誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第24話 〚聞こえてしまった声〛(真壁恒一視点)
毎日、同じことをしている。
教室を回って、
男女関係なく話しかける。
冗談を言う。
いじる。
場を回す。
(これでいい)
そう思っていた。
誰とでも話せるのは、
悪いことじゃない。
輪に入れないより、
ずっとマシだ。
——はずだった。
ある日、
自分の席に戻る途中で、
足が止まった。
声が、聞こえた。
「……また来た」
小さい声。
でも、確かに。
「ブスのくせにさ、
空気読めないよね」
別の声。
「運動もできないし、
何が面白いと思ってんの」
笑い声。
ひそひそ。
俺の名前は出ていない。
でも、
分かる。
(……俺のことだ)
耳が、熱くなる。
心臓が、
一瞬遅れて鳴った。
(なんで?)
冗談だ。
軽いノリだ。
誰も、
面と向かって怒ってなかった。
笑ってた人もいた。
(……いた、よな?)
教室を見回す。
目が合うと、
逸らされる。
さっきまで話していた相手が、
急に無言になる。
(あ)
理解が、
遅れて追いつく。
俺は、
輪に入ってたんじゃない。
回ってただけだ。
「……」
もう一度、
声が聞こえた。
「澪以外、
全員無理でしょ」
その言葉に、
胸が詰まる。
澪だけ。
(……なんで、澪だけ)
答えは、
出ない。
俺は、
教室の隅に立った。
誰にも、話しかけない。
誰も、
話しかけてこない。
笑い声は、
遠くで続いている。
(俺、何を間違えた)
分からない。
でも、
一つだけ分かった。
「嫌われてる」
それだけは、
はっきりと。
俺は、
初めてその事実から、
目を逸らせなかった。






