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目が覚めたとき、俺は赤と白の混じった天井を見ていた。何処となく無機質だが、命の動きをしている。所々血が滴っているようで、嫌に不気味だ。
(何だよ。一体ここは何処だよ)
だが、俺はこの景色を知っている。前にプレイした事があるし、結構衝撃的だったからよく覚えてる。
(ここ、母親の子宮の中か)
これ、ママにあいたいのゲーム世界だな。正にゲームの景色と合致している。ひび割れた隙間から目がのぞいてくるのも、硬くてまともに寝れないシングルベッドもまんまそのままだ。
となると、俺はあのクソな母親の何番目の子なんだ?鏡なんてものはここにはないから、姿形が分からない。もしかしたら1〜6番目の子供に憑依したんだろうか。
身体が動かないから分からないが、少なくともカンシは来ない場所のはずだ、ゲームの記憶を当てにできるならだが。
そんなことを考えていると、視界の端から大きな目玉が近づいてくる。細い骨格にギョロリとした目玉と厚い瞼、丸くて重そうな下半身、移動のためなのか下半身に小さい車輪?のようなものをつけている。俺は見た事がある、確か6番目が言うには「目玉さん」だったっけな。
目玉さん、プレイした最初はその見た目にとんでもないインパクトがあったし、4番目とくっつく事でカンシになることを知った時も驚いた。でも、結局は5、6番目のために行動してくれた聖人だった、いや人じゃないな。ここは聖カンシか。目玉さんがいるから、多分俺は5番・6番あたりだな。
目玉さんは6番目の時みたいに無言でその大きな目で見つめてくる。うひ〜〜〜結構グロイ見た目してんな。ゲーム始めたては、こんなんで主人公の味方ポジションだったの信じられなかったな。え?敵ポジションは誰って、そらママに違いない。はい、閉廷!
数秒くらい見つめ合うのスッゲー気まず、なんか目玉さんも『ヤッベ、チョットヤリスギタカモ知レナイ』て顔してるし アセアセ
ん待てよ、ここで急に喋り出したら目玉さんビックリするかなあ… ヨシ、有言実行!
「あの……カンシさん、ですか?」
待って声結構可愛くなってる?そっか確かに、ゲームでも登場人物全員ロリショタだわこれ。俺の今の声は例えるなら小学3年くらいの声だな。んで性別は声の感じで男っぽいね。そんなに高音じゃないからな。
「 ?!?!?!!! 」
うん、やっぱり凄い驚いてんね。そら受精して着床したばかりの受精卵に一瞬で自分の正体を見抜かれるんだから当然の反応だわな。
「………エット、ドチラサマデスカ………。」
どちら様も何も貴方が守るべき胎児ですが何か? 私、水子《ref》中絶、流産、死産になった胎児や生まれてすぐ死んだ赤子のこと《/ref》になんかなりたくないですよ、ええ。
「なんか余所余所しいなあ。」
「エ、イヤッ、エット………」
目玉さんが混乱してるの見てて可愛いな、手を振ってるしチャームな目玉がぐるぐるしてるし、凄い汗かいてるし。でもこれ以上やったら面倒くさくなりそうだから、目玉さんが混乱してるうちに飛び起きしよーっと。
「えいっ!」
身体が凄く軽い、幼い子供って寝とけば体力が無尽蔵だから疲れの心配なんてしなくてもいいんだよな。お前は年齢マイナスだって?関係無いね
さて、欠損臓器確認のお時間。5番目6番目はそれぞれ脚と心臓、脳みそと腕が欠損していたのが理由だ。それに着床した直後だから無いだろうが、ママがカンシで我が子の腕だの脚だのを切ったりしてる前科があるからな。もし臓器が欠けたら一大事だから、入念に確認をしておこう。まず地面に立てるから脚はある。腕も2本揃ってる。自分の胸に手を当ててみると、
「………動いてる。」
心臓があることは分かった。あとは、脳みそは大丈夫かな。初期6番目みたいな喋り方じゃないし、脳がないならここでまともに思考できているのもおかしい。まああのママの言ってる事が分かれば大丈夫だろう、聴きたくないけど。
けれど消化器官だったり泌尿器官、あと肺があるかは別問題だな。今の時期はまだ成長途中だし、肺は呼吸のために途中から羊水で訓練をするらしいから時間が経てば分かるだろうけど、消化器官なんて全然使わないしな。
とりあえず生きるのに最低限必須な器官は揃っていてよかった。これなら他の臓器がなくても新生集中医療だの人工呼吸でなんとかしてくれるだろうが、ママがそんな事を施してくれるなんて信用はのでここはしっかり把握しておきたい。やっぱりこのママはクソ、はっきりわかんだね。
そんなこんなで体を確かめていたら、いつの間にか目玉さんが平常心を取り戻してる。恐る恐るといった感じで、
「アナタハ、イッタイ?」
「僕こそ色々と知りたい事があるんだけどなぁ。何番目の子供なのか、|子宮《ここ》は今どうなっているのか、とかね。ニヤ」
「………ソウデスネ。答エレナイ質問ヲ、シテシマイマシタネ」
さっすが目玉さん、状況理解が早い。というより、理解するのを諦めた感じだろうけどね。
「マズ、アナタハ7番目ノ子デス。ソレト、ココハ今トテモ脆クナッテイマス。下手二シゲキシナイヨウニ。アト出歩ク際ハ、カンシニ気ヲツケテクダサイ」
7番目の子?! マジか5番目6番目どうなったんだ。二人がどんなエンディングを迎えたのか想像がつかないな。
「腑に落ちないところはあるけど、言いたい事は分かった。そしたら僕はどうすればいいんだ?」
「ナラ、コノ質問ニ答エテクダサイ。アナタハ、ママにあいたいデスカ?」
ん〜〜〜 迷うなあ、いや、ここで閉まるまでずっといれたらいいんだろうけど、何もしなくても成長するからな。それに、このままカンシに首をもがれるよりは、一筋の希望を胸にカンシに首をもがれる方が断然マシだ。よし、
「うん、ママにあいたいって訳ではないけど、ここから出たいとは思っているよ」
「ワカリマシタ、ナラ私モデキル限リ手伝イマショウ」
「ありがとう」
あ〜そうだ。これも聞いておかないとな。
「そういえば、僕の兄さんと姉さんは何処にいるの?」
「………全員、既ニ死ニマシタ。デスガ全員、マダコノ場所二イマス。」
「あっそ。」
なるほどね、つまりあのエンディングか。4番目に体を取られることもなく、5・6番目がカンシ、鉗子に胴と泣き別れさせられるエンド。双子兄弟、強く生きろよ。(死んでる)
そんなこんなで目玉さんと言葉を交わして、時間を潰していたところ。
「よ! お前誰だ〜。もしかしなくても7番目かお前?」