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何あのクソ野郎 トガ「主(あるじ)、あの人刺してきていいですか?」 イレイザーが何とかすんだろ
緑谷出久がパニック障害を患って居ます。
それを許せる方だけ見てください。
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あの日以来、A組は緑谷との距離感を守るようになった。
笑顔で話しかけられる回数も増え、授業中に彼が自ら質問をする場面もちらほら見られるようになった。
——ほんの少しずつだが、信頼は芽吹き始めていた。
放課後、校門前。
A組の数人と一緒に帰ろうとしていた緑谷は、街道を歩く人の多さに少しだけ肩をすくめたが、
耳のヘッドホンから流れる小さな音楽が彼を落ち着かせていた。
その時——。
「おいガキ! 人の前歩くなよ!」
乱暴な声と同時に、肩を強く掴まれる感覚。
次の瞬間、全身の血の気が引いた。
耳の中で、ざらついた男の声が過去の記憶と重なる。
手は震え、足が動かない。
「……やだ……やだ……やだ……!」
周囲の喧騒が一気に遠のき、息が詰まり、視界の端が黒く染まっていく。
掴まれた肩の感覚が消えない——消えない——拭かなきゃ——。
「離せ!」
爆豪が男の手を乱暴に払った。
「テメェ何してんだ!」
飯田が間に入り、男を押しのける。
だが、緑谷はもう地面にしゃがみ込み、肩を何度も叩きながら息を荒くしていた。
耳のヘッドホンは外れ、音が直接流れ込む。
人の声も車の音も、すべて刃のように突き刺さる。
「デク! 落ち着け! ここにいるのは俺たちだ!」
爆豪の声も、緑谷には遠く聞こえるだけだった。
その場に駆けつけた相澤が、すぐに緑谷の耳にヘッドホンを戻し、
「深呼吸しろ。……俺の声だけを聞け」と低く囁く。
緑谷の呼吸は、しばらく乱れたままだった。
せっかく積み重ねた一歩が、また音を立てて崩れていく——
その事実が、A組全員の胸を締めつけた。