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カリカリと筆記帳に書く音が止まる。それと同時に、メイド長の吐息が聞こえた。


「エレノア、何を調べているの?」

「百年前の火事についてです。火事になった話を先輩に聞きまして――」

「あなた、噂話に興味があるタイプなのね」

「……はい」


写生が一段落ついたのだろう。

メイド長は私に話しかけてきた。

私は正直に百年前の火事についてだと答える。

メイド長は目頭を摘み、首を振る。私の答えに飽きれているようだった。


「当時の事が書いてある資料は――、これよ」


メイド長が椅子から立ち上がり、沢山ある資料の中から一冊の筆記帳を抜き出し、私に差し出す。

私はそれを受け取り、パラパラと軽くページをめくった。状態は私が読んでいたものと同じくらいか。


「背表紙に年代と何冊目か書いてあるわ。再建については次の日誌にかかれていたはずよ」

「ありがとうございます」

「私は外へ出るけど、エレノアはどうする?」

「えっと……、こちらを少し読んでから戻ります」

「そう。じゃあ、壁に埋め込まれている明かりを消してちょうだい。あなたが置いた洋灯は、あった場所に片づけてね。鍵は――」

「場所、わかります。施錠して戻りますね」

「後、頼んだわよ」


私にそう告げると、メイド長は資料室を出て行った。


(あ、ほんとうだ)


私はメイド長から受け取った筆記帳の背表紙を見る。彼女が言った通り、年代と番号が書かれていた。

私が持ってきたのが〇、メイド長が持ってきたのが一と書かれている。つまり、ソルテラ邸の再建については二に書かれていることになる。


「少し読んでから戻ろう」


私はメイド長から渡された日誌を読む。

すべて読み切ろうとしなかったのは、資料室が寒かったからだ。

地下室ということもあり、地上よりも涼しい気候なのだろう。次、訪れるときは上着か毛布を持ってきたほうがいいかもしれない。


「どの本を読めばいいか、分かっただけ時短になったわ」


膨大な資料から目的のものを探さなくてはいけないのかと思ったが、二冊に絞れたのは良い兆しだ。これなら、今回の【時戻り】だけで済む。


「よーし、調べるぞ!」


私は片腕を天井にあげ、手がかり探しに務めた。



それから、オリバーが死ぬ運命の日まで、私は資料室で百年前の日誌を読み込んだ。


「……なるほど」


ブルーノに全従者が広間に呼ばれる日、私はソルテラ邸の火災の真相や再建の経緯についてすべてを把握した。それらを自分の筆記帳に書き留めた。


「よし、次の【時戻り】だ」


私は筆記帳をポケットにしまい、資料室を後にし、ブルーノの元へ向かう。

そして、ブルーノにオリバーの遺品整理を命じられ、あの隠し部屋へ戻ってきた。


「これで七回目……、かあ」


私は青白く光る水晶を見つめ、ため息をついた。

次で七回目の【時戻り】になる。体感でニ年、ソルテラ邸に勤めていることになる。

今回はオリバーに接触することも無く、ほとんどの時間を資料室で過ごした。

次も今回も計画のため、オリバーと接触することはないだろう。

私はオリバーの運命を変えるため、着実に進んでいると思う。

だけど、不安になるのだ。

この道筋で合っているのか、と。


「誰かに相談……、出来るわけないものね」


誰かの助言を得たい。別の人間の意見が欲しい。

けれど、【時戻り】のことは誰にも打ち明けられない。

この部屋はオリバーしか入ってはいけない場所、そしてオリバーの弱みになってしまうから。


「だって、この屋敷には”敵”が潜んでいるんだから」


私は資料室の日誌を読んで分かったことがある。

それは、百年前からソルテラ伯爵に仕えるフリをしている裏切者がいるということだ。

私は火災の原因を読み、分かってしまった。

火災を起こしたのは、マジル王国の工作員だということを。彼らの祖先は今もソルテラ邸のメイドとして勤めていることも。


「秘術が失われたのは、マジル王国の仕業……。私の祖国がやったこと」


過去の自分、捨てた自分のことを呟き、私は七度目の【時戻り】を始めた。

モブメイドは戦死する伯爵の運命を変えたい

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