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「 ミナト 、 は〜る、晴だよ。 」
「 ぁう 、 ? 」
「 !!そう、はる!! 」
「 ぁ〜うっ! 」
「 … ほんとに笑顔が増えましたねぇ。 」
「 ね、ミナトといる時のはるが一番幸せそう。 」
湊と居る時間は、とっても幸せで、時間を忘れられた。
月日が流れ、5年経った後。
4月18日、湊の5回目の誕生日が来た。
ハヤト兄さんは高三になり、トウヤ兄さんと僕は晴れて高一になった。
「 ミナト、誕生日おめでとう!! 」
「 はぅおにぃちゃ、ありがと! 」
湊の誕生日が来ると、毎回前に飼っていたミナトの姿が過ぎる。
ミナトの誕生日は、飼い猫の命日だということを思い出して。
また、少し悲しくなる 。
「 …ねぇ、ミナトは僕から離れない? 」
…なんてメンヘラみたいこと言ってるな。
「 ん〜?もちろんっ!おれ、はるにぃとやくそくしたもん? 」
そんな質問に満面の笑みで答えてくれた。
「 そっか… 」
「 ?? にいちゃんかなしいの ?? 」
「 ん、ん〜ん、 悲しくないよ 」
ミナトは首を傾げた。少し間が空いた後、僕の手を取り、僕の掌に、柔いミナトの頬をすりつかせてきた。
「 にぃちゃ 、 もうかなしくないよ ! おれがいるから ! 」
少ない語彙で、一生懸命に慰めてくれている。そんな姿が、飼い猫のミナトと重なった。
『 みゃ〜 』
明るく鳴きながら僕の方に歩いてきて、足に頭をすりすりさせてきてたっけな。
「 … ありがと、ミナト。 」
ぽん、と頭を撫で、ミナトに向かって微笑む。
「 どーいたしましてっ ! 」
ミナトはにぱ、と笑い、元気な声でそう返事を返してきてくれた。
「 ミナト、こっちおいで 」
「 ん、わかったぁ、とうやおにいちゃん ! 」
そう言って僕の元を去っていく。
ミナトが向かった先にはワンホールのケーキ、ジュース、豪華な料理、そして三人分のプレゼントが用意されていた。
これから誕生日会だ。
僕も後を追った。
プレゼントを渡して、皆でハッピバースデーを歌い、食事を分け、各々食べ始めた。
ミナトの誕生日パーティは凄く楽しかった。楽しくてその時だけは、飼い猫の事を忘れられた。
だけど、ふと、ミナトの誕生日会となると、毎回ぽっかりと空いた空白の違和感を感じる。
きっとこの空白は飼い猫のミナトの分だと確信している。
死んでしまった飼い猫に未練タラタラなのは僕もよく分かっているが、やっぱり大切だった存在だったから。
僕にとって、宝物のような存在だったから。
「 _ル、 … ハル !! 」
「 っえ、なになに、!? 」
「 なになに、じゃなくて … ぼーっとし過ぎですよ貴方 。 」
「 あ … ごめん、 」
目の前には一ピースのケーキ。誰も手を付けた跡がない。
フォークを持ち、ケーキをつっつく。
「 体調悪いなら無理しないでいいよ ? 」
「 … いや、大丈夫、 」
ケーキをフォークで一口サイズに切り分け、口に運ぶ。
味がしない。
「 … うん、美味しい 。 」
なんて嘘を言いながら笑みを浮かべる。
また一口、一口とゆっくり食べ進めながら。
「 … ね 、 にいちゃん 」
「 ん、なに ? ミナト 」
「 後で、あそぼ ? 」
「 良いよ ? 」
と、言うとにこりと嬉しそうにした。
暫くは談笑し、ご飯を食べて、パーティも終盤に差し掛かってくる。
ほぼ皆料理に手をつけていなくて 、 片や爆睡、片や遊んでいて、既にもうご馳走様の雰囲気。
見兼ねたお母さんが “ ご馳走様しよっか ” と声をかけてくれたので、寝ているトウヤ兄さんを起こし、ミナトと遊んでいたハヤト兄さんを呼び戻し、無事にご馳走様が出来た 。