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iris stpl 桃赤 様
誤字脱字注意
日本語おかしい
……夜が更けて、部屋の照明を落としたあとも、彼は俺の腕の中から離れなかった。
呼吸がゆっくり揃っていくのを、黙って感じる時間。
「……静かだね」
小さな声で、彼が言う。
「たまにはな。世界が黙る時間も必要だろ」
そう返すと、彼は少し考えてから、俺のシャツの裾をきゅっと掴んだ。
さっきまで泣いていた人間の仕草じゃない。
誰かに甘えることを、思い出した人の動きだった。
「僕……」
「うん」
「強くならなきゃって、ずっと思ってた。
弱いと、みんな不安になるから」
胸に、鈍い痛みが走る。
それは俺自身が、昔、同じことを思っていたからだ。
「強さってさ」
言葉を選びながら、ゆっくり続ける。
「一人で立つことじゃない。倒れそうなときに、誰に掴まるかだ」
彼はしばらく黙っていたけど、やがて小さく笑った。
「……ずるいよ。
そんなこと言われたら、離れられないじゃん」
「離れなくていい」
即答だった。
彼は驚いた顔で俺を見る。
でも否定も、照れ隠しもなかった。
「ここでは、役職も年齢も忘れろ。
名前で呼ばれて、抱きしめられて、眠ればいい」
「……うん」
短い返事。
でも、その一言に、長い緊張が溶けていくのが分かった。
やがて、彼の瞼が重くなって、規則正しい寝息に変わる。
眠りに落ちる直前、無意識みたいに呟いた声が、耳に残った。
「……守ってくれる人がいるって、こんなに楽なんですね」
俺は答えなかった。
代わりに、背中を一度、確かめるように撫でる。
――守る。
それは支配でも、責任でもない。
ただ、「ここに戻ってきていい場所」を用意すること。
社長で、リーダーで、強い立場にいる俺が、
誰かにとっての“帰れる場所”でいられるなら。
それでいい。
それだけで、全部報われる気がした。
窓の外で、夜が静かに流れていく。
腕の中の温もりを逃がさないように、俺は少しだけ力を込めた。