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「え……此処は……何処……?、あの森じゃないって事は…わかるけど…」
「ああ、あの転送で妙なところに連れて来られてしまったものだ、キャメロット内ではあるようだが、此処がどの辺りなのか、良く分からないな」「良かった…、てっきり現実とは全く別世界に連れて来られたのかと思ったけど…」ディアンヌが言うと、「奴が作り出した幻覚‥ってのも有り得るな、魔神族の連中だ、そう簡単には俺たちを逃すような、そんな甘い魂胆な訳がないしな」メリオダスも疑いの目を向けるが、とりあえず辺りを見渡して見る…見てみるとそこは見慣れたキャメロットの景色が広がっており、ので『創造された幻覚や幻術』という訳では無さそうだ、これが幻術などではないと判明しただけでも、一安心…とまではならない。
何故なら、先程までの戦闘の最中にて、魔神族の一族の者から放たれた魔力魔法の力で、ゴウセルが目覚めなくなっているのだから…「…………ゴウセル‥、ごめんなさい…私‥のせい…で、……ゴウセル‥…」リーシアは膝をつき、ゴウセルをそっと抱えて、またポツリ‥ポツリと涙を溢した。
その泣いてる声さえも、非情な事に…今のゴウセルには、届かない。
「………ほんとにゴウセルはもう…目覚める事が…出来ないの?」
「診てみるとしよう、その様子なら‥せずとも結果はもう目に見えているが…」マーリンは自身の魔力魔法の力で、彼の身体を透視し…現状を確認。
「どうやら、仮死状態に等しい状況にされているようだ、ただ…それにしてはそもそもの彼に在る魂も、抜き取られて植物状態…今のゴウセルは抜け殻と言っても良い、そんな状況だ、身体の全てが動いていない」
マーリンのこの言葉を聞いて、ショックを受け言葉を失ってただ、こう一言…「え…?」とひたすらに茫然とする。
だって、自分にとっての大切な……たった一人の『想い人』が……目覚めなくなってしまったのだから。「ねえ、だとしたら…どうしたら、目を覚ませられるの…?このまま、ずっと……ゴウセルは…目を覚ませないなんて、ボクらだって‥‥それ以上にリーシアが悲しむのに、ねえ、マーリン、どうにかしてゴウセルを眠りから覚ませられないの‥!?」ディアンヌはそうマーリンに尋ねる。
「分からない…しかし、これは恐らく魔神族の呪いの類いのように感じる…普通の方法でどうにか出来るような代物の魔法などではないのは確かだ」
「え……じゃ‥…じゃあどうするの‥‥!?、このまま…ずっと」
「何か別の方法で、解除できるのかもしれんが、魔神族が有する魔力魔法となると、話が変わって来る、そう安易には事を良い方法へ運ぶのは困難に近い…」
「私のせいで……、ごめんなさい、ごめんなさい…」
リーシアは崩れ落ちたまま、彼女は…ゴウセルに向けて涙をポツリ、またポツリと溢していく。リーシアは自分のせいで、余計に狙われて挙句の果てには、再起不能な事態に…植物状態と化したゴウセルを思い、自分を思い詰めるが、その行為こそがまんまと奴らの策略に嵌った事に気付く余裕さえなくなって、弱くなる心が余計に自身を苦しめる呪いを加速させてしまうなんて事に。
「リーシア……君のせいじゃないよ、だからそんな顔しないでよ」ディアンヌはそう言って寄り添うも、ディアンヌだって、仲間に一人である彼の事を気にかけていない訳ではない。
「魔神族の魔力魔法ってなるとなあー‥そう一筋縄ではいかなそうだ、それに解除できるって言ってもそれをかけた術者のみが解ける…とか俺たちがどうこうして解除出来るような奴じゃないな、こりゃ‥ 」メリオダスは覚めない眠りの中に彷徨うゴウセルを救為にも、どうにか目を覚まさせる方法がないかを模索する事に…。
「……ごめんなさい、ごめんなさい‥‥っ‥‥」リーシアは何度悔いても拭い切れない守れなかった事への懺悔の言葉を彼に向けて、幾度も、幾度も涙を溢して、流しては彼の胸元に零れ落ちる。
「………私の…せいで…ゴウセルは…」
彼女は震えた声でそう言った。
「リーシア……」
「リーシアの為にも…何とかしてゴウセルを目覚めさせる方法を見つけないとな、なんか特殊な条件でしか掛けられた魔力魔法を退かす事が出来ないものか…」メリオダスはそう悩ませる。
