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放課後トイレの奥から、すすり泣く声がした。
扉の隙間から覗いたそこには、肩を震わせる椿がいた。
憔悴しきった声で、彼女は誰に向けるでもなく呟いた。
「死にたい」
私は、気づいたら声をかけていた。
「私も、そう思ったことある」
椿の目が揺れる。涙で濡れた瞳は、かつての自分そのものだった。
震える声で私は私の言葉を続ける。
「あなたを嫌う人たちにとって私もあなたも同じ。 でも、もし世界が全部敵になっても私だけは椿と一緒に笑ってあげられる」
返事はなかった。
ただ、椿の頬を伝う涙が止まらなかった。
昔の私ならきっと一緒に泣いてあげられたのかもしれない。
椿の泣き声は、狭い空間で小さく重く響いていた。
それは、教室に残された落書きよりも儚く弱々しい響きだった。
翌朝。
クラスは何事もなかったようにとまではいかないが喧騒に満ちていた。
けれど、椿と私だけは知っている。
この世界のどこかに、確かに自分を見てくれる人がいるということを。