テラーノベル
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fu「……」
いよいよ今日が、結婚の日。
元は奴隷の身だとしても
結婚なんて俺の人生からしたら はじめて体験するイベント
頭のてっぺんから足の爪先にまで緊張が走る
己の手が、震えることを止めてくれない
服に着替えるだけでも体力がいる気がするし、すでに気分はブルーになっている
朝が憂鬱なのはいつものことだが、今日は少しマシだと思える
fu「…支度、するか」
どうやらこの家での式典時の正装は和装らしく
今こうしてうちの使用人達に着付けを手伝ってもらっている
それは非常に有り難く嬉しいことではあるのだが
この着物、どうやら女性用であった
はじめましての時点で相手の反応を見る限り
怪しいとは思ったが、これにてやっと合点が生じた
飼い主に対しての怒りが朝から込み上げてくる
何とも最悪の目覚めだろう。
それに比べ、使用人はまだ優しい方だ。
日々の飼い主への圧力があるのだろうか、
此方へ同情の目をよく向けていた
世の中は、お金がある人こそが正義なのだろうか。
何故、人を見下すことが許されるのだろうか。
どうしてこうも人々は差別をしたがるのか。
どうして目に見えない境界線を引くのだろうか。
皮膚を剥がせば、皆同じ血肉の塊だろうに。
rm「fuさん、いますか?」
その襖越しに聞こえた優しい声に、底の無い宙に浮かんだ頭がハッと意識を取り戻す
rmさんの声だ。
その落ち着く声に、思わず反射的に声を返す。
先程までの憂鬱な気分が、全て嘘みたいな
自分でも、元気で明るいとわかるこの声で。
fu「はいっ、何でしょう?」
rm「あ、もしよろしければ面と向かって話したいのですが…」
〃 「今難しければ、全然襖越しでも構いませんので」
fu「いえ、全然大丈夫ですよ!」
rm「わかりました、では失礼します」
そうやってゆっくりと開けられた襖の奥には
目を疑うような光景が待っていた
以前とは違う髪型、服装、立ち振舞い
双方が互いの豹変ぶりに、思わず呆気にとられていた
rm「……え、っと………」
〃 「…fuさん、で…合ってますよね……?」
fu「え、はい…もちろん……」
〃「……そちらこそ、rmさんで…合ってますよね…?」
rm「は、はい…」
今の相手の姿を腕のある画家に描かせたら、まさしく絵になり華となりそうな美しさ
本来の姿を見せられたかのような気持ちだ
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花
この言葉が似合う男性なんて、この世界にどれほどいたのだろうか
まさに、その言葉が似合うほどに
美しい。
そう、思えてしまった
rm「と、とにかく、式の前に聞きたいことがありまして……」
fu「あぁはいっ!な、何でしょう!?」
慌てながらも体制を取り戻し、話を聞く
何の話をするのだろうか。
そう思っていると、予想の斜め上の回答を食らった
rm「婚約式の、最後の催しである夫婦の誓いについてなんですが…」
fu「はい……」
rm「…その、」
何やら、喉奥に言葉が詰まったような素振りだ。
眉間にしわを寄せて難しそうな顔をしている。
何か伝えたいけど、迷ってたり……?
勝手にそう悩んでいるのだと思い込み、彼に真っ直ぐな眼差しで話を切り出す。
fu「…全然、思ったことは言ってください」
〃「書類上の婚約ではありますが、一応俺らは夫婦なので」
〃「貴方とは、何かしらを話せる仲になりたいと思ってますから」
これで少し話しやすくなってくれると良いのだが…
と思っていると、余計に難しそうな顔をしているrmさんが目の前にいた。
もしかして別のことで悩んでいるのだろうか?
