電車の床は無事だった。どうやら、黒い馬は幽霊のようにあるいはモートのように床を通り抜けたのだろう。だが、車窓は別だった。大きな穴が空き。人々が幾人か外へと落ちていく。それと同時に凄まじい吹雪が車内で荒れくるった。
アリスとシンクレアは悲鳴を上げうずくまった。
「そんなに大きな悲鳴を出さないでください……」
屈んでいるアリスの肩に誰かが手を置いた。振り向くとオーゼムが一人立っていた。オーゼムの周りにも混雑時の人々は近づけないかのように寄ってこない。そこだけが人の波は来ないのだ。
大きく破れた車窓から逃げ出した人々の波を気にせずに、オーゼムは窓の外へ目をやった。
「もう、大丈夫です。これなら怪我人もいませんね。さて、お嬢さんたち聖痕を持つ少女のところへと行きましょう。そこならもう安全です。何故ならモートくんが先頭車両でゾンビたちを狩っていますので、こちらには寄ってこないのですよ」
屈んで震えていたアリスとシンクレアはホッとして、いつもの表情を取り戻した。
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