テラーノベル
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数日が過ぎた。
夜ごとの“治療”で、Pizza guyの症状は少しずつ落ち着いてきていた。
眠れないほどの痒みは減り、
料理中に包丁へ視線を奪われることも少なくなった。
代わりに増えたのは――
「……」
静かな口づけ。
吸血ではない。
ノスフェラトゥは、首に牙を立てない。
代わりに唇を重ね、
唾液だけを与える。
それだけで、
熱が落ち着く。
依存を抑えるための、奇妙な治療。
「……っ」
今夜も、深く口づけられる。
冷たい舌。
ゆっくりと混ざる呼吸。
Pizza guyの指先が、無意識に服を掴む。
「……」
その時。
ふと、気づく。
硬い感触。
唇の端に当たるもの。
「……」
鋭い。
牙。
伸びている。
「……おい」
掠れた声。
ノスフェラトゥは離れない。
だが、
呼吸が少し乱れている。
飢え。
抑えていた本能が、
また顔を出している。
「……」
赤い瞳が揺れる。
首筋へ落ちそうになる視線。
「……我慢しろ」
Pizza guyが低く言う。
「……」
ノスフェラトゥの動きが止まる。
「俺も今、我慢してる」
その一言で。
空気が変わる。
「……」
数秒。
やがて、
ノスフェラトゥはゆっくり離れた。
まるで、
自分を引き剥がすみたいに。
その後。
Pizza guyは一人、部屋にいた。
窓が少し開いている。
夜風が入る。
「……」
小さな影が、窓枠に止まっていた。
コウモリ。
黒い羽。
赤い目。
「……お前、また来たのか」
最近よく見るやつだ。
逃げない。
じっとこちらを見るだけ。
「……」
Pizza guyは苦笑する。
そのまま指先で、
小さな顎を軽く撫でる。
コウモリは逃げない。
むしろ、
少し目を細めた。
「……」
沈黙。
静かな夜。
だからだろうか。
ぽつりと、本音が漏れる。
「……俺さ」
コウモリへ向けて、呟く。
「嫌なんだよな」
「……」
「自分が“毒”になってるの」
指先が止まる。
「……吸ってほしいって思う時がある」
苦く笑う。
「それが嫌だ」
奪われてるみたいで。
理性を削られてるみたいで。
「……」
窓の外の風が揺れる。
「……あいつに血をやる時」
少し考えてから、言葉を探す。
「依存とかじゃなくてさ」
「……」
「飯、作る時みたいな気持ちでいたいんだよ」
小さく笑う。
「腹減ってるやつに、食わせるみたいな」
「……」
コウモリはじっと聞いている。
まるで、
理解しているみたいに。
「……俺は餌じゃなくて、人間だから」
静かな声。
「“食べさせたい”んだ」
「……」
その瞬間。
コウモリの赤い瞳が、
わずかに揺れた。
「……」
Pizzaguyは気づかない。
ただ、
最後にもう一度だけ顎を撫でる。
「……変な話、聞かせたな」
苦笑する。
その時。
影が、揺れた。
「……?」
コウモリの輪郭が歪む。
羽がほどける。
黒が広がる。
「……は」
目の前で。
コウモリが、人の形へ変わる。
長い黒髪。
赤い瞳。
見慣れた影。
「……」
ノスフェラトゥ。
「…………」
沈黙。
Pizza guyの手は、
まだ顎を撫でていた位置で止まっている。
「……お前」
顔が引きつる。
「聞いてたのか」
「……」
だがノスフェラトゥはしばらく何も言わなかった。
赤い瞳だけが、静かに揺れている。
まるで。
今の言葉が、
自分の中の何かを深く抉ったみたいに。
「……」
やがて。
低く。
掠れた声が落ちる。
「……お前は」
少しだけ、苦しそうに。
「本当に、人間だな」
#見捨てられた
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