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ショートケーキ茶…今日も飲もうかな
なんて考えながら音楽を聴き、登校している名良(なら)。
するとトントンと肩を叩かれる。「ん?」と思い振り返る。
すると右手を軽く挙げているヨルコが立っていた。名良はワイヤレスイヤホンを取る。
「イサさん。おはようございます」
「おはようございます。紺堂くん」
なんでもないヨルコの笑顔。でもなぜかとんでもなく魅力的に見えてしまい、ドキッっとする名良。
しばしなにも会話なく歩く2人。
「ねえ」
ヨルコが名良に話しかける。
「はい」
「昨日のどうだった?」
「昨日の?」
「ほら、ショートケーキ茶」
「あぁ」
ちょうど考えてたなぁ〜と思う名良(なら)。
「意外と癖になる味かも」
と名良が言うとヨルコは目をキラキラと輝かせる。
「ホントぉ〜!?」
そのキラキラな目を見た名良は思わずその瞳に吸い込まれそうになるが
1歩ヨルコに引き寄せられたところで腰を落としブレーキをかける。
「あ、あぁ…うん」
「私もあれ好きなんだぁ〜」
「そうなんだ」
「こっち来て初めて飲んだ飲み物で…あ…」
「ん?」
ヨルコは「しまった」みたいな顔をして立ち止まった。
「どうか…した?」
「いや…」
「イギリスから日本に来て初めて飲んだ飲み物がショートケーキ茶…
まあ、変わってるっちゃ変わってるけど、まあ「茶」ってついてるし
日本のものーみたいに思うのも仕方ないんじゃない…かな。なんて」
「…あ、あ!そうそう!日本に来て初めて飲んだ飲み物!」
と言いながら歩くのを再開する。
「うん。わかってるよ。それ以外ないでしょ。宇宙から来たわけでもないし」
「宇宙からはないね」
と笑うヨルコ。2人で正門から高校の敷地内に入り、下駄箱で上履きに履き替え、教室へ。
「おぉ!おはよー!名良(なら)ー!」
「おはよ雲善(うんぜん)」
相変わらず元気な雲善。机に座っていた。名良の後ろにヨルコがいることに気づく。
「お!イサさんも!おはようございます!」
「おはよう木扉島(ことじま)く…あ、雲善くん」
「名良おはよ」
なぜか雲善のイスに座っている琴道が名良に挨拶する。
「琴道おはよ」
「イサさんも。おはようございます」
「奥田くん。おはよ」
教室の反対側、窓側の糸と嶺杏(れあ)がヨルコに気付き、糸は大きく手を振り、嶺杏は軽く手を挙げていた。
ヨルコも2人に手を振る。
「なんで琴道が雲善のイスに座って、雲善が机に座ってんの。ふつー逆じゃね?」
「いや、立って話してたから机座れば?って言ったんだけど、琴道良い子ちゃんだから座んなくてさ」
「あ、いや、自分の机には座るよ?全然良い子ちゃんとかじゃなくて」
「だから、じゃ、イスに座んな?ってことでオレが机に座ってるのだ」
「2人とも優しいな」
雲善(うんぜん)と琴道はお互いの顔を見合って笑った。
担任の先生が入ってきて、朝のホームルームが始まる。朝のホームルームが終わって、1時間目の準備。
「ヨルコー!おはよー!」
と言いながらヨルコに抱きつく糸。
「おぉ、おぉ。おはよう糸」
「朝から、まあ、なんでそんな元気なんだか」
嶺杏(れあ)は相変わらずのテンション。
「おはよ、ヨルコ」
「嶺杏、おはよ」
「あぁ〜…いい匂い」
「出た。朝っぱらから変態が」
その様子を側から見て
「いいなぁ〜」
と呟く雲善であった。1時間目の授業が始まる。1時間目は世界史。ただただ世界の歴史を聞く授業。
雲善や糸は教科書を読むフリをしながら寝ており
琴道は世界史の登場人物を二次元に置き換えていたり、嶺杏は名良はペン回しをしていた。
