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「エリカさん、ちょっと聞いていいですか?」
「たくさん聞いていいよ、なぁに?」
「あのですね。エリカさんってこんなに可愛くて、いい人そうなのに。その……どうしてこんなことをしてるのかなって」
(――売りをしている私のことを知りたいんだ、へぇ)
「ウソかホントか信じるのはケンジさんの自由だけど、それでも知りたい?」
「はい。すみません、興味があって」
ケンジさんは握りしめている私の手の甲を、労わるように撫で擦る。わざわざ気を遣って、そんなことをしなくてもいいのに。
そんな優しいケンジさんに苦笑いしながら、元彼に借金を背負わされたことや、返済があと50万円弱という話をしてあげた。
「私の人生が元彼のせいで一気に変わっちゃったけど、こうやっていろんな人と遊べるのも楽しいし、悪いことばかりじゃなかったよ」
私なりに、ごく自然に明るい声で告げたというのに、ケンジさんはいきなり立ちあがって、空いていた私の片方の手もぎゅっと掴んだ。
「ケンジさん?」
「エリカさん、残りの50万円を俺が全額支払います! そうすればお互い幸せになれるんだから!」
(お互いが幸せになれるって、いったいどういうことなんだろう?)
「ちょっと待って。いきなりそんなことを言われても困る……」
「俺自身、個人的な事情があって、どうしても手元にお金を残しておきたくないんです。その事情は、ちょっと言えないんですけど……。でもエリカさんのために使うことができるなら、俺は本望ですっ!」
鼻の穴を広げて興奮する様子に、困り果てるしかない。
「……ケンジさんってば50万円で、私の人生を買おうとしてます?」
「へっ!? エリカさんの人生を買う?」