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「なあ、ちょっとガチな話していいか」
もう一度寝室に集まり、高地の言葉を待つ。
「……どうしたの」
樹は不思議そうだ。
高地が意を決したように顔を上げると、
「俺、辞めたい」
単刀直入に切り出した。みんなは驚きで声が出ない。
「ほんとごめん。でも、樹を怪我させちゃった責任もあるし、そろそろ潮時かなって…」
「違う、それは俺の不手際だから。高地のせいじゃない」
首を振る樹。
「…もともと、そんなに長くいるつもりじゃなかったんだよ。精神的にキツかった時期に現実逃避みたいな感じでちょっとやって、すぐ身を引こうと思ってた。ちょうど仕事全部片付いたしね。だからもういいんだ」
「そんな、俺お前がいないと嫌だ」
とジェシーが言った。「高地が辞めるなら俺も辞める」
「えっちょっと待ってよ」
状況が飲み込めない慎太郎は止めようとするが、
「もう目的は達成できた。これから何すればいいかわかんないもん」
慎太郎は黙ってしまう。
「もちろんみんなといるのは楽しいよ。ほんとの家族みたいだったし。でもやることがない以上こんな危ない世界にいるのもな…って」
「俺ももういいわ」
諦めも混じった寂しげな声の主は大我だ。
「え」
「俺も、目標は達成したからね。みんながいるからやってたけど、2人がいないストーンズなんて考えられない」
重い沈黙で包まれる。それを破ったのは樹だった。
「じゃあさ、いっそ解散しよう」
「え、樹」
慎太郎は目を張る。
「治っても怖くてできる気がしない。だから俺も辞めたい。いっそ6人一緒に足洗って、普通の社会人として生きよう」
「そうしよう」
同意を示したのは北斗だ。
「最近は警察に摘発されてるとこもあるじゃん。俺らもいつそうなるかわかんないから、その前に潔く解散しようよ」
言っていることはもっともだ。でも慎太郎は納得できていない。
「だけど……仕事見つかるの? もし誰かにバレたら…」
高地は笑いかける。
「大丈夫だよ。俺らまだ若いし、そんなこと誰にもわからない」
少ししたのち、
「俺らにもまだ人間っぽいとこ残ってたんだね」
慎太郎は悲しみを含んだ瞳で笑った。
ダンボールを各自の車に載せ、トランクを閉める。
6人それぞれの荷物が入っている。
「もうこのマンションともバイバイか…」
ジェシーがしみじみと言う。
「っていうかよくほかの住人にバレなかったね。俺らの正体」
「確かに」
「…樹、ほんとに歩ける?」
北斗が問いかける。
怪我の状態が良くなってきてから、みんなは引っ越しの準備を始めていた。まだ少し歩きにくそうだが、うなずいた。
「大丈夫」
みんなそれぞれの行先を見つけた。ここには誰も残らない。
「じゃ、行くか」
6人は目を見合わせ、微笑みあった。
彼らの関係は、この世界だけのものだ。だからこれからは会わないということに高地が決めた。
「さようなら」
いつもはターゲットに言う台詞。今回は、メンバーに別れを告げるための言葉となった。
続く