名良はふと横のヨルコを見る。スッっと通った鼻筋、小さな小鼻
横からでもわかる大きなピンク色の瞳。バッサバサのピンク色のまつ毛。
ぷるんとした潤やかなピンク色の唇。ムラ1つない綺麗な長いピンク色の髪。
ほんとに琴道の好きなマンガとかアニメから出てきたみたいだよなぁ〜
と考えていると手元が狂い、シャーペンが床に落ちる。
「へあっ!」
変な声を出して立ち上がる雲善。
「どーした木扉島(ことじま)」
「あ。あ、いえ。すいません」
クスクス笑いが起こる。名良の落ちたシャーペンはヨルコの机の下に転がっていた。
ヨルコはそれに気づいて拾ってくれて
「はい」
と差し出してくれた。
「ありが…とう」
その小さく白く、柔らかそうな手からシャーペンを受け取る。
「どういたしまして」
と微笑むヨルコ。ヨルコの微笑み、破壊力抜群だ。
ぐはっ!…
と頭の中でまるでヤ○チャのようにダウンする名良。
なんつー破壊力だ…。とんでもないあいてだぜ…
と心の中で思う名良。そのまま1時間目が終わり
2時間目、3時間目、4時間目も何事もなく終わり、お昼ご飯の時間となった。
「さーて。全員集合ー!8時じゃないけど8時だョ!?」
「全員集合ー?」
「なぜ「?」つけるし」
「だって知らんし」
「え。見たことないの!?」
雲善が驚く。しかし年齢的に考えれば驚くことでもない。
「驚くことか?オレら16だぞ?知ってるほうが珍しいだろ」
「いやいやいや。今もたまに放送してるから」
「あぁ〜。まあ、たまにCMでやってる…かも?明日夜7時とか」
「8時なのにな」
と笑う雲善。
「なんの話ー」
と琴道がお弁当箱を持ってやってきた。
「ん?8時だョ?」
「全員集合?」
「琴道も「?」つけんじゃん」
「ほらー」
「いや、全力ではいけないよ」
と笑う琴道。いつものようにヨルコに断りを入れて席を借りる。
逆にヨルコも琴道に断りを入れて、糸と嶺杏(れあ)のほうへ行った。
「あ、でも琴道は知ってるんだ?」
「うん。けんさんのコント系は小さい頃から見てる。ていうか母さんが好きで」
「おぉ〜!」
「いや、オレも知ってるには知ってるから」
なんて盛り上がっていると
「ういーす。お疲れー」
と落ち着いたテンションの風善(ふうぜん)がお弁当箱を持って、花弁(れんか)と一緒に教室へ入ってきた。
「んじゃ、また後で」
「うい」
と言って花弁(れんか)は糸、嶺杏、ヨルコの元へ向かっていった。
「8時だョ!」
雲善が風善にマイクを向けるような仕草をする。
「全員集合ー」
語尾に「!」こそなかったが拳を突き上げ、いつものように落ち着いたテンションで言い放つ風善。
「ね?」
と得意げな顔を名良に向ける雲善。
「腹立つーその顔」
「うちは父さんが好きでさ?よく父さんとふーと並んで見てたわ」
「だね。今も変わんないけど」
「え、待って。この時代にまさかのオレが少数派なの?」
一方
「ねえねえ、花弁(れんか)」
「なに?」
「風善くんとは…どうなの!?」
とお弁当に手をつける様子なく身を乗り出して花弁に聞く糸。
「どうなの?とは?」
「そりゃー…ねぇ?」
とヨルコに振る。
「私?」
「そりゃー恋愛マスターのヨルさんですよ」
「マスター…」
「っぽいよね?」
と嶺杏(れあ)に振る糸。
「まあ…1番可愛いよね」
マスターっちゃマスターか…
と思うヨルコ。
「恋愛ってこと?ふーと?」
糸はうんうんと目を輝かせて首が取れんばかりに頷く。
「…なんもないかな」
「お?今の間はなんぞ?なんぞ?」
見逃さない糸。
「…まあまあ」
とお弁当を食べる花弁(れんか)。
「えぇ〜!おちえて!」
「…じゃあ今度4人で遊びに行くときにでも」
「お!いいねいいね!女子会!
