テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
鷹槻れん

20,037
鷹槻れん

35,405
#恋愛
水無月 京
1,300
#オフィスラブ
草原草原

1,286
『俺ばかり責めるなよ。だいたい冴実は重いんだよ』
私を誹謗する言葉がどこからともなく聞こえてくる。
ずいぶんと懐かしく感じるその声は、元カレの加那太だ。
そう認識できた途端、ぼんやりと靄がかかっていた加那太の顔がはっきりと見えた。
『お前のそういうところが嫌なんだ』
面倒くさいとばかりに、これでもかと加那太が顔をしかめている。
ああ、これは夢だと頭で理解し始めた。加那太とはとっくの昔に別れたのだから。
ゆっくりと瞳を開けると、見慣れた自分の部屋の天井が映った。
カーテンのすき間から朝日が差し込んでいて、窓の外で雀がチュンチュンと鳴いている。
ベッドの上で上半身を起こしながら、なぜあんな嫌な夢を見たのだろうと気持ちが沈んだ。天気のいい爽やかな朝が台無しだ。
別れてから三年が経ち、そろそろ失恋のトラウマを克服できたのではないかと思っていた。
だけど夢に出てきてしまうのだから、まだダメみたいだ。
本当にもう、あの恋のことは丸ごと全部忘れてしまいたいのに――。
三年半前、大学生だった私は友人の彩羽に人数合わせとして誘われた合コンで、別の大学に通う同い年の加那太と出会った。
映画や音楽に詳しく、ユーモアもあって楽しい人だった。
「今度さ、この映画を一緒に見に行かない? 絶対当たりだと思うんだよね」
加那太も私とは気が合うと思ったのだろう。
それからは連絡を取り合い、恋愛関係へと発展するのも早かった。
付き合い始めてから、私は彼の部屋に通うようになった。
掃除や洗濯、食事の用意もほとんど私がしていたが、それを不満に思ったことはなかった。
「今度の土曜、どこかお出かけしようよ。今だと紅葉が綺麗だよ」
出会いからあっという間に二ヶ月が過ぎ、もうすぐふたりで過ごす初めての冬がやってくる。
少し肌寒い空気が漂う晩秋から初冬の季節が私は好きで、加那太をデートに誘った。
もみじが真っ赤に紅葉している風景を想像しただけで私は自然と笑みがこぼれたのだけれど、加那太は逆に心底嫌そうに顔をしかめた。
「紅葉なんてなにがいいんだよ。ただの山だろ。疲れるだけだし、わざわざそんな場所に好んで行く意味が俺にはわからない」
コメント
1件
うわあ、この主人公の気持ち、めっちゃわかる…。別れて3年経っても夢に出てくるって、まだ心の奥で引きずってるんだろうな。紅葉デートを「ただの山」って一蹴する加那太の反応、読んでてイラッとしたわ。最初は楽しくて気が合ったはずなのに、温度差が出始めた瞬間の描き方がリアルで刺さった。この後の展開気になる😢