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「うん、お母さんになったよ。何とか毎日頑張ってる。でも、ユリアはあんまり手がかからないから助かってる」



「ああ、本当に良い子だね。僕にも可愛い恋人ができて、また会いにくるのが楽しみだよ」



「柊。結婚は……考えてないのか?」



樹は、自然にその質問をした。



「考えてない。たぶん一生しないよ。彼女は……たくさんいるし、寂しくないから」



たくさんいる……んだね。



「そっか。柊が選んだ道なら応援してる。今のまま行けば、ISも間違いなく世界規模の大会社になる。すごいよ、お前は」



「ああ、俺は仕事に生きる。仕事と結婚したようなものだな。まあ、それもありだろ?」



樹は、ワインを片手で持ちながらうなづいた。



「柊君、私も柊君のことはずっと応援してるから。体にだけは気をつけて頑張ってね」



「うん、ありがとう。柚葉以上に好きな人なんて一生現れないし。その柚葉が応援してくれてるなら、これからも自信持って頑張れる」



「柊、まさかまだ柚葉を?」



「ああ、もちろん。柚葉を嫌いになる理由がないだろ。でも、柚葉を樹から奪おうなんて、そんなことは1ミリも思ってないから安心して」



「柊君……」



まだ私を想ってくれてるなんて……

私は、とっくに柊君の心の中から消えてると思ってたのに。



でも、目の前の柊君の笑顔にかげりは無かった。



「柚葉。樹と幸せそうで本当に良かったよ。樹みたいに良い奴はいないからね。一生連れ添って仲良くして。他の奴なら嫌だけど、樹なら安心して柚葉を……」



そう言って、柊君はグラスに残ったワインを飲み干した。



「柊。柚葉は、俺が責任を持って幸せにする。お前の想いの分も。それから、俺は……柊にも幸せでいてもらいたい。そうじゃないと悲しいんだ、俺だけが幸せなんて絶対に嫌だから」



樹は、真剣な表情をした。

兄弟として、柊君を心から大切に思ってる証拠だ。



「僕は、幸せだよ。本当、ここに来て良かったよ。食事もワインも美味しかったし、それに、樹と柚葉とユリアに会えた。明日からまた仕事頑張れる」



その言葉が柊君の素直な気持ちだとわかったから、私はとても嬉しかった。



それから、しばらく私達は3人の時間を楽しんだ。

10年以上も会ってなかったのに、その長いブランクはあっという間に縮まった。

ワインと共に過ごす夜は、ゆっくりと更けていった。



朝になって、柊君は仕事に向かう支度をし、朝食を済ませた。

夕方、そのまま日本に帰るらしいから、柊君とはここでお別れ。



「また会おうね。体に気をつけて」



私達は、柊君に手を振って別れを惜しんだ。

また会える日を楽しみにしてる。

その時まで、みんな、それぞれに成長していたい。



それからすぐに、樹も仕事に向かい、ユリアも学校に行った。



私は、1人、家事を始めた。



家族の優しくて、楽しくて、幸せな日常がまた動き出した。

2人のあなたに愛されて ~歪んだ溺愛と密かな溺愛~

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