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【君と家族になった日】
春の朝、窓から差し込む光に包まれた教室。
「今日、転校生が来るらしいよ」とクラスメイトの声が弾んでいた。
チャイムが鳴り、扉が開く。
静かな足音とともに現れたのは――誰もが息を呑むほど整った顔立ちの男子だった。
「吉沢亮です。よろしくお願いします」
教室がざわめく。
その美しさに見惚れる女子の視線、憧れ混じりの男子の視線。
その中で、〇〇も思わず心臓が早鐘を打った。
(……かっこいい……)
亮はゆっくりと教室を見渡し、その視線がふと〇〇に止まった。
一瞬だけ見つめ合った気がして、〇〇は慌てて視線を逸らす。
――ただの偶然。そう思いたかった。
でも、なぜだか彼の目には他の誰にも向けない特別な光が宿っているように見えた。
授業中も、何度もちらりと視線を感じた。
振り返ると、やっぱり亮がこちらを見ていて――〇〇の頬は熱を帯びるばかりだった。
その日の放課後。
〇〇は母から「今夜、再婚相手を紹介したい」と言われていた。
母の幸せを願っているから反対なんてするつもりはなかったけれど、やっぱり少し緊張する。
「とても優しい人だよ」と笑う母。
〇〇もその笑顔につられて頷いた。
玄関のチャイムが鳴る。
母が扉を開けると、そこに立っていたのは――背の高い落ち着いた雰囲気の男性。
「○○ちゃん初めまして。今日からよろしくお願いします」
「○○です。こちらこそお願いします」
そして、その隣に並んでいたのは……。
「……えっ」
目を疑った。
そこに立っていたのは、今日クラスにやってきた転校生――吉沢亮。
亮は少し驚いた顔をした後、にやりと意味深に笑った。
「……奇遇だね」
〇〇の鼓動は一気に跳ね上がった。
第1話
〜完〜