テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#このキャラでログインしたい
298
『凄いな、本格的に板に付いて来たじゃないか』
「シッ、お兄ちゃんちょっと静かに」
『一応これでもサポーターなんだけどなぁ……そっち、また一人向かうぞ。監視カメラがちゃんとある建物で助かったな』
短い会話を挟みながらも、通路の先から歩み出て来た相手の首筋にナイフを突き立てた。
向こうが反応を示す前に銃を叩き落として、そのまま飛び掛かりもう一本のナイフで手首を切り裂いていく。
その際首に突き立てたナイフは使い捨てた為、空いた手で敵の口を押え。
向こうは大声を上げる間もなく、更には手に持っていた銃火器も地面に落としたまま壁に押し付けられた。
後は敵を押さえ付けて連続で刃を突き立てれば終わり、また一人完了。
6keyのアバターと、この強化したステータスが無いと間違いなく出来ない動きだけど。
それでもコレを十分に生かせば、こんな事だって簡単に出来る。
普通にプレイしている間、ハンドガンと相性が良いのかな? と思って近接格闘戦術系をゲーム内講習で習っておいて良かった。
『三人追加。すぐそっちに行く、死体を隠す暇はないぞ』
「チッ、ここからが本番だね……」
舌打ちを零してから腰の拳銃を引き抜き、物陰に移動しつつ廊下の先へと銃口を向けると。
兄が言っていた通り、銃火器を持った男達が三名。
中々に大きな物を担いでいる様だけど……こんな近距離で、しかも屋内ともなればハンドガンの方が有利だ。
「ふっ!」
短い息を零しながら接近し、正面に向かって連続で引き金を絞ると。
真っ先に飛び出して来た相手の額に穴が空いた。
続く弾丸は即死する様な場所には当たらなかったけど、もう一人は脚と肩を負傷。
最後の一人に関しては、慌てて曲がり角の向こうへと逃げ帰って行ったが。
「他は!?」
『今のところ居ない、さっき逃げた相手が少し先の部屋に逃げ込んだだけ。だが急げ、すぐに増援が来るぞ』
「了解っ!」
負傷して倒れたプレイヤーに対して、隣を通り過ぎる際に額に一発。
確実に仕留めてから、銃を構えたまま建物を進んでいく。
まず狙うのは……。
『二つ先の扉の向こうに、さっき逃げ込んだヤツが居る。監視する為の設備もその中だ』
「やっちゃって平気!?」
『爆発物は使うなよ? 俺まで見えなくなる』
あぁもう、また変なところで条件出して!
とか何とか言いたくなったけど、相手の本拠地に乗り込んでいる状態で兄からのサポートが無くなるのは流石に不味い。
そんな訳で、扉を少し空けた隙間からフラッシュグレネードをすぐ放り込み、爆発音が響くと共に突入。
眼を押さえて藻掻いていた人と、たくさんのモニターに囲まれた席に居た人に銃弾を叩き込んでから周囲を警戒。
『お見事。射撃の腕も上がったな』
「ハンドガンだけね! パソコン発見!」
『保険が欲しければ、そっちにも手を加えておけ。アイテム欄にあった“アレ”、突っ込め。まぁ運営側の言い訳程度だけどなぁ~』
「了解! USB刺しておく!」
言われた事をやってから、まだ多少中身の残っているマガジンを乱暴に捨て去り、予備を装填しながらすぐさま移動。
しばらくすれば、さっきまで私が居た場所へと大勢の足音が向かって来るのが聞こえるが。
『狩るのか?』
「無理、多勢に無勢」
こっちはハンドガンだけ、向こうはフルオート可能なデッカイ銃がいっぱい。
そもそも人数が違い過ぎる上、あの部屋では手榴弾が使えないとなると、私に倒すのは不可能。
という事で、逃げに徹しながら再びかくれんぼ開始。
このゲームを始めてから本当によく分かったけど、鉄砲って本気で当たらない物なのだ。
大きな銃だったらまた当たり具合が違うとか、色々とNPCが説明していたけど。
私が使っているハンドガンは、特に当たらない代物と考えた方が良さそうだ。
他のゲームや映画の様に、百発百中で相手の額に当てるとか絶対無理。
一発撃つごとに反動は来るし、少しでも銃口がズレれば着弾地点は大きくズレる。
素人は1メートル離れた相手にも当てられねぇぜ、なんて武器屋のおじさんNPCが笑っていたけど……あながち嘘では無さそうというのが正直な感想だった。
姿勢を整えて、ちゃんと構えた状態でなら素人でも当たるのだろうけど。
緊急事態で、尚且つ慌てて引き金を引いたところで当たるものじゃない。
だからこそ、やるなら可能な限り一対一。
更にはかなり接近した状態で、銃口を押し付ける勢いで素早く倒して、逃げる。