風が襖からなびく、この少し静寂な空気の中
覚悟を決めたかのように、彼の閉ざしていた口が風に綻んでゆっくりと開いた。
rm「…夫婦の誓い、の方法……なんですけど……」
fu「はい」
rm「…その、………」
〃「………接吻…にするか、…盃を交わすか…」
〃「…どちらに、しま…すか……」
fu「……」
〃「はいっ?」
まさかの質問に思わず腑抜けた声を出す
想像していなかったその言葉に驚いてしまった
rm「……ごめんなさい…早く聞くべきなのは…重々承知なのですが……」
〃「おそらく、うちの家系は俺の結婚式なんぞ興味ないと思うので…盃を交わす方が良いかと……」
fu「なる、ほど……」
〃「……」
接吻、ということはつまり
誓いのキスをするということ
fu「……ぁ、……」
鳥肌が全身に走る、血の気が引くような感覚
その時、自分がどんな顔をしていたのかはわからない。けれど彼曰く
絶望で、恐怖が拭えてない青ざめていた表情をしていたらしい
fu「……そう、ですね………」
〃「盃の…方で、……お願い…します……」
苦し紛れに放った言葉、あとはその強張った表情のせいだろうか
その不安は、彼にも伝わったようだった
rm「ご、ごめんなさい!何か嫌なことを思い出させてしまったでしょうか!?」
〃「と、とにかく…式は盃の方で話は進めておきますので!」
〃「俺は一旦ここを離れます、また時間になれば使用人さんが呼んでくれるはずなので」
〃 「何かあれば駆け付けます!」
〃「すみません、ではまた!」
あぁ、彼は何も悪くないのに
謝らせてしまった。
彼は謝らなくても良いのに。
どうして、そんな悲しい顔をするのだろうか
fu「ま、まってください……!」
これだけは伝えたい
このまま式を向かえるのは、互いに嫌なはずだ
rm「は、はいっ!」
〃 「な、なんでしょうか…?」
fu「貴方は、何も悪くないですから」
rm「…!」
fu「……それだけ、です」
その回答に彼は一瞬止まったものの、ペコリとお辞儀をしてゆっくりとその場を去っていった
わかってもらえたのだろうか。
いや、きっとわかってくれたに違いない。
彼もきっと、俺のことを思ってこの質問をするか否か悩んでくれたはずだ
だとすると、とても迷惑をかけただろうな…
ごめんなさい。
そうして向かえた結婚式
お祝いムード
などは一切なく、空気はあまりにも地獄で生きた心地がしなかったのだけを覚えている
大人達の無言の圧力。
息が詰まりそうなこの重々しい空気。
足が痺れることを忘れるほどの緊迫感。
それだけで、この雰囲気を物語っていた。
双方大人達に利用されているだけの白い婚約
こんな結婚に誰が興味を持つのだろうか
ただ見守り、式が終わることを皆が望んでいる
ただ盃を交わすだけ、たったそれだけなのだから
rm「…長かった、ですね……」
〃「それに、無言の圧力ヤバかったですよね…?」
fu「本当に…居心地が悪すぎました……」
やっとの思いで幕を閉じた婚約式
実際経った時間は短いはずなのに、それがとても長く感じた
そのせいか身も心も疲弊していて、身体がSOSと悲鳴を上げているような気がする
今すぐにでも休みたい所存だ
rm「では、お互い着替えなきゃですので…また後でですかね」
fu「そうですね」
ではまたあとで。自分もそう言おうとした途端、
襖が恐る恐る開く音がした
その音につられて振り向くと、うちの使用人が怯えた様子で此方を見つめていた。
そうして、震えていた口がゆっくりと開く
fu「ど、どうしましたか?そんな怯えて……」
#「f、fu…様……」
〃「大変、申し上げ…にくいのですが……」
〃「…旦那様が、お呼び……です……」
“ 旦那様 “
その言葉に、思わず身体がすくんでしまった
ヒュッと喉が詰まる音がした気がする
旦那様、つまりは俺の「飼い主」を意味する
呼ばれたということは、つまりはそういうこと
怯えるように調教されたこの身体が、震えることを止めてくれない
fu(…どう、しよう……)
婚約後は一切関わらない契約だったはずだったのに、どうして…?
もしや白い婚約だからだろうか、いや白い婚約だろうが婚約したことに変わりはない。
契約は明日からなのか?じゃあ今日はまだ飼い主から身体の関係を迫られるのか?
