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episode #1 start
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長尾謙杜side
正直、告白された瞬間は頭真っ白やった。
「好き」
その一言を、あんな真っ直ぐ言われると思ってへんくて。
しかも相手は、あの道枝駿佑。
普段はどっちか言うたらツン寄りで、
近づきすぎると一歩引くタイプやのに。
付き合うことになった、その日。
——変わった。
ほんまに、分かりやすいくらい。
「長尾」
呼ばれる回数が増えた。
前まで用件ある時しか名前呼ばんかったのに。
並んで歩いてたら、自然に手が当たる。
当たるだけやなくて、絡めてくる。
「……なに」
そう言うと、みっちーは少し照れた顔で笑う。
「いや、彼氏やし」
彼氏。
その言葉、軽く言うなや。
「長尾さ、可愛いな」
急に。
なんの脈絡もなく。
「は?」
「今の顔」
俺が眉寄せたの見て、楽しそうに言う。
「可愛い」
……やめてくれ。
嬉しくないわけちゃう。
むしろ、胸の奥がじわってする。
でも、
こんなみっちー、知らん。
それからもずっとそうやった。
家に帰るまでの電車でも、
俺がスマホ見てたら覗き込んでくるし、
「何見てんの?」
「俺も見る」
距離、近い。
肩、触れる。
俺がちょっと体ずらしたら、
「逃げた」
拗ねたみたいに言う。
「……逃げてへん」
「ほんま?」
顔近づけてくるから、思わず視線逸らす。
「長尾、照れてる?」
「照れてへん!」
そう返すと、また笑う。
「可愛い」
——それ。
それが一番、効く。
正直言うと、
最初は嬉しかった。
付き合った実感もあったし、
みっちーが俺のこと好きなんやって、ちゃんと伝わる。
でも。
あまりにも、急すぎて。
ツンだった人間が、
スイッチ入ったみたいに甘くなるの、
想像以上に情報量多い。
夜、布団並べて寝るときもそう。
「長尾、こっち来て」
腕引かれて、距離ゼロ。
「近い」
「彼氏やし」
またそれ。
「……暑い」
そう言って少し離れたら、
みっちー、一瞬だけ目を伏せた。
「……そっか」
その声が、ちょっとだけ寂しそうで。
罪悪感、ちくっと刺さる。
でも、
この時の俺はまだ分かってへんかった。
この“違和感”が、
あとでこんなにも俺を苦しめるなんて。
——この時は、
ただ思ってただけや。
『 ちょっと、距離近すぎるかも 』って。
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episode #1 finish
𝐍𝐞𝐱𝐭…🩷💛𓈒 𓏸
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