テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
✧≡≡ FILE_044: たまお ≡≡✧
──エンジン音が、地面を引き裂くように響いていた。
ウィンチェスター市街を抜け、住宅街へと急行する車内。
まだ残っている──もう一基の爆弾。
それを探し出すため、ワイミーはハンドルを強く握りしめていた。
焦りで、手のひらがわずかに汗ばむ。
少年は、すでにウィンチェスター大聖堂へ──早くそちらへ向かわなくては──
カーブを抜けた瞬間、視界の端に“ありえない光景”が飛び込んできた。
「……!?」
住宅街の角。
細い道で、爆弾らしき銀色の球体を抱えながら──2人の子どもが追いかけっこをしていた。
「それ僕のだ!」
「ドカーン、ドドドド!……ピッカーン!」
「貸してよお」
「わはははは!……持って帰るんだあ、これ」
バカな──!
ブレーキが地面を噛んで鳴いた。
ワイミーは車を飛び降り、叫ぶ。
「A!B!──何をしてるんですか!」
振り返ったAはハッとした顔をし、Bは爆弾を両手で掲げながら笑った。
「わー!見つかっちゃった」
「それ、何だと思ってるんです!? 返しなさい、それは──!」
「爆弾、でしょ?」
Bが頭の上に爆弾を抱えて見上げる。
「……危ないものなんだ、離しなさい」
「やだよ、持って帰るんだ!」
Aが慌てて手を振る。
「ち、ちがうんです、ワイミーさん!それ、もう解除したやつなんです!Kと一緒に!」
「……Kッ?!」
あっとAが口を塞ぐと、Bに肘で小突かれた。
「Kはどこに?」
「……え、っと……」
「さっき、バイバイしたよ」
Bが手を振って見せると、ワイミーは深く息をつき、頭を抱えた。
「……もういい、ふたりとも車に乗りなさい。今すぐ」
「えーー!」
「……すごく危ないことしてたんですよ!?」
「別に死にやしないさ」
手を引っ張るようにして、2人を車に押し込む。
後部座席では、Bがまだ爆弾を膝の上に乗せていた。
「それ、トランクにしまいなさい」
「いやだ。名前つけるんだ」
「……はい?」
「“たまお”」
ワイミーは深くため息をついた。
大聖堂は、もう少しだった。