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「それより、サラダのこのオリーブの実、ウチで漬けたのよ」ペリンさんは器にレタス、トマト、キュウリをボールから取り、黒いオリーブの実を乗せ、黄金色のオリーブオイルをかけ、「最後にひと絞りするとおいしいよ」と、ひとかけらのレモンと一緒によこした。ケマルが串を外すと、玉ねぎ、ピーマン、羊肉が長い皿の上でばらばらになった。
「これもうまいんだよクタイ、食ってみ。それに、このスープも」
「おいおい、そんなに一度に口に入らないよ」
しかしケマルは容赦なく、俺の皿に玉ねぎと肉を乗せる。
「クタイ君って、面白い人ね」とペリンさんは言った「よく見たら、髪の先まで真似てるなんて」
ぺリンさんは壁に貼られたケマルのポスターを指した。
「ああ、本当だ」ケマルが手を打った。
「あらあら」ぺリンさんが笑いだした。
波長があってしまったのか、二人の笑いは爆発してしまった。
「何が、そんなにおかしいんですか」
俺は自慢の髪型に手を添えた。
「そんなの、適当でいいのよ」ぺリンさんは涙を流している。
「でも、この形がブームですから」
ぺリンさんは、ハンカチを取り出した。
「でもね、髪の先っぽがどっちを向くかなんて、その日によって違うものでしょ」
「適当でいいんですか?」
「作った本人が言うんだから、間違いなし!」彼女は出るそばから涙を拭いている。
「ホントに適当でいいんですか」
「俺だって、赤ショートしてたときは毎日適当だったよ。サイド流して上だけとりあえず突っ立っりゃいいじゃん、くらいで。ヘアメイクさんだってそう」
「それ、本当か?」
「こいつの執着、おかしいって言った方がいいよ、母さん」
左右てっぺんのハネ、サイドの流れる角度。向こうでいちいち規定されていることが、こっちの国では全て、いちいち単なる笑いの種になるのか。
「ものまねとしては、面白いわね」ぺリンさんがまた噴き出した。
「ケマル、何でもっと早く言ってくれなかったんだよ」
「言っただろ。こっちじゃ、自分自身を手に入れる方が大事だって」