その日も研磨は体調が悪そうだった。
部活の帰り道、見舞いに行くと言って、研磨が家に帰るのを見届けてからコンビ二に直行。
(そういや具体的な症状聞いてないな…)
ま、とりあえず色々買えばいいだろ、と思って冷えピタとか軽食とか詰め込んで、ビニール片手に研磨の家に向かった。
「お邪魔しマース」
基本研磨ん家は開いてるから、よく行き来している。
まぁ防犯的にはどうかと思うが。
「研磨ー?入るぞー?」
軽くノックしてから、ドアノブに手をかける。
「待って…ッ」
ぴたり、開けようとした手を止める。
今まで返事こそなかったものの、入るなと言われたことはなかった。
何かただならぬ雰囲気を感じる。
「どうした?」
それに、
(なんでこんな心臓がうるさいんだ…?)
自分の何かが刺激される。
「今はダメ…!」
苦しそうな声だ。扉越しには荒い呼吸音。
思ったよりも辛いのかもしれない。俺に遠慮してるのか?今更?
静止なんかより兎に角心配が勝って、勢いよく扉を開ける。
「研磨!」
ぞわり、蹲る研磨が感じたことのない何かを放っている。
(頭、クラクラする…)
自分の体温が上がっていくのを感じる。
「おい、大丈夫か…!」
蹲る研磨の肩を掴むと、研磨がびくりと反応した。
「近寄んないで…ッ!」
研磨が手を振りほどく。
「お前、」
(わかった、これ)
「ヒートか…?」
ああ、理解してしまった。
視界が歪む。
呼吸が荒くなる。
自分の本能が、目の前のものを獲物だといっている。
(クソ、理性とぶ…っ)
αの性質
発情期のΩに触れると強烈な発情状態を引き起こし、時に暴力的なまでの性交に及ぶ
研磨を押し倒した。
その後のことはよく覚えていない。
ただただ薄暗い罪悪感を抱えながら、欲に支配されて快楽を味わったことだけが、鮮明に感覚として残っている。
*
気付いたらもう深夜になっている。
ズキズキと痛む頭を抑えながら、辺りを見渡す。
自分の上には綺麗に布団がかけられていて、
机にはビニール袋が置いてある。
(…クロだ。)
そうだ、クロがお見舞いに来て、それで
ピロン
スマホにメッセージが写し出される。
「ごめんな…?」
たしかにそう書いてあった。
(…別に、クロが悪いわけじゃないのに。)
夕方のことははっきり覚えていない。
でも不思議なことに、嫌な気分はしない。
むしろヒートが収まってよかったとすら思う。
それに、たぶん
「…気持ち、よかった」
そう感じてた気がする。
コメント
1件
天才すぎ!!!!続きあったらください!!!待ってます