3人は標高9000mに到着した。黒は刃がボロボロになったアイスアックスを見つける。
黒「あれ、これなんでこんな所にあるんだろ…」
黒「…他に、近くにないかな」
探してみると、風よけが出来そうな岩の陰に、1人の死体を発見する。
死んだ登山家は、衣服などが凍っているが、皮膚や肉が半ば溶けかけており、一部分の骨が露出していた。
谷底に見たしたいほど酷くは無いがやはり、凍死と考えるにはあまりに不自然だ。
足を負傷しているが、行動不能になるほどではない。適切な処置を行えば、歩いて降りることは可能な傷だ。
横にはザックが落ちており、荷物を漁ると、残っていた燃料や食糧の他に、手記を手に入れることが出来た。
近づいてみてみると、どうやら第一次登山隊…
凜々蝶の友人、その人だと言うことに気が付くだろう。
凜々蝶「ああ、こんな所で…死んでたんですね…。」
直央「もしかして前に言ってた…」
凜々蝶「はい、彼が第一次登山隊にいた、俺の友人です。」
黒「こんな所で…、あと一歩だったのに。」
直央「これ、君の友達が残した手記なんじゃない?」
黒「何か書き遺されてるかもしれません。」
凜々蝶「みんなで、読みましょう。」
凜々蝶「何か、ここから先に必要な情報が残されてるかもしれません。」
3人はは手記を読む。
ーーーーー
亡き友人「第一次登山隊は、山頂を踏むことなく壊滅した。道中、未知の生物と遭遇し、襲われ、みんな狂気に浸されて死んだ。」
亡き友人「最後に残った私とパートナーの2人で何とか登頂を目指すも、大黒壁を登りきることが出来ず、落下。」
亡き友人「私は足を負傷し、パートナーは背骨を強く打ち行動不能となった。」
亡き友人「後に継ぐ者の為に記す。この先、頂上直下に、”大黒壁”の垂直登攀が待ち構えている。」
亡き友人「”大黒壁”は黒い岩肌と、氷壁が、途切れ途切れに表れるミックス帯だ。」
亡き友人「”大黒壁”の登攀の際に、岩肌を傷つけてはならない。」
亡き友人「岩肌を傷つけると、粘性の高い石油のような液体が染み出してくる。」
亡き友人「この粘液は金属を腐食し、肌を溶かすため、登攀が極めて困難となる。」
亡き友人「当然、ハーケン(杭)は打ち込めないし、アルゼンを履いて岩を踏むことも出来ない。」
亡き友人「私はこれに気づかず、アイゼンとピッケル、そして指のことごとくをダメにした。」
亡き友人「この壁を登るには、氷がへばりついている場所を慎重に選びながらすすむか、」
亡き友人「ピッケルとアイゼンを捨て、フリークライミングで進むしかないだろう。」
亡き友人「私は足を引きずって降りることも出来たはずだ。なのに、何故かこの場所から動くことが出来ない。」
亡き友人「山頂から目が離せないのだ。」
亡き友人「このままでは私も仲間も、ここで朽ち果ててしまう。今の満身創痍の状態で、登頂は無理だ。」
亡き友人「ならば、せめて動ける私だけでも降りなければ。」
亡き友人「しかし、なぜだ。私はどうしても、ここから降りることが出来ない。」
亡き友人「友よ。きっと私を見つけ、あの山の頂を目指す友よ。」
亡き友人「ああ、君が今すぐにあの山を諦めて引き返してくれればどれだけ良い事か。」
亡き友人「だが友よ、私は知っている。」
亡き友人「最高の登山家である君が、そんな選択をとりようがないことを。」
亡き友人「だから、覚悟して向かってくれ。」
亡き友人「そして願わくば、君がこの山を制覇してくれんことを。」
ーーーーー
凜々蝶「自分に山の魅力を教えてくれた張本人だったんですけど、ここで力尽きてしまったようですね…。」
直央「ま、でもこうなったら尚更引く訳にはいかなくなったな。」
凜々蝶「そうですね、俺が…登らないと…、!」
黒「ま、元々引くつもりはありませんけどね!」
そして3人は決意を新たに進む。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!