「うん……、あ…もしかして‥… 」
キングは何かを思い付いたようだ。「なんか思い付いたのか〜?」「多分、オイラ達の力では…目覚めさせるのは不可能に近いと思う、けど覚めない眠りからゴウセルを起こすのに、適任なのは君だけ…似たような波長と種族の繋がりだってあるし、それに君が持って居る魔神族の魔力の力は全て悪いものではないって言うなら、君にしか使えない力が奇跡を起こすんじゃないかって」
キングはそう言った。
けど、その具体的な力がどのようなものなのか、キングが思った直感的な考えはある意味当たっていて、リーシアと彼が気付いていないだけで、二人にはたった一つの特別で特殊な可能性を実は秘めている事に、ひっそりと勘付いていたのだろう。
「私だけが…ゴウセルを…?でも、どうやって救えば良いの…?私…何もわからない… 」
彼女は涙を流しながらそう言った。彼女らには、眠りし絆で何れ目覚める、【二人だけの力】が別に眠っているのではないかと、そう言われても、そんなの分からないし、それと並行して悲しみの感情が先越して、そんな事を考えられるような心の余裕もなくなっているこの状況で……。
リーシアは何も出来ない自分に悔やみ、更にはずっと、どう声を上げても声が届かなくなり、ずっと永遠に深い眠りから抜け出せない彼を目の前にすると、無情な現実を突きつけられ、嘆き…それでも、今の彼には、声を上げては枯れる程に啜り泣く彼女の声なんて、何一つ聞こえる事などなかった。
悲しみが溢れて、それが呪いの効力を強める為のトリガーに繋がってしまい…、「あ‥‥あ‥…あ…」
彼女の目は、もう光が消えかけていて、何時漆黒の闇に堕ちてもおかしくない、そんな状況にまで追い込まれる。
「リ、リーシア‥!!、落ち着いて…!、ゴウセルは…まだ目を覚ませてないけど、その方法が見つかってないだけで…絶対に何か方法が必ずある筈だから」ディアンヌは焦りながらも、リーシアに正気を失わないで欲しいと説得の言葉をかけた。
「そんな事言ったって…じゃあ、どうしたら良いの…、どうしたら、ゴウセルを救えるの…ねえ、教えてよ」
彼女の心は悲しみに囚われ、もうどうしたら良いのか、なんて平常心さえもまともに保てない程に心は堕落し、そんな心を救ってくれる唯一の希望が今は潰えてしまっている、彼さえ目覚めれば、リーシアの心は救われるが…。
でも、結局どうやって、ゴウセルを誘われた深き彷徨う闇から、救うか。
そこが、どうにもならないと彼女達に立ち塞がる問題を解決する事は出来ない。「意識不明の者を強制的に起こせる魔力魔技があるが‥…残念な事にそれを可能とするのはゴウセルだ、自身で自発出来るなら、話は別だが…植物状態…更にはそもそも魂自体も今のゴウセルにはない、殆ど死んでるに等しい身体にされた以上、不可能に近い」
「じゃ、じゃあ……ほんとにどうしたら…」
「魔神族に有効的な道具、もしくは力が必要だ、だがその前にキングが言っていた仮説も気になるものだ、もしかしたら感情がヒントとなって新たな力が…お前に眠る何かがゴウセルを救えるかもしれない」マーリンはそう言って、眠りから永遠と醒めないゴウセルに目を向けた後に、リーシアを見つめてそう言った。
「ん〜、そうなると今のところはまだこれと言って何も解決できる方法はないって事か、リーシアの力が目覚めたら希望はまだあるが…まあそれを信じて一旦酒場に戻るとするか」メリオダスはこれからの旅の行き先や動向を今一度立て直しする必要があると考え、リーシアの為にも『豚の帽子亭』へ帰還し、その後目覚める兆しが見えない彼を寝かせ、ゴウセルを寝かせてすぐさまにリーシアは側に駆け寄った。
そして、「ごめんなさい…私があの時、貴方を前に出て守っていれば…こんな事なんて起きなかった筈なのに…ごめんなさい……」
リーシアは、もう彼が完全に目覚められるようになる時まで、ずっとどれだけ願おうが、彼の声を聞く事さえままならなくなって不安を拭ってくれる存在が、もう目覚めないから…ずっと悲壮に包まれる…悲しみに暮れる事しか出来ない。
「…………ねえ、目を…覚ましてよ、ゴウセルの声が…傍にないなんて嫌なの…」
リーシアはずっと悲しみに満ちて、啜り泣き続けるけど‥‥、ほんとに奇跡なんて起きるのだろうか、絶えない悲しみに苦しみ、「リーシア…」ディアンヌはリーシアの傍に寄り添って肩をそっと撫で下ろす。
