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「つ、次はボクの番だ! 覚悟しろ、小さき人間め!!」
幻獣ケルピーを呼び出したドワーフが下がり、後ろにいた別のドワーフが前に出てくる。各個で喚べる属性が異なるのか、それとも一人につき幻獣一体なのか。おれから見てもドワーフたちの方が身体が小さい。
だが、彼らは敵とみなす相手を小さく見る傾向が強いようだ。
「アックは大きいのだ! お前たちの方が小さすぎるのだ!! ウニャ」
おれに対する文句にシーニャは反論するが、延々とやり取りが続いてもまずいので今のうちにシーニャに教えておくことに。
「シーニャ! 彼らはドワーフ族だ。身体の大小について返しても無駄だぞ」
「ウニャ? ドワーフ族? ドワーフならここにもいるのだ」
「はえぇっ!? わ、わたしと同族なんですか?」
ルティが驚いているが、自分のことを気にしていたようだしはっきりさせておこう。
「一応な。といっても、ドワーフ族は各地にいるから珍しくはないけどな」
「じゃ、じゃあ、みんな家族みたいなものですね!」
「何でそうなるんだ。さすがにそれは……」
「ウニャ、それは違うと思うのだ。ドワーフ、ちょっとおかしいのだ」
シーニャは呆れてしまっているが、何かしらの繋がりもなくはなさそう。
「行くぞ!! 小さき人間!」
シーニャたちと話をしていたら、敵が攻撃態勢に入っていた。
「ウニャニャニャ!? ここはどこなのだ!? シーニャ、泳げないのだ~!!」
「うぷぷぷ……沈んじゃうぅぅ!?」
「これは幻影? いや……本物の海原《うなばら》か」
召喚の技なのか、あるいは幻術か――おれたちは海に放り出されていた。
「あっぷ、あぷぷ……」
「ルティ、お前は耐水が備わっているだろ。たとえ沈んでも溺れることは無いはずだぞ」
「そ、そうでした! そうだとしても、うぶぶぶ……」
放っておいてもルティならそのうち上がってくるだろう。ルティは気にしないでおくとして、まずは目の前にいるこの娘をどうにかしてやらなければ。
「ア、アック、ウニャゥゥ!!」
「シーニャを守れ【霊獣シリュール】!」
防具に潜在する霊獣ではあるが、”守る”ことに関しては素直に言うことを聞く。その効果はすぐに発揮され、シーニャを包むように水で球形を作り出し霊獣が彼女を覆いだした。
「ウニャ!? 何とも無いのだ! ウニャッ!」
「そのまま大人しくしているんだぞ、シーニャ」
見渡す限りの大海原だが、すでに相手の術中に陥っていると見るべきか。恐らくこうでもしなければ喚べない幻影クラス。敵のお膳立ては整い、後は幻獣が出るのを期待するだけとなる。
そうなるとドワーフたちもこの間、幻獣任せになりそうだが。
「よ、よし、そろそろ戻すぞ!」
どこからともなく、仕掛けたドワーフの声が聞こえる。声からすると大海原から森へ戻すようだが、そうなるとルティはどこかの海に放り出されることになりそう。
出来ればそれだけは避けたいところだが、そもそもここがどこの海なのか全く見当がつかない。そうなると、まずはこのドワーフを撃破することが近道となるだろう。
「……小さな人間が濡れているうちに召喚、召喚!」
やはり子供がすることのようで、いちいち確かめている。
「随分と大掛かりのようだが何を喚ぶつもりなんだ? 海という時点でまた水属性の獣のようだが」
「どんどん強くなっていくんだぞ! 小さな人間、覚悟しろ!!」
「……やれやれ」
未熟者の末裔だとこうも違うのか?
少なくとも今の時点で派手な男――ウルティモのような脅威は感じられない。
「――来い!! え~と、【幻獣フォルネウス】!」
同じ水属性ということもありおれは大して警戒はしていなかったのだが、サメかエイに似た巨大な幻獣が迷うことなくおれに狙いを定め向かってくるのが見える。
辺りからは水が消え、元の地面に戻っているのにもかかわらずだ。
まるでそこが大海原のように――。