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【山本視点】



「僕も北村さんみたいになれますか?」


(なんであんなこと…)



俺は山本颯樹。

今はとある学園の中等部の1年3組の担任で、数学を担当している。

(…。 )

「中野さん!」

俺は好きな生徒ができた。

「あっ、山本先生、ここ分からないんですけど…」

(可愛い。)

それは、中野歩美(なかのふみ)。

1年1組の生徒で、勉強熱心な優しい生徒だ。


「え、歩m…中野さんですか?初等部までは一緒でしたけど。」

俺はある日、1組の生徒に中野さんのことを聞いた。

「でもなんというか、初等部の時とは違うというか…」

その子は植田楓子(うえだふうこ)と言った。

ずっと仲が良かったが、4年生の時にクラスが別れてからあまり話せていないらしい。

「初等部の時は毒舌で、ヤンチャでした。」

「毒舌でヤンチャ?真逆やない?」

俺は思ったことはなんでもズバズバ言ってしまう性格だから、

たまに人を傷つけてしまう。

「うーん、そうですよね。でも、小5の時、」

そう言いかけた時、通りすがった1組の大門(おおかど)くんが言った。

「おい!楓子!!!やめろ。」

「あー…うん」

俺はその時は詳しく知らなかったから何を言おうとしたのかとても気になった。



「ところで…なんで歩美のことを?」

いつもは口が滑ってしまうが、


《生徒が好きになった》


なんて、生徒には言えるわけがなかった。

「…さあ。」

「…好きとか、?」


植田さんは、良くも悪くも察しがよく、職員室でも有名だ。

「いっ、いや?」

「ん、何何?」

大門くんは、何でも広めてしまうから、せめて大門くんにはバレたくなかった。

と、その時植田さんが言った。

「なんでもないで〜。後で行くから先言ってて!」

俺は助かったと思った。

「あ!そうだ、先生。歩美はやめといた方がいいですよ。」

少しびっくりした。

「…、え。あ、…いや、…なんで?」

「確かに可愛いし、優しいし、頭いいけど、痴漢とか結構あるみたいですし。

それに、とにかくモテます!どんな無表情の男も笑ってしまうほどの!!!

しかもしかも!!あの、黄色の目!エメラルドグリーンの髪!!

あれに笑顔がついて惚れない男はいないですよ!!!!」


“どんな無表情の男も”……?


「おぉ…詳しいな。」

「そりゃあ!!私も惚れた身ですから!同性結婚できないかなってくらい!!!」

しばらくしてから植田さんは顔を赤くして、

「じゃ、次の授業行きますね…///」

と、言って行ってしまった。




その後、『どんな無表情の男も』と言うのが引っかかった。

「そういえば、北村先生…」

北村先生は、俺より先に教師になった大学からの先輩だ。

なかなか笑わない北村先生も、中野さんの前ではとても笑顔だ。


「長谷川先せー!」

「ん、どした?」

長谷川先生も大学からの先輩だ。

正しくは、「北村先生と俺の」だが。

「北村先生って中野さんのこと好きなんですかね?」

「んー、まあそれっぽいけどなぁ…」

そう言ってしばらく考えてまた言った。

「北村くん、生徒を好きになることないと思うけど…聞いてみなわからんなぁ…。」


「北村先生って中野さんのこと、好きなんですか?」 

「えっ?」

生徒を好きになるわけないなら、すぐに違うと言うと思う。俺は続けた。


「だってだって!中野さんの近くにいるとすごい笑顔だし!!

 中野さんとよく話してるじゃないですか!」

すると、北村先生は、戸惑った顔でこう言った。

「え、いや、俺は教師やから、生徒と関係を持ったりは…」


なるほど。

 

「じゃあ、好きになりはするってことですか?」

これで否定はできないはずだ。

「ぅうぅう〜ん…」

やっぱり北村先生は、中野さんのことが好きなのだ。




(ふぅーん…あ。いいこと思いついた。)




北村先生、俺はね、あなたの事が大嫌いだから。


こんなことしても許してくださいね。

元々の名を背負って ~Should we forget the past?~

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