ちょうどヨルコの歓迎会を兼ねて行きたいと思ってたのよー」
「歓迎会?」
「そそ。なんかおされなカフェー⤴︎とかでさ?」
「おされなカフェー⤴︎」
思わず笑いながら復唱する嶺杏(れあ)。
「ついに来たる土日!行こうぞ、4人で!おされなカフェー⤴︎に」
「やめて…それ…ツボるわ」
「お。嶺杏ちんが珍しくツボってる。おされカフェー⤴︎」
「んふふふふ…」
「いや、糸の言い方もあるでしょ」
「おーされー?カフェー⤴︎?」
「んふふふ」
と嶺杏(れあ)の珍しい笑いが見れた。
「ごちのそうのさまでした」
「なんだそれ」
「小学生のときから言ってるやつ」
「そうなんだ?」
「ちなみにふーも真似して言ってたことあるけどね」
と花弁(れんか)がお弁当箱を持ってやってきた。その後ろにはヨルコも糸も嶺杏もいた。
「うそ?オレも言ってた?」
「言ってた」
「お兄ちゃんのマネする風善くん、可愛いかも」
と糸が想像しながら言う。
「想像すんのやめて」
と笑う風善。
「きゃっ!微笑みいただきました!」
「女楽国(にょたくに)」
雲善の呼びかけに
「ん?」
と雲善のほうを向く糸。
「えへっ」
と笑ってみせる雲善。
「うっし。みんな行こ行こー」
と教室を出て行く4人。微笑みのまま固まる雲善。
「残念。顔は同じなのにね。扱いが雲泥の差」
「お。雲善だけに?」
「おぉ〜名良。うまいこと言うね」
「おぉ〜。偶然の産物ですが、ありがとうございます」
笑っている3人に対し、雲善は微笑みながら綺麗な涙をツーッと流していた。
「んじゃー。昼なにしますか!」
テンションを思い切り切り替える雲善。
「雲善は元気だなー」
「家でもこんな感じ?」
「うん。兄ちゃんはずっとこう。母さんと父さんからも聞いたけど
幼稚園入る前からずっとこんな感じだったらしい」
「マジか」
「マンガとかアニメみたいな感じ!?」
なぜか目を輝かせる琴道。
「うんー。いや、マンガとかアニメでどういう描かれ方してるかオレはわかんないけど、まあ」
と風善は兄、雲善との小さい頃を振り返りながら説明してくれた。
「母さんがエコー?検査?受けたとき、すでに双子だってことはわかってたらしい。
生まれたばっかのときの写真も見せられたけど
正直赤ちゃんのころは双子じゃなくても、他人だとしても似てね?って思ったけどね」
「オレも思った」
「まあたしかに」
「たしかに」
「でもその後、ビデオ?見たときには」
風善が雲善を見る。雲善が笑顔を向ける。
「似てたな」
「うん。そっくり。その頃ほくろもなかったから、母さんも父さんも見分け辛かったって言ってた」
「そうなんだ」
「でも、少ししたら違いが出てきたらしい。
兄ちゃんがオレの分のテンションまで持ってっちゃったみたいな感じで
兄ちゃんは大騒ぎ、オレは静かに遊ぶ。なんて光景が当たり前になって
パッっと見ただけで近所の人も「あら!雲善くん!今日も元気ねぇ」とか
「風善くんは今日も大人っぽいのね」とか区別がつくようになった」
「よく言われたわぁ〜「怪我してるから雲善くん!」って」
「あったね。だいたい合ってたしね」
「合ってた」
と笑う雲善。
「オレは基本外でもはしゃがない子だったから、怪我は滅多にしなかったからね」
「絆創膏してるのが雲善くんってよく言われたもんよ」
「よく膝とか肘とかに絆創膏してたよね」
「母さんに地味に出費してたって後々言われたわ」
と笑う雲善。
「姉ちゃんも兄ちゃんには手焼いてたって言ってたしね」
と言う風善の言葉に
「「え」」
と引っかかる琴道と名良。
「待って待って。え。2人はお姉さんもいるの?」
「いるよ」
「やかましい姉が2人」
「「2人!?」」
「2人」
「お母さん…大変だったろうな…」
「ね」
