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第7話 平々凡々
──目の前に立つウフツは微笑んでいた。けれどその笑顔は、どこか硬くて、私の目には“作られた”ものにしか見えなかった。
「ミナさん……すみません……」
その声には感情が込められていた。でも、その“感情”が本当のものか、私にはもう分からない。
(──信じていいの? 本当に……?)
この世界で唯一、私だけが記憶を持っていたはずだった。しかしウフツは、記憶を持っている。この世界は広いって言うのに、この町に丁度いるなんてあまりにも偶然が過ぎる。
私は、小さく息を吐いてから、静かに言った。
「……ウフツさん、ひとつだけ、聞いてもいいですか?」
その言葉を聞いて動揺をしたのかウフツは肩をすぼめる。ウフツは動揺を隠すように、「どっどうしました……?」と言った。
そしてすぐさま、
「何か、隠してないですか?」
と私は言った。心を裏を見るような鋭い声で。
それを聞いたウフツは口を開けようとし、辞めた。嘘をつこうとしたのだろう。
しかし、『ミナに嘘は意味が無い。』そう言いたそうな顔をした。そして声を出した。
「……すみません。隠していました。」
意外にもあっさりと認めてくれて困惑している。
しかしそれ以上に何を隠しているのか気になった。
「……何を、隠していたんですか?」
ウフツは目を逸らし、頭を下げながら口をごにょごにょさせている。しかし、すぐさま決心をしたように顔を上げた。
「───僕は『フツウ』でしか生きられない。」
その瞬間、強い意志を感じた。声が強い。今までにない声だった。その意志に私は一瞬怯んだ。
しかしすぐさま
「普通……?」
と私は言葉を放った。