最後の晩餐みたく、骨の髄まで…?
そうだとすると、堪ったもんじゃない。
けれど反抗する術も抵抗する術も、此方にはさほど多くもない。
だが、反抗すればいつも通り なす術が無くなる。
どうすべき?
いますぐにでも いかなきゃ
ぶたれる、らんぼうにされる
はやく、いかなきゃ
おこられる、まえみたいに
、けど
いや、だ
rm「それって、断ることは可能ですか?」
fu「…へ……?」
#「お、恐らく可能ですが…私達では不可能に近いかと……」
rm「じゃあ、俺が直接行きます」
fu「え゛っ!?」
#「はい!?」
そのまさかの返答に思わず俺と使用人さんは驚愕とした声を出す
rm「あなた方が無理なのであれば、俺が行けば聞く耳を持つはずでしょう」
fu「た、たしかにそうですけど…!!」
実際、rmさんの言うことは理にかなっている
飼い主は俺達には全く聞く耳を持たない
だが、rmさんをはじめとする知人や赤の他人には必ずと言って良い程聞く耳を持つ
rm「それとなく話を付けておきます」
〃 「案内してください」
#「わ、わかりました…!!」
その日の昼、rmさんは本当に飼い主と直接面と向かって話をし
飼い主が俺のもとへと来ることはなかった
fu「すみません何から何まで…」
rm「いえ、事情を知っていたので」
〃 「それより、いくつかご相談がありまして…」
fu「な、何でしょう…?」
もしやあの時飼い主に何か脅されて…?
いやだ…被害はせめて俺だけにしてくれよ…!!
rm「敬語、なるべく外しませんか?」
fu「はい???」
またまた拍子抜けのご相談
思わず間抜けな声が出続ける
“敬語を、外す?”
fu「ど、どうして…ですか……?」
rm「へ?いや…言ったじゃないですか昨日」
〃 「僕ら、友達になるんでしょう?」
fu「それは、そうですけど…」
〃「慣れるのにも、時間がかかりますし…」
rm「いいじゃん、時間かけてこ」
〃 「俺自身、堅苦しいのは嫌だからさ」
fu「じゃ、じゃあ…」
〃「よ、よろしく……?……rm……、……」
〃「……さん…」
rm「っははw、そりゃ出会って数日は難しいよな」
〃 「やっぱ、ちょっとずつ慣れていきましょ」
〃 「fu」
fu「!…」
〃「…少しだけ、さん付けしかけましたね」
rm「あ、バレちゃった」
〃 「てかfuさんも俺のこと呼び捨てしてみてよ」
〃 「俺、聞きたいんですけど」
fu「そ、そのうちしますから…!!」
rm「んふ、じゃあ楽しみにしてますね」
仮初めの婚約式
たしかに愛の欠片など1つも感じれなかったが
それでも今日、この空っぽのハートに何かが満たされた気がした双方であった
文字通り番外編って感じですかね…?
書いた私もわかりませんが…🤷♀️🤷♀️((
今回みたいに本編にあってもなくてもみたいな話や、私が気分で番外編にしちゃった話や
マジで本当に本編に関係ない話とか
たまにこんな感じで投稿すると思います‼️🙌
本編も気長に待ってくれると幸いです!
長文失礼しました!続きもお楽しみに!
コメント
3件
😭 結婚がおめでたいのかそうでないのかわかんないや…… こんな結婚式が一番嫌ですね!! 続きが楽しみです!
うわあ…読み終わりました。冒頭の女性用の着物にはもう「ああ…」って声が出ましたし、式の重苦しい空気も肌で感じるようでした。でもその中でrmさんが「敬語外しませんか?」って言い出したところ、すごく好きです。あれ、場を和らげる意図もあるんだろうけど、何より「友達になるんでしょう?」って昨日の約束をちゃんと覚えて実行してるのが温かいなと思って。宣伝めいた契約結婚の虚しさの一方で、二人の間にだけ確かに流れてる優しい空気が、このエピソードの救いでした。続き、楽しみにしてますね。