「そーゆー2人は?」
風善が聞く。
「なにが?」
「兄弟姉妹。いる?」
「オレは姉ちゃんが1人」
「うちは妹が1人いるよ」
「いいなぁ〜。妹かぁ〜」
と言いながらそり返る雲善。
「なんで?」
「いや、妹なら愛せた気がする」
「生意気だよ?」
「いくつ?」
「13。今年14。中2」
「しゅしゅんきだ」
「なんだしゅしゅんきって」
「しゅしゅんき。スマホで入力したら春を呪う時期、「呪春期」ってのが出てきた」
と琴道がスマホを机の上に置く。雲善、風善、名良が覗き込む。
「ほんとだ。こんな言葉あるんだね」
「朱春期ってのもある。こっちのほうが字面が綺麗」
「あぁ〜なんだっけこの字」
と雲善は「朱春期」の「朱」を指指す。
「え」
「え」
「あぁ〜…。あれだよ。朱色の朱」
「あー!はいはいはいはい!」
「雲善マジか」
「ほら。6号室に住んでるスナックで働いてて、タバコ吸う姿がセクシーな。あの人の名前の字」
「誰」
「誰」
「琴道。琴道くらいヲタクな人じゃないと伝わらないよ」
と冷静にツッコむ風善。そんな話を教室でしていたら
「あ。昼休みもう終わる」
昼休みが終わった。
「マジー?もう5時間ー?」
「いいじゃん。今日明日で土日なんだし」
「まだ明日もあるじゃんかー」
「今日は部活もないから早く帰れるって」
「その代わり、明日7時間目まであってなおかつ部活。死ぬって」
そんなこんなで風善は自分のクラスへ帰っていき、糸、嶺杏(れあ)、ヨルコが教室に帰ってきた。
5時間目が始まる。ちなみに名良はなんの部活にも入っていない。
ちなみのちなみに、琴道もなんの部活にも入っていない。帰宅部である。
なので6時間目で終わる日だろうが、7時間目まである日だろうが
その後なにも部活はないので気楽に帰れるのである。
「終わったー」
6時間目の授業もやっと終わり、帰りのホームルームに。
「起立」
生徒が立ち上がる。
「礼」
「さよーならー」
まるで小学生のような挨拶をしてから
「おー…わったぁーー!!」
と天井に向かって思い切り伸びる雲善(うんぜん)。
「帰るかー」
「帰りますか」
名良はスクールバッグをリュックのように背負う。琴道もスクールバッグを持って合流する。
「んじゃ。イサさん。また明日です!」
雲善がヨルコに向かって敬礼する。
「うん。またね。…雲善くん」
「はい!」
「奥田くんも。紺堂くんも。また明日ね」
そう笑顔のヨルコに言われ、たじたじする琴道と名良。
「はい。また明日」
「また明日」
手を振るヨルコに雲善、琴道、名良も手を振り返す。
廊下に出ると廊下の壁に寄りかかりながら話す風善と花弁(れんか)がいた。
「お疲れーい」
と雲善が声をかけると
「おぉ。兄ちゃん。お疲れ。名良も琴道もお疲れ」
と爽やかに風善が爽やかに応えてくれた。
「お疲れ。あ、お疲れ様です」
と花弁も雲善に、そして名良と琴道にも応えてくれた。
「んじゃー。また明日ー」
「ん。ふーもまた明日」
「うん。また明日」
と言って男子4人は廊下を歩き始める。男子4人と別れた花弁は2-Cの教室に入る。
「あ、花弁ー」
ヨルコが花弁に手を振る。
「ヨルコー」
雲善の席に座る花弁(れんか)。すると
「花弁ー!お疲れー!」
「おつー」
糸と嶺杏(れあ)が合流した。
「じゃ、帰りますか」
「帰りましょ」
ということで女子4人も教室から出て、廊下を歩き始める。正門まで歩いた男子4人。
「あ」
と立ち上がる名良。
「どしたー?」
「ごめん。先帰って」
と言う名良に
「おう。んじゃ、また明日」
「また明日ね」
「お疲れ。また明日」
と雲善、風善、琴道と別れた名良。今一度校舎に向かって歩き出す。
糸、嶺杏(れあ)、花弁(れんか)やヨルコが下駄箱で上履きを入れ、ローファーやスニーカーを出していると