それから、数時間…何時間経っても、ゴウセルは永い眠りから解かれる事なくまるで本当にもう息絶えたと勘違いしてしまいそうな程に、彼の正気は感じられなくなっている。だから、リーシアが自分の為にこんなにも大粒の涙を流して啜り泣く声さえも今となっては聞こえない。
「………………」
そんな簡単には、無情にも彼には届かない。「ほんとに私に…彼を救えるような力が芽生えるようになるの…?どうしたら良いの‥?」リーシアは思う程に枯れる事なく、零れ落ちてくる涙を流し……、「リーシアの中に眠る力が希望とは言っても、それが何をもってトリガーが解かれて目覚めるかだよなー、可能性があるとしたら『感情』なんだろうけど、感情のうちのどれが引き金になるかなんて、検討もつかないしなー」
「そうなると、やっぱり並行して別にまた聞き込みしてその術を解かす物を探す事も必要かもしれませんね、何が条件で力が目覚めて、それにそれで本当にゴウセル様が目覚めるのか、何も明確な事が掴めてない以上…」
エリザベスはこの行き場のない、手詰まり状態に…別の方法からやってみた方が良いとの提案。
「ん〜、だな。リーシア自身の力以外でももしかすると何か解決方法が見つかるかもしれないしな、ん〜正直どうするか……」
「何も方法はこれと言って何もないし、それに賭けてみるしかなさそうだね、少なくともオイラ達がどうこう出来るような問題じゃなさそうなのは間違いなさそうだし、その辺の調査も兼ねて 」キングはそうメリオダスらに言ってみる。「そうしてみるか、ってもリーシアはゴウセルの傍に居たいだろうしな」
「そっか。じゃあ、難しい…かな」
「全員ではなく、数を決めていくか…いや、そうしたところで、またあの者たちがリーシアを狙って奇襲を仕掛けて来る可能性も捨てきれないのもまた事実……」
マーリンは調査を兼ねた聞き込みに関しては、あまり今の現状では迂闊にするべきではない、という事を告げた。
「‥‥…どうしよう………」
「リーシアの存在が、彼らに認知されてしまっている以上以前のようには気安く出歩くのは危険だろう、それに隙を伺ってリーシア、もしくはゴウセルを狙ってくるのも有り得る、だからそれも踏まえると、もう少し彼女の中に眠っているであろう新たな力が目覚めるのを信じて待ってみるのが今のところは最適だ」マーリンはそう言って、とりあえずは時の流れが許す限り、彼女らはゴウセルが目覚めると、そう信じて。
けど、どれだけの時間が経っても、彼が目を覚ます事はなかった。「どうして……、…………っ、やっぱり奇跡なんてないんだよ、きっと……どんなに願ったって……」
リーシアはゴウセルが、目覚めなくなった事の悲しみの反動で、かなり悲観的に卑屈になっているようで、瞳は暗く霞み、絶望に打ちひしがれ、堕ちた……そんなリーシアは、「どうして…私は…やっぱり、呪われた…穢れた、魔神族に創造されただけの‥存在で、誰も幸せにならない‥私‥‥私…」と、そんなリーシアをディアンヌは彼女が堕天の運命を辿ることのないようにずっと、彼女の心に寄り添い続ける。
それでも、リーシアにとっては何一つ 変わる事ないこの気持ち…、だって仲間が幾らこれだけ多くても、そんな中でかけがえのない存在だと感じているのは、たった一人…。
だからこそ、そんな彼を目の前にしている今…この現状は彼女にとって心苦しく、まさに苦痛でしかないのだ。
暗く沈み、廃れゆくこの気持ち。けど、それでも彼女は絶対に何時かは必ず目を覚ましてくれる、彼は完全に死んでしまった訳じゃない、だからきっと目を覚ましてくれる、そんな儚い希望を空しく、ただ時だけが過ぎて、もう彼は一生かけても目を覚ます事はないのだろうか、そう思いかけていたが‥思い募った悲しみと思いが、遂に希望へと実り変わる…その時が。
「……っ!!、何…これ……、……!!」
不思議な力が突如として覚醒し、遂にその時を迎え、目覚めた。
「新たな力が創造された‥何だか分からないけど、奇跡が‥‥起きたみたい 」リーシアはそう言ってメリオダスらを見つめた。
そして、その覚醒の目覚めの証は彼女の目にも明確に顕になってきた。
「お前…その目… 」
「……眠っていた力が‥目覚めたみたい…」
