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𝓐𝓴𝓪𝓻𝓲
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#創作百合
𝓐𝓴𝓪𝓻𝓲
235
橋本 るるか
229
バーの薄暗い光の中、私はDJブースの前に立った。
左馬刻がカウンターに腰を下ろし、じっと私を見ている。
「……あの頃と比べて、ずいぶん落ち着いた音だな」
そう言われて、つい口元がゆるむ。
「落ち着いた……? そんなつもりないけど」
私は笑いながら、ターンテーブルに手を置く。
でも胸の奥では、昔の敗北がチクチク痛む。
左馬刻は無言でヘッドホンを取り、目の前の機材に触れる。
その動作だけで、あの頃のバトルの空気がよみがえった。
「じゃあ、試しに一発、合わせてみるか」
彼の言葉に、私は少しだけ息を飲む。
久しぶりに聴く左馬刻のラップ――
荒削りだけど、真っ直ぐで、どこか優しいリズム。
私もビートを重ねて応える。
「……やっぱり、あんたのリズム、面倒くさい」
つい笑いながら言ったけど、手は震えていない。
少しずつ、私の音も戻ってきていた。
音と音がぶつかり合う。
声と声が、空気を揺らす。
そしてその間に、言葉にならない感情が流れ込む。
「……悪くない」
左馬刻の声が低く響く。
笑ってごまかす私を、彼はいつもの鋭い目でじっと見つめた。
その瞬間、二人の距離が――少しだけ、近づいた気がした。
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