昔は想像もできなかった。
でも、今、私は40歳――
あれから何年が過ぎたんだろうか。
子どもは、もう小学校に通ってる。
高学年の今は、英語がペラペラで、日本語も話せるバイリンガル。成績も結構優秀で、しっかりした優しい女の子に育ってくれた。
「パパが恋人」だなんて、可愛いことをいつも言ってる。
「俺には恋人が2人いる。ママとユリアだ」
「えー! 恋人はユリアだけじゃないの~?」
「2人とも、パパの大切な宝物だ」
優しい樹は、ずっと私を大事にしてくれる。
でもやっぱり……相変わらずアメリカでもかなりモテる。お店には、幅広い年齢層のファンの女性が訪れて、たまに告白もされるらしいけど……
そう言うの、全部、いちいち私に報告してくれて。
複雑だけど……安心っていうか……
本当に、樹のおかげで私はずっと幸せだ。
「柚葉。来週、柊がこっちに来るって」
「えっ、柊君が?」
「仕事も兼ねて、ユリアに会いたいって」
「そうなんだ。こっちに来てから1度も会ってなかったから……ちょっとびっくりだね」
本当に、久しぶり過ぎて……
でも、また会える日が来るなんて、すごく嬉しい。
樹が言うには、柊君は海外の大手IT企業と組んで、積極的に海外進出をして成功してるらしい。
世界一も夢じゃないって。
すごいんだね、柊君。
独身で彼女がいるのかもわからない柊君。
柊君が決めた人生を、私は精一杯応援したい。
きっと、今なら、みんな笑顔で会えるだろう。
その思いの通り、1週間後、アメリカに来た柊君は、笑顔が素敵な昔のままの柊君だった。
私を大切にしてくれてた頃の、とっても優しい柊君の笑顔に、何とも言えない懐かしさと安心感を覚えた。
「ユリア、初めまして。柊です。パパのお兄ちゃんだよ」
ユリアは、かなり驚いてる。
全く同じ顔が2人もいたら当然だよね。
私も最初はすごく驚いた……何だか懐かしい。
「パパとおんなじ。じゃあ、ユリアの恋人は2人だね」
「ユリア、僕も恋人にしてくれるの? 嬉しいな」
柊君、本当に穏やかな顔になってる。仕事もプライベートも安定して、きっと気持ちが落ち着いているんだろう。
夜になって、ユリアが眠ってから3人で話した。
今夜は柊君はここに泊まる。
「柊、ワイン飲むだろ?」
「ああ、ありがとう。それにしても樹にあんな美味しい料理が作れたなんてな。最高に美味しかったよ。また食べに来ていいかな?」
「もちろんだ。仕事でこっちに来る時は必ず寄ってくれ。いつでも大歓迎だ」
40代になって、樹も柊君も大人の色気みたいなのが加わってとても魅力的だ。歳の重ね方まで似てるんだと思うと、2人が改めて双子であることの繋がりを感じた。
「柚葉、元気で良かったよ。ユリアみたいな可愛い子を生んで……すごいね。柚葉は立派なお母さんなんだね」
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