彼女の眼は、見かけた事もないような印が刻まれていて、明らかにこれまでとは全く様子が違う事が伺える。
「……予想は薄々してたけど、やっぱりやっぱ力が目覚めるトリガーのきっかけとなったのは【ゴウセル】だったか」
「けど、これで少し希望が見えてきたって事で良いんだよね」
「ああ、まあ…その認識で間違っちゃいないとは思うけど、万が一リーシアに目覚めたこの力でも駄目なら、本当に益々対処が思いつかない」
メリオダスらは新たに覚醒したリーシアを不安混じりながら、静かに見守る。この力が、感情や願いが通じて眠りに彷徨うゴウセルを助けるとなれば良いが。
「ゴウセル……絶対に…貴方を失わせないから」
彼女は彼の手を握り、瞳を閉じて祈りを捧ぐ、これが上手く事を運べれば。その様子をメリオダスらは、「このような魔力反応…、これまで感じたことの無いようなものだ、これは一体…」
「不思議な力…魔神族の中でも只者ではない力に感じる、彼女は一体…」
彼女から目覚めし、新たな力にどう言えば良いのか、そう言うような困惑の反応を見せたメリオダス達、悍ましい力とはまるで、真逆…女神族……妖精族、そんな種族に値する者‥?。
けどこれは彼女に宿ってる力は間違いなく、魔神族が有する魔力と同一のもの。その事から彼女は魔神族は魔神族でも…「これ程にまで凄まじい力を持っているとなると、魔神王‥いや、それ以上の魔神族の中でも頂点に達する地位に属する逸材の可能性があるな 」
マーリンはそう考え始めた。そう、それに‥最もその事を裏付けるのが、「だな、あの森に居た奴ら‥同じ魔神族である事には間違いないだろうけど、けどやたらリーシアに対して敬意を示してるような態度だったし、もしかするとその線もないとは言えないな」
とメリオダスらがリーシアの事を考え込んでいる間にも、彼女はゴウセルの事を想い、願い続けた。
その祈りの願いが通じたのか、力は更に新たな方向へ覚醒し、目覚める。
「…………っ!、お願い‥‥」
願い望み、けれどそれでも『彼』にその想いは届かなくなっていて、更には、「え……?、何で…?」彼女はガクッと崩れ込み、ポツリと涙を溢した。
「どうしたの‥?、リーシア」
「力が…拒絶されてる‥何か防壁のようなもので、ゴウセルの意識そのものにもさえ、接触できなくなってる」リーシアは戸惑いながら、そう話した。「何……?、という事は益々対処出来る方法が無くなった…か」
「でも、何で急に、もし拒絶なんて起きなかったらもしかするとゴウセルは……目覚めてたかもしれないって事‥だよね‥それも叶わなくなったの……?」
ディアンヌはそう不安混じりにマーリンにそう言った。
「ああ、しかし何故突然そのような事が…まさか奴らの仕業か…」マーリンが言っていると、何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……ああ、その通りだ、【七つの大罪】……」
そう、ゴウセルをこのような事態に陥れた張本人、魔神族の住処の森で出会したあの青年‥‥。
「やっぱりそうだったか、それで何の用だ‥!」
「お前達が気になってな、それとまた我々の領域に足を踏み入れて来ないかの監視の意味もかねてな」と魔神族の青年は言った。
「よっぽどゴウセルに目を覚まして欲しくないみたいだな、魔力を行使してまで妨害してくるなんてな」
「ははっ…、ああ、それとあいつはもう二度と目を覚ます事はない」
「え‥…?」
ゴウセルはもう二度と目を覚ます事が叶わない、それがもし真実なら…と絶望に満ちる。だが、「……?、何と何やら妙な力が目覚めたご様子ですね、しかし我々魔神族のものとは違う…………何です?その瞳」
「‥‥…想いが創り出してくれた力……」
「貴女のようなお方にそのような事が、彼との波長がその運命を引き寄せた‥と。まあ丁度良いどのみち、その大罪人も何は貴女様の本来を引き出す為の代償の生贄に使わせてもらう、精々それまで生きていろ」
「ゴウセルを標的に仕出したのはその為って訳か」
メリオダスはそう言い、「‥‥ははっ!、ははっ!!」とその青年はまるで愚か者を笑うように笑い、そして「…………」さっきまで意識さえなかった筈のゴウセルが突然目を覚まし、彼に手繰り寄せられるようにまともな正気は失ったまま、操り人形になったようにあの者の元へ。
