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それからの一週間は、長かった。一年くらいに感じたと言っても、決して大げさな表現ではない。壁を勢いで登り切る日もあれば、積み重なる岩とレンガに絶望し、足がすくんでしまった日もあった。雨の日も、風の強い日も、急に肌寒くなる日もあった。それでも毎日登り続けた。
きっとその甲斐あったのだろう、登り始めてから二週間が経ったある日、乗り越えるのがいくらか楽になった、そんな気がした。まるで、城壁の高さが数センチでも低くなったかのように。
一ヶ月も経つと、どうもそれは気のせいではない、かもしれないと思うようになった。城壁のてっぺんに差し込む枝など、初めて登った頃にはなかった、と思う。もしかすると、秋の枝が壁の上に伸び出したせいかもしれない。
冬が来てやがて春が近づく頃、壁が現実に低くなっていたことが次第に明らかになってきた。元の世界の学校の窓から見えていた城壁が、徐々に森の中に沈んでしまったのである。