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「な、なのは!?」
誰かが私に声をかけた。
(すず……?)
そう思って顔を上げた。
そこには、息を切らした桃の姿があった。
「こんなとこにいたの……!?探したんだよ……?」
………だよね。
すずなはず、ないよね。
私、何期待なんかしてたんだろう……?
「なのは?もしかして、泣いてる……?」
私は笑顔を作って、桃を見上げて笑った。
「大丈夫、だよ。」
そう言ったはずだった。
いや、確かに言ったのに、桃は目に涙をためて言った。
「そんなわけないじゃん!
ね、なのは、ちゃんと言ってよ………。
私にも、なのはの抱えてるもの、背負わせてよ……!」
「っ桃、桃、私、私ね………!」
私の目に、もうあの光はなくて、桃だけが映っていた。
「私ね………桃のこと、利用してた……!」
「利用……?」
「桃に、私の友達役になって欲しかったから………!
一人ぼっちが嫌だったの………!
だから、桃たちなら私の友達になってくれるって思った……
ごめんっ…………!」
「……………聞かなかったことにする。」
「え?」
「だって、私はこれからもなのはと友達でいたいから。ね?」
「桃、ごめんねっ………!
ありがとう…………!」
「でも、もしなのはが私に自分について話せそうになったら、今度はちゃんと聞くよ。
そんな泣きそうな顔で、私は君を知りたくないんだ。」
「…………うん、わかった、約束する。」
私は桃と小指を絡めた。
桃に言った通り、私は桃を利用していた。
あの子たちは情報網が無いに等しい。
だったら、あの子達は私のクラスへ向けた悪口についても知らないはず。
完全に適していたんだ。
「友達役」に。
どうせ1人になるんだ、ぼっちよりマシ。
そう思って今までなんとかやってきた。
でも、そろそろ限界だった。
自分を隠し続けるのは、辛い。
だけど、あのグループにいるにはそうしなきゃいけなかった。
そして時折、すずたちのグループにいた時はこんなことなかったのに、と思うこともあった。
取り繕う笑顔。
もう、やめちゃいたかった。
こんなこと。
きっとバレる。
わかってる。
でも、心のどこかでやっぱりブレーキがかかっていた。
でも、今桃たちと話してわかった。
桃たちは私が思っていたほど、私と相性が悪いわけじゃない。
話が合わないとか、楽しくないとか。
そんなことは口先だけで、本当は楽しかった。
趣味だって似ていたし、同じことで笑えた。
桃たちは私の居場所に、すでになっている。
わかってた。
桃に初めて話しかけてからずっと。
でも、それでも私がそれを認めたくなかったのは、まだ私はすずたちのグループの1人という席を守りたかったから。