分で物申すと、紫陽花は不満そうに下唇を前に出す。彼は仕方ない、と言わんばかりに作業を再開した。
🖤俺も手伝います。
長男の言う事は当てにならないので、忙しそうにしている紅薔薇たちの元へ駆け寄る。
❤️本当?ありがとう、助かるよ。
💚じゃあそっちの、桜と運んでおいてくれる?
🖤承知しました。
🩷じゃ行こうぜ!
🖤はい。
亡骸を焼いて灰にした物を詰めたらしい袋は、そこまで量は無いもののずっしりと重く肩に伸し掛かる。これが命の重みなのか、と歩き出すと冷たい風が吹いた。隣で桜色の髪がさらりと揺れる。
🖤紫陽花さんっていつもあんな感じなんですか?
🩷あんなって?
🖤仕事を面倒臭がるような態度というか。
🩷あー。でも彼奴、普段はまともな方だぜ?どっちかって言うと俺らがふざけすぎて怒られてる笑
🖤そうなんですか?ならどうして今日は違うんでしょうか…
🩷さあー?人の心が読める訳だし、何か思う所があるんじゃね?
何か知っている口振りをする桜の言葉の本質は分からないまま、作業は終わりに差し掛かっていった。
作業を終え、皆が集まっている所には紫陽花の姿が見当たらないことに気付いた。
🖤紫陽花さんは?
💚先に帰ってるって。別に全員でやる義務がある仕事では無いから一人くらい居なくても大丈夫なんだよ。
🖤そうなんですね。あの。
💚何?
🖤兄さんの家まで、案内して頂けませんか。
一方その頃。
💜side
俺の母親は病気で死んだ。梅という名前だったが、皮肉にも梅毒に罹って呆気なく。
それから常に頭を過るようになった。
もしも、大切な兄弟たちが病になって居なくなってしまったら。
それだけは避けたかった。
翠仙のように薬草を体から生やしたりは出来ないが、誰かが風邪を引いた時は積極的に看病をするようになった。
流行り病に罹った照の事が心配で、黒蓮をぞんざいに扱うような態度になってしまっていないか心配になる。他の兄弟達にもきっと迷惑がかかってしまっただろうし後でちゃんと謝っておこう。
桶の水で冷やした布を照の額に当てる。照の顔は赤く、明らかに具合が悪そうだ。吐かれる息もいつもよりずっと荒い。
俺が代わってやれたらな。しっかり者の照の事だから皆に迷惑は掛けまい、と無理をしていたんだろう。
でなければ三十九度の熱は出る訳が無い。
💜全く、兄弟思いなんだか何なのか。
俺が独り苦笑すると、噂をされたからか照は大きな嚔をした。
すると、廊下の方からどたどたと何人もの足音が聞こえてきた。咄嗟に異能を使おうとするが、今日は酷使していた事に気付く。
「兄さん、入りますね?」
💜え…?
次回に続きます。
お楽しみに!!