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港町ヨコハマ。ネオンの光が水面に揺れる夜。
私はいつものバーのカウンターに立っていた。
週末だけ回すDJブースは、音楽に再び触れるための小さな挑戦――
「……あんた、ここで何してんの?」
低く響く声に、思わず肩がビクッと震える。
振り返ると、そこには碧棺左馬刻――
かつてステージで何度もぶつかり合った男が立っていた。
「……久しぶりだな」
その一言だけで、胸の奥にあの頃の緊張と興奮が蘇る。
裏切られたあのバトル、敗北したあの夜、失った自信……
全てを封じ込め、笑顔を作る。
「久しぶり……ね。元気そうでなにより」
軽く肩をすくめ、普段通りの明るさを装う。
でも、心臓はバクバクと音を立てている。
左馬刻は私のDJブースに視線を落とし、微かに眉をひそめた。
「お前、あの頃より音、死んでんな」
言葉の刃が胸に刺さる。
でも私は笑いながら答える。
「そ、そんなことないし。……まぁ、聴いてみる?」
その瞬間、二人の間に再びビートが生まれる予感がした。
過去の痛みも、裏切りも、まだ消えない――
それでも、音楽とこの港町の夜が、二人を少しずつ近づけていく。