その日は非常に暑かった。海上の風も、船の揺れと共に体温を少しでも下げようとするが、全く効果がない。しばらくして、みんなは船の後ろでひと息ついていた。
「暑いと、もう我慢できないよ…」
ゆうながぼそりとつぶやくと、他のメンバーたちはその意図をすぐに理解した。
「トイレもないしな、仕方ないか。」
みりんが少し不満げに言いながらも、うなずいた。
「とりあえず、ちょっと海に向かってやってくる。」
ゆうなは、言うが早いか船の端に歩いて行き、プライベートスペースを確保するために手を伸ばした。
「ここでやれば、他の人に見られないし、誰にも迷惑はかけないだろ。」
ゆうなが立ち止まり、海の方向に向けて立ちションを始める。
その瞬間――。
「うおっ!?なんだこれ!」
突然、船が大きく揺れた。ゆうなは驚き、足元を崩しかけて、そのままバランスを崩してしまう。
「うわ、危ねぇ!」
いさながすぐに叫んだ。船がまた揺れ、今度は大きな波が船の側面を叩いた。
「ゆうな、気をつけろ!」
みりんも焦りながら叫んだ。
ゆうなは立ちションをしている最中に、波に足元を取られて思わずよろける。彼女は海に足を踏み外し、バランスを崩したまま、思いっきり海に落ちてしまった。
「うわっ!」
落ちた瞬間、水しぶきがあがり、ゆうなの姿が一瞬で海の中に消えた。
「ゆうな!大丈夫か!?」
いさなとみりんが海の中を見つめるが、ゆうなの姿は見当たらない。すぐに反応した萌香が船の端に近づいて、ゆうなを探す。
「ゆうな!」
しばらくして、海の中からゆうなの手が浮かび上がった。その手を素早く萌香が掴み、引き上げる。
「だ、大丈夫?」
萌香が息を呑みながら言うと、ゆうなは顔を水からあげて、びしょ濡れになった髪をかきあげる。
「くっ…まさかこんなとこで…」
ゆうなは目をしばたたきながらも、無事に船に引き上げられる。
「お前、マジでびっくりさせんなよ。」
いさなが笑いながら言うと、ゆうなは少し照れくさそうに顔を赤らめた。
「す、すみません…」
ゆうながふざけたように言ってみせるも、体は冷えていて、服が重くなった。
「何もこんなタイミングで…」
みりんが呆れ顔で言うが、すぐにみんながその状況に笑い出す。
「いや、逆にお前が海に落ちたらどうなるんだよ。」
いさなが冗談を交えつつ、ゆうなを少しからかう。
「わ、私だって大丈夫だよ!」
ゆうなは恥ずかしそうに反論するが、すぐにその冷静さを取り戻す。
「さて、次はどうするんだ?」
いさなが言うと、みんなが顔を見合わせる。
「もう、このまま進むしかないか。」
みりんが言ったその瞬間、船が再び揺れるのを感じる。
ゆうなはびしょ濡れの状態で、少し恥ずかしそうにみんなに言った。
「じゃあ、次からは気をつけます…」
「もちろんだ。お前がまた海に落ちたら、俺たちも大変だ。」
いさなが笑いながら答える。
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あれうち落ちた( '-' )