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ドアを開ける気はない、私はもう話をする気はないのだから。
「なにか用?忘れ物があるなら後で送っておくから」
「話がしたいんだ」
モニターに映る茂は神妙に見える。でも、平気で裏切る人だ。
「話すことは無いし、“北山くん”の女性遍歴が多いわけがわかった。結局、こういう事なのね。」
「違う、いや・・・本当に悪かったと思ってる。きちんと話をしたいんだ、部屋に入れてくれ」
どうして、部屋に入れると思っているんだろう。
私が許すと思っているんだろうか。
学生時代に裏切られた話を知っているはずなのに。
結局、私のことをナメているだけだったのかも知れない。
くやしい
言葉が出てこない私にモニターの向こうの茂は「開けてくれ」とやさしい声でささやいた。
「いいえ、お帰り下さい」
背後から声が聞えて慌てて振り返ると賢一は腰に腕を回して抱きしめる。
ふへっ「ちょ、おおしま」
変な声がでて、つい声まで出てしまった。
どういうシチュエーション!と、一人わたわたしていると
「大島?・・・なんで雪の部屋にいるんだ?」
ですよね、驚きますよね。てか、賢一もなんで出ちゃうわけ?
何て言えばいいのか軽くパニックだわ。
「昨日から付き合うことになったんですよ。別れてくれてありがとうございます。知り合ったときには雪には恋人がいて諦めていたんですよ、恋人がいる人を誘惑して“浮気”させることはしたくなかったから。そういうわけなので、帰って下さい。今後も彼のいる女性を誘ったりしないで下さいね“元”彼さん」
顔面蒼白とはまさしく今の茂の状態だろう。
「雪・・・大島の言っていることは本当か?」
「若い彼女がいるのだから私にはもう関わらないで」
これ以上話をしても仕方が無いし、インターフォン越しに話す内容でもないので通信を切った。