「ゴウセル…?、行かないでっ!! 」リーシアはそう言葉を投げ掛けるも、その声は一切ゴウセルには届かなかった。
「ははっ!聞き分けの良い奴だ、この者を手玉に取った事で‥貴女様に残された選択肢は此方側へお戻りになられる事以外無くなりました…」
「っ!、卑怯な真似を…!!けど、そんな事をしただけで堕ちる程私の心はヤワじゃない‥!」
リーシアはそう言い叫んだ。
「そう……ですか…ですが、これなら考えが変わる事でしょう、くくっ‥」
彼は不敵な微笑を零して、そして彼はゴウセルにこう命じた。
「さあ、自らの命を絶ちなさい……」
そう命令が下り、リーシア達はまさか……と息を呑む。ゴウセルは操り人形状態に囚われてる為に、命令通りに行動し、自身の神器を出し……。
「……!!!!、そんな‥!、ゴウセル、止めて…!」
リーシアは操り人形に成り下がったゴウセルの自滅を阻止する為に駆け寄った。
すると、「…………リーシア……」
自我と魂ら全てを抜き取られていた筈のゴウセルは一時的な者ものなのだろうが、奇跡的に自身の意思を取り戻し、リーシアの名を呼んだ。
「え……?、ゴウ‥セル‥?意識、戻ったの…?」
リーシアはゴウセルが無事に意識を取り戻せた事への喜びの感情と、その一方でこれが単に一時的な事象というだけであって、まだ完全には戻りきって居ないんじゃないか、そんな複雑な想いが浮かんでくる。
「………………ああ」
「‥‥…………ゴウセル……」
彼の返答が少しばかり遅かった事から、もしかするとまだ完全には‥‥。
「くっ…!!、まだ抗える精神力があったのか、魂も魔力もお前の中に在る力や機能は全て奪い取った筈だったが……貴様ら大罪人はどこまでもしぶとい……だが、何れはそれさえも叶わない骸ヘと変わらせよう、お前を利用しない事にはお戻りになられないらしい…」
魔神族の住処にいる血縁者と思わしきその青年は、ゴウセルに目を向けて言った。
「‥‥……これ以上、ゴウセルを巻き込むなら…彼に対しても何か目論みを行おうとするなら、それが例え同族であっても、容赦はしない……」
「貴女様はまだそのような事を…言っておきますが、彼の身体や彼のその他の所有権は全て私が握っているも今や同然…その反抗次第では……目の前で、貴女様が大切に想っているこの大罪人を失う事になるかもしれないのですよ‥?それでも、良いのですか‥??」
「………………っ…!」
下手に反抗して、逆らえば、ゴウセルが犠牲に……それに再びあの最悪の事態が繰り返される事になる、そうなってしまったら、彼女の心は愈々壊れてしまい、堕ちるのも時間の問題になってくる。
けど……、「まあ、それでも構いません。じゃあもう暫くお前は大人しく覚めない永遠の眠りで静かにしていろ、本当は『魔神嬢』様を連れ戻す為の貴重な逸材として、奴隷‥配下に来てもらうつもりだったが今はまだお預けだ、しかし…何れはお前にも我々の計画の重要核を担ってもらう」
と彼はそう言って、立ち去ろうとしたが‥…自我を取り戻したかと思ったが、ゴウセルが…「…………」
「ゴウセル‥…?何で‥…行かないで…!」
リーシアは声をあげて、彼の足取りを止めようと…あの者の元へ着いて行こうとしているのを阻止する。
「身体の所有権を略奪し、対象者の意識全てをコントロールする‥か、厄介な魔法をかけられてしまったようだな、奴は‥」
「何だ?そうか、聞き分けの良い従順な奴だ、だが…我々の思い描く筋書き『シナリオ』を実行する時は今ではない‥」
「………‥‥」
ゴウセルはその青年を完全に主人的な存在だと認識するようになっており、離れようとしなかった。自身の支配権を彼に全て握られてしまった事が要因と推測…。
それでも、やはり足取りには何処か迷いを生じ、完全には支配はされていないようで彼の中でリーシアを想う気持ちと魔神族による誘惑が葛藤を起こしているのかもしれない。
「同族であるお前なら、魔神嬢の傍に相応しい‥しかし変に迷いを起こされたら使い物にすらならない、お前の事は気に入ったが、今のままでは我々の計画が破綻しかねない、だから今はまだだ」
そう言って今度こそ、この場を立ち去った。ゴウセルが、彼方側へ行く事は何とか無くなったが、「…………‥……」
そこに立っていたのは人が変わったように、別人のように変貌した彼…。
「…………ゴウセル……………」