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ここはひとつの研究所。
作業人が5人しかいなく、小さな研究所。
この研究所では恋をしている男子たちのさまざまな感情を抽出し、それを強力な薬のアンプルへと変換する研究が行われている。LDTは非常に依存性の高い薬で、摂取すると瞬時に多幸感を呼び起こすが、効果が切れると深い絶望へと陥る。
苦くて甘い薬を開発している。
黒「みんな聞いて」
5人が作業をしてる時、研究長のあにきがいきなり真ん中に立つ。その隣には見たことがない人が1人立っていた。
黒「新しく来てくれたないこやで!」
どうやら新しい研究員が増えたようだ。
別に1人、2人増えたところで変わらないし、僕にはあの人しかない。
桃「分からないことだらけだけどよろしくお願いします!」
金髪に少しチャラいアクセサリーをつけて右手には書類を挟んだファイルを持っていた。
ファイル中が不意にちらりと見えた。
そこにはあの人の写真が写ってたように見えた。
今日も研究。研究は楽しい。
だってあの人を忘れられるから。
だけど今日も彼が褒めてくれた、彼が好きって言ってくれた香水をつけた。
僕は、元々香水が好きという訳ではなかった。だけど彼に好きって言って貰えるように色んな香水を買って試した。彼はすぐに僕の変化に気づいてくれて、今日僕がつけたフローラルの甘い香りが1番好きだと言ってくれたんだ。もう、僕のじゃないのに。求めちゃダメなのに、諦めようと頑張ってるのに。
褒めてくれた香水だけが減っていく一方だった。
あぁ、なんでこんなこと考えながら歩かないといけないんだろう。朝から憂鬱。
まだ肌寒い空の中、多分僕だけが落ち込んでる。ここは、彼が住む街。見慣れた坂道。
ここを通るだけでなんか嫌な気持ちになって、少し早歩きをする。まだ時間があるからコンビニでも寄ろうかな。そう思い、そそくさと歩く。
コンビニに入ると同じ研究員で僕がいちばん信頼している同期のしょうちゃんがいた。
ぼくの相談相手で多分しょうちゃんがいなかったら僕は今頃死んでたんじゃないかな、って思うくらいには頼りにしてる。
一通りコンビニで買い物を済ませて、しょうちゃんと研究所まで歩いていく。
白「最近、まろちゃんとどーなん。」
数十メートル、ただ無言で歩く。正直朝のあまりテンションが上がらない時に人と会っても話すもの盛り上げる気力がわかない。
だからしょうちゃんから話しかけてくれるまで待ってた。しょうちゃん話すの大好きだし、だけどいきなりこの話題をぶっ込むとは思ってなかったし、さっきまでずっとその事を考えて忘れようとしてる時に彼に触れらてしまい、少しどうすればいいのか、正解なのか分からなくなる。
水「えー、?それ聞く、?笑」
暗くなりすぎないように、深く行かないように。適当に返す。とりあえず軽く笑っておけば何とか空気は和むだろう。
ここから深堀されないように逆に質問する。
これが僕にとっては最案だと思う。
水「それより。しょーちゃんもどーなの?」
白「えっ、どーって、なんや?」
やっぱり君は優しいから、ずっと隠してるつもりなんだけど、僕がいふくんと付き合って1、2ヶ月後に気づいたんだよね。
しょうちゃんはどこまでも優しくて友達思いでほんとに心配になるくらい気が利く。
しょうちゃんはきっと僕と同じくらいに時にいふくんのことを好きになって、でも僕が先にしょうちゃんに相談しちゃったから言えなかったのだろう。
水「何って、笑」
水「しょうちゃん、いふくんのこと好きでしょ?笑」
笑って、深刻じゃないように振る舞う。
こうすれば僕がいふくんに吹っ切れたように見えるかな。
白「え、なんで、」
やっぱり困惑してる。ま、そりゃそうだと思うけど。
見てたらわかるよ。しょうちゃんがいふくんにだけ韓国のお土産を買ってきたり、こっそりお揃いの指輪渡してたり、僕がいふくんとの惚気話をすると苦しそうな顔してたことも。僕知ってたよ。
しょうちゃんだから許してた。しょうちゃんだから僕といふくんが付き合ってる間はいふくんに手を出さないことも全部わかってた。
水「なんでって、見てたらわかるよ?笑」
笑ってしょうちゃんをみる。しょうちゃんは俯いたままだった。なんか嫌なことしたかな。
白「怒らないん…?」
あぁー、そういうことか。
僕はそんなことで怒らないのに。
水「しょうちゃんだからそんなに気にしてなかったけど、まぁちょっと妬いたな」
これが僕の本心。本心に打ち解けられるほどしょうちゃんのことは信用してる。
だからしょうちゃんのことも教えて欲しいし相談に乗りたいってこともしょうちゃんに伝えた。そしたらしょうちゃんは安心した顔をして教えてくれた。
今までの好きになってからの話。
やっぱりいふくんを堕とすのは難しい。
だけどどこまでも優しいいふくんだかそう簡単に振ってくれない。だから諦めてるのも大変なんだよね。わかるよ気持ち。
白「んーまぁそうやな。多分お酒を言い訳にしぃひんと会ってくれへんな。」
そういうしょうちゃんの目には涙が溜まってた。 青い空をぼーっと見て。
水「そっか。」
今の僕が言えるのはこれしかない。励ましてもアドバイスしても元々付き合ってた僕に言われるのはいい気はしないと思う。
でも大丈夫。僕たちにはあの薬があるから。
水「研究所ついたら一緒に飲もう」
そう僕が言うとしょうちゃんは乾いた笑いをした。
白「そーやな。もう僕ら薬なしじゃ生きらへんな。」
当たり前じゃん。薬なしで生きていくなんて僕には到底無理な話だね。
あの薬があるから僕は生きていける。
あぁそろそろ効果がきれそうだよ。
コメント
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第1話お疲れさま!「苦くて甘い薬」ってタイトルがもう胸にくるわ…。研究所で恋愛感情から薬を作るっていう設定がまず刺さった。水くんがしょうちゃんの秘めた想いに気づいてて、それでも「しょうちゃんだから」って許してる関係性が切なすぎる。最後の「薬なしじゃ生きらへんな」で一気に重みが出た。依存と恋愛がリンクしてて、続きが気になる!