船が波を切り裂き、ゆっくりと海を進む中、メンバーはそれぞれの思いを胸に抱えていた。しかし、平穏な時間が続くはずもなく、突如として何かが起こる予感が漂っていた。
「なんか…おかしい。」
萌香が不安げに呟いた。
「何が?」
いさなが首をかしげて聞くと、周りの空気が一瞬で変わった。波の音が途切れ、風がぴたりと止まったのだ。
「何だこれ?静かになりすぎじゃないか?」
ゆうなが警戒を強め、周囲を見渡す。
「こんなこと、今までなかったよな?」
みりんも眉をひそめ、何かの兆しを感じ取っていた。
突然、船が大きく揺れる。
次の瞬間、海面が盛り上がり、巨大な影が一気に船の近くに現れた。
「な、なんだ!?」
いさなが叫ぶと、巨大な魚のようなものが船の横に迫ってきた。鋭い歯が見え、目は完全に獲物を狙うような鋭さを持っている。
「やばい、やばい!」
萌香は思わず後ろに下がるが、船はさらに揺れ、彼女はバランスを崩して倒れそうになった。
「みんな、逃げろ!」
いさなが叫び、すぐに船を操作しようとするが、相手の巨大生物がさらに力を加えてきた。
「船が持たない!」
みりんが叫び、船が軋む音を立てる。
「どうするんだ!」
ゆうなが叫ぶと、いさなは冷静に言った。
「とにかく船を守れ。これが壊れたら、俺たち、海の上に放り出されるぞ。」
その言葉に一瞬で冷静さを取り戻し、みんなはそれぞれの役割を果たし始める。
巨大な魚は、船の縁に大きな穴を開け、勢いよく海に突き刺さる。水が一気に船内に流れ込む。
「やべ、みんな逃げろ!」
いさなが大声で叫んだその時、船のバランスが崩れ、一部が海面に沈み始める。水が一気に船に押し寄せ、メンバーたちは必死に立っていようとするが、船体が崩れてきた。
「どうする、どうするんだ!」
みりんが叫ぶが、いさなは冷静だった。
「まず、すぐに水から離れろ!あいつが突っ込んできたら、全員沈んじまう!」
萌香が船の端に近づき、巨大な魚を見据える。だが、怪物は予想以上に素早く、その尾ひれを一閃。
「うっ!」
萌香はその勢いに吹き飛ばされ、海の中に落ちた。
「萌香!」
いさなが叫んだ瞬間、萌香の手が水面に浮かび上がる。彼はすぐにその手を掴み、引き上げる。
「ありがとう…いさな。」
萌香は息を呑みながら、必死に掴まっている。
「逃げろ、船が壊れる!」
いさなは叫び、みんなに素早く避難するように指示を出した。
船は沈みかけ、海面がその断片を飲み込んでいく。
「みんな、大丈夫か?」
いさなが確認しながら、泳ぎながら何とか岸を目指す。
「うん、でも、船が…」
萌香が不安げに言う。
「気にすんな、まだアーティファクトは手に入れてないんだ。」
いさなが笑顔で言うと、みんなは少し安心した。
「じゃあ、どうするの?」
みりんが問いかけると、いさなは真剣な顔つきで言った。
「もう一回作るしかない。あんなでかい魚に乗ってこられるかって話だ。」
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