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ピーナッツ
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【視点:qn】
「実は僕、中学の時いじめられてたんです。」
急にそう切り出した、ゆきんこさん。
「イジられ役、いわゆる笑いの種、そのための道具みたいに使われとって。」
少しずつ俯いて崩れて、関西弁が顔を出した。
「まあ結局中学時代は逃げられずに終わって、自然とでしか逃げられんくて。今も不登校。」
だんだん、素に近づいて、ちょっと顔を上げる彼。
目があって、向き合っているこの構図が改めて脳に認知されてゆく。
「そんな中、まあ頑張って少しずつ前向きになれたんやけど。」
また顔を少し俯かせた。
「とにかく、そうやってあのコミュニティーに入ったんが、僕の加入前のエピソード、ってことや。」
そう言って明るくにっこり笑う彼。
「ばななさんは、、」
「おんりー。」
【視点:or】
「え?」
「おんりー。名前。」
「、、おらふくん!僕はおらふくんって言うんよ!」
「じゃあ改めて、おらふくんって呼ぶね。、」
「僕もおんりーって呼ぶわ!」
名前を教え合った。
正直、すごく嬉しい。
ちゃんとリアルで関係を作れた。
「それで、もしよければなんやけど、おんりーはエピソードとかってある?」
「あるよ。けど、結構どうでもいいかも。」
「え、いや全然ええよ。聞きたい!」
そう言うと彼は小さくにっこりと笑いながら、話し始めてくれた。
「僕は、ちょっと息抜きにって感じかな。」
「学校ってさ、結構さらに枠を増やす場所でしょ?」
「、なんかこう、枠だけじゃないかな、って思ったというか」
「いや、まあ枠の中って大事だけど」
「でもこう、囚われないっていいって言われたりするし」
「いや違うかな?」
「とにかく、こう、自由が欲しかったというか」
「いや自由ってそもそも何?って話だけど」
「別にそんな深い話なんじゃなくて」
「あーいや、やっぱわかんないな、分かんない。」
「いや分かってて、違くて、その、言語化できないというか」
「まあそのだから、違う」
「分からない」
「違う」
「いやそうじゃなくて、ごめん」
「それも違くて」
「えと、だから」
「分かんない」
「分かる」
「違う」
「違う、そうじゃ、、ちが、、」
だんだん壊れるようで、
だんだんしずんでいっていて、
混ざり始めて、
ぐにゃってゆがんで
歪んで、
いや逆にハッキリしてて
「おんりー、、?」
目の前の彼(きみ)から感じていた。
会った時に最初に見えたのは
その目、その心、その中心の裏?
君自身の、うず。
ぐるぐる、グニャってしてて
半分だけ閉じてある、みたいな。
それが今、彼を飲み込もうとしてる。
溢れ始めている。
「、、おんりー。」
「おらふくん。ちょっと、捨ててくるね。」
そう言って伝票の上にお金だけ置いて、
普通にカフェの外に向かって歩いてゆく彼。
「え、ちょっ、、!?おんりー!?」
急いで店員さんにお釣りはいらないです、
とお金と伝票を渡して追いかける。
店の外に出て、話しかけようとする。
でも、次の瞬間何も言わず駆け出す君。
、、、これじゃ、話せなくなる。
きっと、絶対。
慌てて、全力で追いかける。
待ち合わせの時に止んだはずの雨が、また降り出した。
【視点:qn】
「っ、はぁ、、、ぅ、、」
苦しい。
初めて、そう思った。
すぐにぐちゃぐちゃになって
もっと、別の何かになっちゃったけど。
名前を伝えた時には、
エピソードがあると伝えた時と同じで、
”どうでもいい”ってなってた。
後ろから追ってくる彼、ゆきんこさん。
あ、おらふくんって呼ぶことにしたんだ。
おらふくんは解いてしまった。
自分ですらよく分かんない。
急に、ぐにゃって思考が捻れて、
いつしかみたいに、3人?になった。
ゲシュタルト崩壊とか、そーゆーのに似てる?
急に視界が鮮明に思えて、
何もかもがくっきりと分かって、
それに追いつくように
”ナニか”が、バーッて。
ぜぇーんぶ、どうでも良いって気がついた。
なんで気が付かなかったの?ってなるぐらい。
複雑で単純なんじゃない。
複雑とかなくて、単純なだけだった。
”コレ”は、人を巻き込める。
迷惑になるとかそんなんじゃないけど、
理不尽に、他人のエゴに、ありもしない理想に。
生きて生かされたから、の名残?
全部、『分かんない!』から。
とにかく、違うけど、とにかく。
捨てちゃえば良い。
捨てたい。
おらふくんは止めようとしたのかもしれない。
いやきっとそう。
決めつけだって?どうでも良い。
前向きになれたから、なんて。
そもそも向きなどない。
だからさ。
追いかけてこないでよ。
おらふくんにも、そんな善意の理不尽、
エゴがあるんだ。
捨てる時まで”ソレ”に付き合わせたくない。
【視点:or】
君に伝えたいこと。
手を差し伸べるような真似をしたのは、
ただなんとなくもある。
嘘が一つ。
前向きになんて、なってない。
向きとかない。
僕は自分を持ってない。
利用されるように動いてしまったのかもわからん。
ただただ感情があるのに、ない。
ちょっとした矛盾だけある。
あとは、自分を持ってない。
なんとなくぶつけたいだけかも知れない。
けど君を追いかけてる。
追いかけてる理由なんて知らない。
自分を持ってないから。
似たもの同士?
分かり合える?
分かんないだけ。
そこに無いだけ。
捨てたいだけ。
まあ簡単に、それなら。
コメント
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まがかみさん、第5話読みました。 「おんりー」と「おらふくん」、名前を教え合った直後のあの壊れ方、すごく生々しかったです。特に「分かんない」「違う」がぐにゃぐにゃ繰り返されて、そのまま雨の中を駆け出す流れ…視点が切り替わるたびに、二人の「捨てたい」と「追いかけたい」のベクトルが交錯して、読んでるこっちまで息が詰まるようでした。 「自分を持ってない」っていうおらふくんの告白が、最後の「それなら。」にどう繋がるのか、すごく気になります。