テラーノベル
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時は過ぎて夏休み前。僕は、白瀬さんを花火大会に誘った。
「花火?」
「うん。駅の近くでやるんだって」
「行ってみたい」
白瀬さん嬉しそうだった。見られないから楽しめないんじゃないか、と言う僕の心配は杞憂だったらしい。
「花火って、音が大きいんだよね」
「うん。すごい大きな音がする」
「じゃあ、楽しみ」
当日。夜空に花火が上がった。大きな音が響く。白瀬さんは、その音に顔を上げた。
「……綺麗」
僕は、思わず聞いた。
「見えないのに?」
白瀬さんは少し驚いたように笑った。
「うん。音が、綺麗だなって」
僕は空を見上げた。赤、青、金色。次々と花火が咲いていく。
「今のは、赤色」
「うん」
「大きくて、丸い」
「うん」
「次は……金色。細い光がいっぱい広がってる」
白瀬さんは黙って聞いていた。そして、少しだけ寂しそうに言った。
「朝倉くんは、私に見えるようになってほしい?」
急な質問に僕は答えに詰まった。
「……どうして?」
「だって、いつも景色を説明してくれるから」
本音を言うと、自分が見ている世界を白瀬さんにも見てほしかった。
けれど、それが叶わぬ願いだと知っているし、そんな願いはわがままだ。
「……ごめん」
「謝らなくていいよ」
白瀬さんは、ゆっくり首を振った。
「朝倉くんが見せたいって、見て欲しいって思ってくれるの。嬉しいから」
それから、白瀬さんは僕の方を向いた。
「でもね。私は朝倉くんが見ているものを、全部同じように感じたいわけじゃないの」
「…………」
「朝倉くんが、どんな顔をして花火を見てるのか。それが知りたい」
僕は、何もいえずに言葉を失った。
自分の気持ちからは逃れることは出来ない。そのことだけが理解できた。
―ー夜空には、大きく花火の音だけが綺麗に響いている。
コメント
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藍碧さん、第6話「見せたいもの」、とても繊細で美しいお話でした……! 白瀬さんが「見えるようになってほしい?」と聞く場面、胸がぎゅっと苦しくなりました。朝倉くんが必死に説明してくれる気持ちも、それを「全部同じように感じたいわけじゃない」と優しく返す白瀬さんの言葉も、どちらも誠実で。最後の「どんな顔で見てるのか、それが知りたい」という台詞、もう本当に……お互いのことを思うからこそ辿り着く距離感だなって。音だけが響く夜空の描写も、余韻が切なかったです。読めてよかったです🌷
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芙月みひろ
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設楽理沙
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