「この後、ワックでも…どっすか!」
糸が元気よく言う。
「あぁ〜。まあ。私は暇だしいいよ」
嶺杏が紐を解かずとも履けるようにしているスニーカーを履きながら言う。
「ワック!いいね!」
「お!ヨルコも乗り気ですなぁ〜。花弁(れんか)はどうっすか!?」
隣の列の下駄箱を開けている花弁に振る。
「うん。私もいいよ」
「よーーっし!行くぞー!」
スニーカーで軽ダッシュする糸。3人も正門に向かって歩く。
「あ。ちょっとー」
とヨルコが立ち止まる。
「ん?」
「あ、正門でちょっと待っててくれる?すぐ戻るから」
と言いながら軽ダッシュで校舎へ戻るヨルコ。
「お。パンツ見えそう」
とヨルコが軽ダッシュする後ろ姿を見て呟く糸。その頭を無言で軽く叩く糸。
ピッ。ボタンを押し、交通系電子マネーをかざす。ピッ。
ガタンッ。落ちてきた飲み物を受け取り口を開けて取り出す名良(なら)。
「あ」
という声に振り返る。
「あ」
そこにはヨルコが立っていた。
「それ」
ヨルコが名良の持っている缶を指指す。
「あぁ…あ、うん。まあ」
なぜか少し照れ臭くて言い訳を探すが、頭のどこにもその言い訳が見つからず
「うん。気になっちゃって」
とそのままを話した。
「やっぱり?」
なぜか嬉しそうな顔をするヨルコ。ぴょんぴょんぴょんと自動販売機、名良に近寄り
ヨルコも名良と同じショートケーキ茶を購入した。名良もヨルコもプルタブを開け
「乾杯!」
ヨルコが缶を軽く上げる。
「か、乾杯」
名良も缶を軽く上げる。ヨルコが笑顔で名良の缶に自分の缶をぶつける。
その無邪気さに心の中でなにかが動いている気がする名良。
「紺堂くんたちはこの後どうするの?」
「ん?この後?みんな帰ってるよ、もう」
「あ、そうなんだ?」
と言いながら一口飲むヨルコ。
「うん。相変わらず美味しい」
名良も一口飲む。
「…」
缶を見る名良。
「なんか、癖になるな…これ」
「でしょ?」
なぜか得意げな顔のヨルコ。
「うん。なんか…なんだろうな」
と言いながら2人で正門へ歩く。
「イサさんはこの後なんかあるんですか?」
と聞いてしまった後で
「あ!いや!別にあれですよ?暇だったらどうとかいうことじゃなくて、ただ単に世間話ですよ?」
と変な意図があるような質問に感じて訂正する名良。
「この後は糸と嶺杏(れあ)と花弁(れんか)とワックに行く。…一緒に行く?」
「なっ」
思わず変な声が出る名良。
「い、行かないよ」
と否定するとヨルコが
「えー」
と言いながらぴょんっと名良の前に飛び
「じゃあ今度は一緒にどっか行こうね」
と言った。
「うっ…」
まるで恋のキューピットに矢で射抜かれたような声を出す名良。
これは天然か?だとしたら小悪魔がすぎる…
と思う名良。
「まあ、機会があればね」
と言っていると
「機会があればー?なんだい紺堂くん。私たち美女と一緒にご飯に行きたいのかい?うっふん」
と糸が変なポージングで言った。
「…。あ、じゃあ、また明日ね。イサさん、福留さん、今日都(きょうと)さん」
「うん!また明日ね」
「ういー。お疲れーす」
「お疲れです」
と名良は帰っていった。
「うん。そんなジ○ジ○立ちみたいなポーズで美女って言われてもね」
と嶺杏(れあ)が言うと
「美女じゃなくてジ○女だね」
「ふっ」
思わず笑う嶺杏。
「うまいね、花弁(れんか)」
「でしょ?」
「んじゃ、ワック行きますか」
「行こ行こ」
「ヨルコはイギリスにいたときもワック行ってた?」
「あぁ〜…うん!行ってた!」
「イギリス限定メニューとかあるのかな」
「あぁ〜たしかに」
と3人でワックへ向かう。その後ろ、正門の前で
糸はジ○ジ○立ちのようなまま固まり、スーッっと涙を流していた。