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#転生
コシ
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耀聖(ようせい)
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コメント
1件
いやあ、今回めっちゃ重かった…! 影が消えるとか空間ごと歪むとか、もうホラー映画の領域じゃん。お兄様の結界が腐食されたシーン、ゾッとしたわ。ローゼマリーの最大魔法すら通じないって、まさかの絶望展開。家族が引き裂かれるラストも辛すぎる…続きマジで気になる🔥
『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
「……お兄様、お待ちになって」
古城の最上階へと続く、どこまでも長い螺旋階段。その途中で、私は不意に足を止めた。
私の言葉に、前を歩いていたアルベルトお兄様が、美しい銀髪をなびかせて即座に振り返る。
「どうしたんだい、ローゼマリー。……やはり、君も『これ』を感じているのかい?」
「ええ……」
お兄様の切れ長の瞳に宿る、かつてないほどの緊着した光。それを見て、私の胸の奥にある冷たい違和感は、確信へと変わった。
おかしい。何かが、決定的に狂っている。
つい先ほどまで、足元の地下深くだけから響いていたはずの、あの地響きのような禍々しい魔力の波動。それが今や、上下左右、あるいは空間の『壁の向こう側』からも、均等に、そして執拗に私たちを包み込むように脈打っているのだ。
まるで、この古城そのものが、一つの巨大な「生き物」の胎内へと変貌してしまったかのように。
「ローゼマリー様、アルベルト様、ご覧ください。……私たちの『影』が消えていますわ」
背後に控えるリンの声に、私はハッとして床を見つめた。
リンが手にする魔導ランタンの灯りは、今も確かに私たちを照らしている。それなのに、石造りの床には、私のアウトラインも、お兄様の影も、一切落とされていない。
影の魔術の最高峰であり、元最強の暗殺者であるリンが、これほど動揺した声を出すのは初めてのことだった。
光があるのに、影が存在しない世界。それは、この空間がすでに『この世界の理(ルール)』から切り離されている証拠に他ならなかった。
「魔王ディルクめ……。楔をすべて壊され、完全に追い詰められたはずなのに、一体何を呼び出したのかしら」
私はフッと冷酷な笑みを唇に浮かべたが、その指先は、本能的な高揚感で僅かに震えていた。
ただのゴミが最後の悪あがきで自滅したのではない。奴は、私への圧倒的な「恐怖」のあまり、人族も魔族も決して触れてはならない『禁忌の深淵』の扉を叩いたのだ。
「ローゼマリー、僕のすぐ後ろにいるんだ。何があっても、僕の結界の範囲から出ないでくれ」
アルベルトお兄様が、私の手首をきつく、壊れ物を扱うかのような優しさで握り締める。
その手の温もりだけが、この狂い始めた空間の中で、唯一の現実の拠り所だった。
◇
私たちはさらに警戒を強めながら、一歩一歩、慎重に階段を上っていった。
しかし、上っても、上っても、一向に最上階の扉は見えてこない。それどころか、奇妙な現象が私たちの行く手を阻み始めた。
カツン、カツン、と響く私たちの足音。
その音に混じって、少し遅れて、別の重い足音が上の闇から聞こえてくるのだ。
ザザ……ザザ……。
それは、金属の鎧が擦れ合うような不気味な音だった。
「リン」とお兄様が短く名前を呼ぶと、リンは何も言わずにスッと前へ出た。影が使えない状況でも、彼女の体術と投擲ナイフの技術は一級品だ。
上の闇から姿を現したのは――禍々しい黒塗りの大鎧を纏った、一人の騎士だった。
しかし、その鎧の隙間から覗く顔のパーツは存在しない。ただ、どろりとした『漆黒の霧』が、内側から溢れ出しているだけだった。
「魔王の眷属(けんぞく)……? いや、違うわね」
私が呟くのと同時に、その霧の騎士が、手にした巨大な大剣を容赦なく振り下ろしてきた。
並の魔導師なら、その風圧だけで肉体を両断されるほどの質量。
「我が愛しい薔薇に、触れることすら許さない。――『絶対零度の盾(イージス・ゼロ)』!」
お兄様が瞬時に展開した、大陸最高硬度を誇る氷の結界。
普段なら、どんなAランク魔獣の一撃であろうと火球魔法であろうと、傷一つ付かずに跳ね返す絶対の障壁だ。
パキィィィン!!!
不快な高音が響き渡る。
驚くべきことに、霧の騎士が放った大剣は、お兄様の氷の結界の表面をメリメリと腐食させ、黒い煤(すす)のようなものを付着させながら、結界に小さな『亀裂』を入れたのだ。
「……っ!? 僕の結界を、魔力ごと腐食させている……!?」
アルベルトお兄様が驚愕に目をみはる。
魔術の威力が高いのではない。その騎士が纏っている黒い霧そのものが、この世界のすべての『魔力』や『構築式』を、出会い頭に無に帰す性質を持っているのだ。
「お兄様、下がって。――私の光で、その不気味な霧ごと消し飛ばしてあげるわ」
私はお兄様の前に進み出ると、右手をその騎士へと向け、覚醒した特異魔力を一気に解放した。
かつて数万の魔王軍を一瞬で分子レベルで消滅させた、神々しい純白の光の奔流。
――『聖絶の氷華(ラグナロク・ローズ)』。
まばゆい光が螺旋階段を埋め尽くし、霧の騎士を完全に呑み込んだ。
誰もが、その一撃でケリがついたと思った。
しかし。
光の奔流が収まった後、そこに立っていたのは――
衣服や鎧の一部を焦がしながらも、何事もなかったかのように再び大剣を持ち上げる、あの霧の騎士の姿だった。
「バカな……、ローゼマリー様の最大級の魔法を受けて、なお消滅しないなんて……っ!?」
リンが初めて、その美しい顔に明らかな恐怖の色を浮かべた。
私の魔法が効かなかったのではない。私の放った圧倒的な魔力の光の大半が、騎士の周囲にある『空間の歪み』によって、どこか別の次元へと強制的に受け流されてしまったのだ。
『……ククク……、ハハハハハ! 見ただろう、ローゼマリー! 100年前の聖女シャルロットよ!』
突如として、古城の壁、床、天井のすべてから、魔王ディルクの、以前とは比べものにならないほど重厚で禍々しい『高笑い』が反響した。
『世界の外側の力を手に入れた今の私は、お前たちのどんな魔法も、どんな攻撃も届かぬ神の領域にいる! 絶望するがいい、そこはお前たちが知る古城ではない。深淵の魔女が作り出した、無限の闇の迷宮だ! お前たちは二度と、私のいる玉座の間には辿り着けない……っ!』
魔王の声が響き渡るのと同時に、私たちの足元の階段が、まるで生き物のようにぐにゃりと形を変え始めた。
上へ続くはずの階段が、突如として下へと繋がり、左右の壁が生き物のように押し寄せてくる。
「くっ、ローゼマリー!」
「ローゼマリー様!」
お兄様とリンが私の手を掴もうと手を伸ばすが、空間そのものが引き裂かれるような強烈な魔力の渦が、私たちの間に割り込んできた。
「お兄様――!」
私の視界が、真っ黒な闇によって完全に遮られる。
絶対的な強者であったはずの私たちが、初めて直面する『世界の理の外側の絶望』。
魔王の狂った高笑いが響き渡る中、私たちは互いの姿を見失い、
歪んだ迷宮の奥深くへと引き裂かれていくのだった。