『今年の夏はまっこと暑いぜよ』
坂本は面頬を脱ぎ、団扇を仰いでいる。
『うっせぇーな暑いって言うから余計に暑いんだよ』
隣で寝ている坂田が坂本にデコパチをする。
坂田にデコパチをされ、坂本は痛いとのたうち回っている。
『冷やし飴でも飲むか?』
桂は、冷やし飴を卓袱台に置く。
置かれた冷やし飴に、坂田が飛びつく。
『これが飲みたかったんだよ!』
坂田が、冷やし飴一気に飲み干す。
その横で桂は坂田に行儀が悪いと叱っているまるで、お母さんみたいに。
『にゃあ、ヅラ高杉は何処に居るんじゃ?』
坂本が桂に問い掛ける。
『ヅラじゃない桂だ!知らん自分の部屋にでも籠って居るのではないか?』
桂は、坂本の問い掛けに答えた。
『わし、呼んでくるぜよ。』
と言い残し、坂本は高杉を呼びに行った。
『おーい高杉ィ!』
高杉の部屋を力強く開ける。
『うるせぇな』
高杉は自室に籠って、煙管を吹いていたようだった。
『にゃあ、高杉それ美味しいがか?』
坂本はまた高杉に問い掛ける。
『さぁな』
高杉は坂本を冷たくあしらう。
『もしかしてこの前にまだ怒ってるんがか?』
坂本と高杉は一昨日喧嘩し、それからあまり言葉を交わす機会がなかったのだ。
『その、それはわしが悪かったぜよ』
坂本は謝る。
『別に怒ってないぜ』
高杉は坂本の手を握り、接吻を交わした。
多分もうとっくに冷やし飴の中の氷は液体になっているだろう。