これがガンサバにおいて、私が学んだ戦い方。
鉄砲のゲームなのに、遠距離どころか中距離でも戦おうとしないというのは格好悪いかもしれないけど。
でもこちらが絶対に当てられる状況というのは、実際のところ凄く近い距離じゃないと無理なのだ。
『突き当りの窓から外に出ろ、外に非常階段がある。それで上に行ける、ただし二階からは室内から攻めろ。一気に三階へ上ると、窓際に迎撃用のトラップがあるみたいだ』
「了解っ!」
指示通り窓から身を乗り出し、そのまま上層階へと登っていく。
非常階段なんて言っていたのに、二階に上がる部分は梯子だし。
しかも収納されてるヤツ。
リアルだったらこの時点で詰みなんだけど、このアバターだったら問題無し。
身体能力を生かして壁を蹴りながら飛び上がり、梯子を掴んでからは腕力を使ってよじ登っていく。
そのまま二階の窓から室内を覗いてみれば……どうやら一階で発生したトラブルに対処しようと、かなりの人数がバタバタと階段から下層へと向かっているところだった。
こういう時、NPCなら攻撃班だけが下の階に降りて、二階の警備が手薄にならない様に配置されたままっていうのが普通だったんだけど……。
どうやら中身が普通のプレイヤーだと、こうして“見つけたかもしれない敵”に皆揃って集まってしまうらしい。
それだけ賞金首の報酬が魅力的、という事なのかもしれないけど。
ラストアタックボーナスは特に。
『分かりやすく、寄せ集めだな。報酬にまっしぐらだ』
「……他は?」
『確認出来る位置には、まだ多少残ってる。気を抜くなよ』
兄の声を聞いて、音を立てないように気を付けながら窓から侵入。
さっきから割と問題無く進んでいるけど、窓の鍵って閉めておけないのかな?
結構不用心な気がするけど……いやまぁ、ゲームだし。
私もショートカット出来そうな建物の窓とか、予め開けて置いたり壊してしまったりしたので、そういう影響なのかもしれない。
などと、今考えなくても良い事を考えながら室内を進んで行けば。
「ここ等へん……かなぁ」
『だな』
先程大勢が降りて行った階段に対して、物凄く簡単なトラップを仕掛けた。
柱の下の方にテープで手榴弾をくっ付け、ワイヤーを反対側へ。
ピンと張る程度に引っ張ってから、逆側にもテープをペタリ。
以上、というかこれ以上やっている暇も無いので。
という事で適当過ぎるトラップを仕掛けた後、再び銃を構えてから進んで行く。
今のところ順調、このまま行けばクランリーダーを倒して、そのまま戦闘終了……あ、いや? もしかして完全にここから離れないとログアウトさせてくれないのだろうか?
不味い、その辺確認するのを忘れていた。
とか何とかやっていると。
「っ! 居たぞ! 賞金首――」
進んでいる途中の廊下、とある扉が急に開き、目の前に敵が現れてしまったではないか。
慌てて銃口を向けて発砲するものの、どうやら防弾ベストを着ているらしく。
ほんの少し怯んだ程度で、でっかい武器を此方に構えて来た為。
「チッ!」
思い切り舌打ちを零してから、相手に向かって突っ込んだ。
お互いの身体がぶつかり、此方のタックルが利いたのか……相手は銃口が私に向く前に後ろへと吹っ飛んでいく。
とはいえ距離を空けてしまえば、また相手の方が有利になる。
それが分かっているからこそ、そのままの勢いで敵の上に伸し掛かり。
相手の額にハンドガンを押し付けながら一発。
これでこのプレイヤーは倒したけど、当然銃声は響き渡った。
さっき下に降りたプレイヤー達も、すぐにこっちへと上がって来るだろう。
しかも他にも、二階に残っている敵だって居るかもしれない。
どうしようどうしようと慌てたけど……よし。
「強攻策、いくね」
『ほう? どんな?』
楽しそうな兄の声を聞きつつも、窓を開けてからピンを抜いた手榴弾をポイポイ。
すぐさまその場を離れ、数秒後には一階の方から激しい爆発音。
窓の外、というか壁の向こう側で爆発した訳だから……増援が来たとか、そっちで戦闘していると勘違いしてくれれば良いんだけど。
「お兄ちゃん! クランリーダーの位置! 最短距離!」
『おっとぉ……一気に“仕掛ける”のか?』
「良いから早く! 後の事は後で考える!」
本来、こういうのは一番良くないんだろうけど。
この状況で私が出来るのって、いち早く“ボス”とも言える相手を倒しちゃう事だと思うんだ。
これもまた、“ゲームだからこそ”の戦法ではあるんだけどね。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!