ゆかりside
りとさんはお祭りに興味があるようなので行ってみることになったが、正直人混みの中ではぐれたら合流する自信がないので幻覚にりとさんを別方向から見て貰っている。りんご飴は食べたので焼きそばとジュースを買い屋台を回っていると、りとさんが射的している子供を見ていた。
「射的、やりますか?」
「え、いいの?」
「お金には余裕ありますし、りとさんがやりたいならやりましょう。何か思い出すかもしれません」
りとさんは景品を見ながら少し迷った後に、銅貨を数枚持って並んだ。自分は横について行くが、買ったのは1人分の弾だけにして見ていることにした。軍にいた時は銃も使っていたが、それはりとさんよりも劣っている。なにより、今回は自分が楽しむ物ではないのだ。やらかすよりは見ている方が迷惑はかからないだろう。
「あっ当たった」
「お嬢さん凄いねぇ!一発で当てる人なんてそうそういないよ!」
「そうなんだ?」
「じゃあ景品ね!弾使いきるまでやっていいからね!」
景品を代わりに受け取り、屋台の人と軽く話していると相手が思い出したかのように話してきた。
「お嬢ちゃん達、ここらでは見ないけど旅人かい?」
「はい。各地をまわってるところです」
「そりゃ楽しそうだねぇ。ここらは治安良い方だけど、北方面や人気のない森とかに行くと女性二人じゃ危険だ。護衛を雇うか、通らんよう気ぃつけな」
「忠告ありがとうございます」
軍人なのでその心配は無用だが、確かに不自然だ。だが護衛を雇うのはあまりしたくない。最悪の場合、りとさんの正体がバレ、それを指摘した事によって記憶が戻ったりなんかしたら,,,いや、考えすぎだな。捜索されやすい隣国にいる事で緊張しているのだろう。今はりとさんが楽しんでいる。それでいい。
「ユカリ、終わったよ」
「お疲れ様です。沢山取れ,,,た、ようですね。一回宿に置きに行きましょうか」
「わかった。道は覚えてるし、さっさと行こう」
そういうりとさんについていこうとしたところ、屋台の人に呼び止められた。神妙な顔をしている。なんとなく、軍関係だと思った。
「すみません、先に行ってもらえますか?」
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「まだ、何かあるのでしょうか」
「呼び止めて悪かった。だが俺ァこの国の奴として聞いとこうかとな」
「私達は罪人ではありませんが」
「そうじゃねぇ、嬢ちゃん,,,ユカリって名前なんか?」
今は陸海国の紫と別人になりきる。じゃないと報告→連れ戻しで終わりだ。そのためなら慣れない一人称もやってやる。
「えっと,,,勘違いかなと。私はユカで、ユカリじゃないですよ」
「,,,出身国は」
「なんといいますか,,,東の辺境出身です。あの、ユカリさんが、なにかしたんですか?」
「,,,いや、悪いな。よく考えたら発音もちげぇしな。こっちの勘違いだ。嬢ちゃんら、どこへ行くんだ?」
「東の方で綺麗な場所があるらしいので、そこへ」
「へぇ、気を付けてな」
「はい。では」
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「ただいま戻りました」
「おかえり。明日はどこに行く?」
「そうですね,,,北の方には大きめの病院があるらしいので、そこへ行きましょうか」
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