テラーノベル
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修学旅行から帰り、日々の日常が戻り出した頃、僕はあることで頭がいっぱいで夜も必死に頭を抱えていた。そう、それは柚月先生の誕生日だ。僕と柚月先生の誕生日は1日違いでしかも今年は僕の方が日曜日。これは誕生日会をやるしかないと思つつも、なかなかラインを送り出せなかったが“もうどうにでもなれ!”と謎に自信付いた深夜1時頃、LINEを送信した。
「ゆづちゃんもうすぐお誕生日じゃん?良ければ僕の家でお誕生日会というか、お家で映画見ない?ケーキも買っておくよ」
柚月先生とはだいぶ世間一般的なカップルらしくなっているが自分は相変わらずドキドキが止まらない。柚月先生には「もう先生呼びじゃなくていいよー」と言われているも、どうしても脳内では先生呼びをしてしまう。そんなことはさておき、もう夜も遅いので眠りにつこうと思い、布団に潜るがそわそわしているのかついつい布団を剥いで何回もメッセージを見返してしまう。思い切って僕はスマホを棚の上に置いて布団を勢いよく被って深呼吸をした。心臓のドクドクとした音が脳内に響き渡るも、だんだんと体の力が抜けていき、気が付けば深い眠りに落ちていた。
翌朝、朝起きると窓から心地よい太陽の光と風が流れ込んできた。棚の上のスマホに手を伸ばし、時刻を確認すると9時16分。そして通知が0件。まだ起きてないのかなと思つつベッドから起き上がり、毎朝日課のランニングに行くための準備を始めた。
帰ってきて息が上がっている中、ピコンとスマホが音を立てて鳴った。焦って携帯を乱雑に取りいつものように長押しでメッセージを確認した。
「おはよう!めっちゃいいじゃん!その日は空いてるから13時半くらいにケーキ分のお金と健ちゃんの誕プレもちゃんと持っていくね!」
いつものように元気いっぱいな返事が返ってきてふぅと深い安堵のため息をついた。
そして新たなる問題は柚月先生の誕プレだ。正直女心なんて1mmもわからない。何をあげればいいのかわからず、気がつくとSafariのタブは女性が喜ぶ誕プレランキングやそれっぽいサイトで溢れていた。悩んだ結果、canal 4℃のネックレスを贈ることにした。でも、どんな柄をあげればいいのかわからない。色々調べると金色のネックレスか銀色のネックレスかは肌のトーンなどのパーソナルカラーで決めると良いらしい。柚月先生は写真をよく見るとオレンジ色のリップをつけているのでどうやらイエローベース。慣れない専門用語に戸惑つつも、金色のネックレスが似合うということが分かった。その後も派手すぎず、地味すぎないネックレスを求め、片っ端からカタログを見てようやく購入することができた。
あとは誕生日会を楽しみに待つのみ……!!
朝7時。僕は焦燥感に包まれながら目を覚ました。なんだかソワソワして居ても立っても居られないのは今日が誕生日会当日だからだ。いつも重い体が今日は自然と軽く感じられ、僕はベットから起き上がった。いつものルーティンを済ませ、初めに部屋の片付けに取り掛かった。改めて部屋を掃除すると埃だらけのところやゴミが散らかっていて自分はこんな汚い部屋に住んでいたのかと絶望感に浸りつつも、片付けを終えた。今度は休む間もなくケーキの買い出しに行かなくてはならない。
柚月先生はフルーツタルトが好きらしいので美味しい店をあらかじめ調べておいた。深夜の僕ナイス!と内心思いつつ軽い足取りで家を出た。
いざ店につき、ショーケースの中身を覗くと美味しそうなケーキがずらりと並びまるで宝石箱のように思えた。
予定通りフルーツタルトと僕の大好きなガトーショコラを購入し、ルンルンで帰宅した。その帰り道のそよ風はどこか夏を感じさせるような心地よい風だった。
時刻は午後1時。柚月先生が来るまで残り30分。僕はあらかじめ柚月先生と見る映画を探しておこうと思い立ち、Netflixを開いた。柚月先生はどんなジャンルが好きなのかわからないがこういうお家デートはホラーが鉄板ということでホラー映画にしようかな〜とかそんなことを考えていると“ピンポーン”と家のチャイムが鳴った。聞こえていないのにも関わらず反射的に「はーい!」と叫び、急いでドアを開けた。
すると、いつもと違い髪を下ろしてクルクルに巻いている美しい彼女が目の前にいて思わず息を呑んだ。
「髪、巻いてみたんだけどどうかな…?」
「えっ…えっと…その、めちゃくちゃ可愛い…!」
あまりの可愛さに思わず動揺して言葉に詰まってしまったが、とりあえず柚月先生を中に招き入れた。
「ケーキ何買ってくれたの??」
「え〜秘密🤫」
「え〜そんなこと言われたら余計気になる!てか、健ちゃん意外と部屋綺麗じゃん笑もっと汚いかと思ってた!」そう上目遣いでてへっと笑う彼女に「ひどいな!」とツッコミを入れ、映画鑑賞用のジュースとお菓子を取り出した。
「じゃじゃーん!お菓子とジュースあるよ?あと、映画は『呪怨』っていう作品を見たいんだけどいいかな?」
「全然いいよ!あと実は…私もお菓子買ってきちゃった…まぁいっか!贅沢な菓子パって事で!」
そういうことで部屋の電気を消し、二人がけのソファでゆっくりと映画を見ることになった。
ソファに腰掛け、テレビのリモコンを押すといよいよ映画の上映だ。ふと、隣に座る彼女の横顔を横目で確認するとあまりにも耽美で美しかった。しかも、狭めのソファなせいか、いつもよりも距離が近く手と手がすぐ触れ合いそうで、僕の心臓が早鐘を打つと同時に、彼女からはほのかにラベンダーのような柔軟剤の香りがし少し落ち着いた。
映画が始まってすぐ、暗闇の画面に不穏なフォントでテキストが浮かび上がった。低く響くおどろおどろしい環境音だけで、スクリーンの空気が一気に冷え込み、「とんでもないものを見始めてしまった」という逃げられないプレッシャーを植え付けられた。
物語序盤からクライマックスで、誰もいないはずの家や階段から気配を感じたり、人間とは思えない関節の曲がり方をしている化け物が追いかけてきたりと、なかなかにホラーの上に気を抜くと喉を絞められたような、世にも奇妙な絞り出すような声と音が聞こえ、容易くこの映画を選んでしまったことを激しく後悔した。しかし、悪い事ばかりではなかった。物語の後半、怖さがどんどん増す一方、柚月先生の方は僕よりもさらに怖がりなのか、僕の着ている長袖の袖を優しく引っ張りながら小声で「怖いよぉ…」と話しかけてくる。そんな可憐な彼女を目前にして僕の理性はあと少しで弾け飛びそうだった。映画の内容なんてもうどうでもよく、ただ目の前にいる仔犬のような彼女を抱きしめたいという感情ばかり僕の脳内を支配した。鼓動がドクドクと高鳴り、きっと僕の顔は耳まで真っ赤になっているに違いないだろう。
だが、僕は勇気を出してそっと彼女の頭に手を置き、優しく撫でた。僕は彼女の温もりを感じてさらに鼓動が早まる。彼女は一瞬驚いたような表情を見せたもののまたニコッと微笑んで「ありがとう」と小さな声で囁いた。そんな姿を直視するのはあまりにも恥ずかしく、思わずそっぽを向いてしまった。けど、彼女の頭を撫でる手だけは止めることができずずっと撫で続けることにした。数十分後、物語は最終局面を迎え、主人公の少女と化け物が追いかけるシーンで女の子が無事逃げ切り物語は終了した。僕は部屋を明るくしようと立ち上がりスイッチを押すと、さっきまでの暗闇の中に慣れていたせいか部屋の明るさにびっくりして数回パチパチと瞬きをした。
「ゆづちゃんめっちゃビビってたじゃん笑」
「もー!そんなこと言わないでよー!恥ずかしいじゃん‼︎」
「ふふっ、でもそんなゆづちゃんも可愛いかったよ。」
「……別に、褒めても何も出てこないからね…」
そして、柚月先生は「ふぁあ……」と大きくあくびをし、少し疲れた表情をしていた。おそらくホラー映画を見たことによって感情が昂り、疲弊してしまったのだろう。
「ゆづちゃん、ちょっと寝る?まだケーキ食べるまで時間あるから少し寝てても大丈夫だよ。」
「じゃあ…お言葉に甘えて少し寝ようかな。」
そういって、柚月先生は僕の部屋のダブルベッドで眠ってしまったようだ。眠ったことは確認したはいいものの、どうもその寝顔が頭から離れず、作業をしようにも数分に一回は彼女の方を向いてしまう。僕は好奇心でそっと彼女に近づき顔を覗き込んでみた。彼女はすやすやと規則正しい寝息を立てながら子供のように眠っていた。僕はバレないようにスマホを取りカシャリと写真を撮った。音がかなり大きい音で部屋に響き渡るも彼女は目を覚まさなかったので、僕はふぅと安堵の深いため息をついた。そして、写真を手に入れてからやることはただ一つ。速攻で私用のiPadの待ち受けに設定した。ちょうど待ち受けを探していたのも相まって、こんなに可愛い待ち受け写真を見つけてラッキーと思っていると、「ふぁ〜あ」と僕も大きなあくびが出てしまった。今すぐにでも寝たいが、流石に冷房に直に当たりながら寝るのはまずいと思い、ベット都合よく空いてないかなと思いながら柚月先生の方を覗くとちょうど一人分くらい入れそうなスペースを発見した。もう眠気に抗うことはできずそのまま布団に入りすぐに深い眠りへと落ちてしまった――
コメント
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うわー、2話目も甘々で最高でした…!誕プレ選びにパーソナルカラー調べるあたり、健ちゃんの不器用な誠実さがにじみ出てて微笑ましい。ホラー映画で怖がる柚月先生を撫でるシーン、まさに「ホラー映画の恋愛マジック」炸裂って感じでニヤニヤが止まらなかったです。寝顔を待ち受けにする健ちゃんの行動力も好き。というか『呪怨』でデートってそのチョイスも面白い(笑)。2人とも可愛すぎて、次回も楽しみにしてます!
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